テラーノベル
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『もう遅い』
tg視点
チャイムが鳴って、また鳴って、それでもしおたんは動かなかった。
俺の手を掴んだまま、ただじっとドアの向こうを見つめてた。
so ちぐちん、ほら、こっち
小さく囁かれて、リビングの奥へ引かれる。
tg でも……誰か、来てるよ……
俺の声は震えていた。怖かったわけじゃない。
ただ、外の世界が急に目の前に現れたのが、不意打ちすぎて。
so ……無視して。どうせ、いらない人でしょ?
tg でも……
ドアの向こうから、名前を呼ばれた。
「ちぐー! 中入ってる!? 声くらい聞かせてよ!」
それは、学校の友だちの声だった。
たぶん、最近LINEをくれてた子。
tg ……しおたん
so 大丈夫。ちぐちんが出なくても、もうすぐ帰るよ
しおたんは笑ってた。でも、その笑みは少しだけ、いつもと違って見えた。
tg なんで……こんなに怒ってないの?
俺が聞くと、しおたんはちょっとだけ目を細めて、優しく言った。
so 怒ってなんかないよ。ただ……ね
その手が、俺の頬に触れる。
so ちぐちんが外の誰かに呼ばれるの、あんまり好きじゃないなって思ってただけ
tg ……うん
so ちぐちんは、ここにいるのが似合うもん。俺のそばにいて、俺だけ見てるのが、いちばん綺麗
——その言葉に、胸がきゅうってなった。
嬉しい、のに。どこか、怖かった。
so ちぐちん、目、閉じて
言われるままに瞼を閉じると、額に優しいキスをされる。
so ね、ちぐちん。今、誰にも取られたくないって思った
tg …俺、しおたんのだよ?
その瞬間、しおたんの手がすっと俺の髪を撫でて、
耳元で小さく囁いた。
so じゃあ、証明しようか
カチャッ。
何かが留まる音。
冷たい感触が、首筋に触れた。
——首輪、だった。
tg え……
目を開けると、しおたんは優しく微笑んでいた。
so ね? 似合うでしょ?
その言葉の直後、玄関のチャイムは止んだ。
たぶん、帰ったのかもしれない。
もう——誰も、助けには来ない。
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