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『ねぇ、笑って?』
so視点
カチャッ、と留めた首輪の金具が鳴る。
ちぐちんは目を丸くしたまま、
まるで自分の体に何が起きているのか理解しきれてないような顔をしていた。
でも、その顔が愛しかった。
so ねえ、ちぐちん。鏡見てみる?
俺はちぐちんの手を取って、寝室に連れていく。
そこには、大きな鏡がある。
tg しおたん、これ……
so ほら、見て。とっても似合ってる
首輪は深い青で、ちぐちんの肌の白さが引き立つように選んだ。
無理のない長さ、やわらかい素材、でも外れない留め具。
大事にするって、こういうこと。
so ほら、笑って?ちぐちん、可愛いんだから
俺がそう言っても、ちぐちんは鏡を見たまま、声を出さなかった。
代わりに、ゆっくりと、俺のほうを向いて——
tg ……俺、しおたんに可愛いって言われるの、好きだよ
そう言ったあと、ふわっと小さく笑った。
その瞬間、喉が熱くなった。
so っ、ちぐちん
俺はちぐちんを抱きしめた。
壊れそうなほど細い肩を、ぐっと引き寄せて、
耳元に顔をうずめる。
tg よかった……ちぐちんが、俺のままでいてくれて
tg 俺、逃げたりしないよ。しおたんが好きだから
心の奥が満たされていくのを感じる。
でも、それでもまだ、足りない。
——もっと、もっと欲しい。
——全部、ちぐちんの“全部”を、俺の中に閉じ込めたい。
so じゃあ、ちぐちん
tg ん?
so 今から、鍵をかけるね
tg …え?
so ドアも、窓も。全部。もう、どこにも行けないように
ちぐちんの身体が一瞬こわばる。
でも、俺の腕の中からは逃げない。
so だって、俺のそばがいいんでしょ? 違う?
tg ちがわない、けど……
so じゃあ、もう一度言って。俺だけが、好きっ
tg …しおたんだけが、好き
so うん、よくできました
首輪のリードをそっと手に取って、引き寄せる。
ちぐちんの顔が少しだけ不安そうに揺れて、
でも、その瞳には俺しか映っていなかった。
——もう大丈夫。
——ちぐちんは、ちゃんと“俺のもの”になった。
そんなふうに思ったそのとき——
ピピッ。
リビングのインターホンが、一瞬だけ鳴った。
あの子じゃない。
今の音は、たぶん……警備会社の確認通知。
……誰かが、異変を知らせたのかもしれない。
so ちぐちん、笑って。ねぇ、笑って?
俺は静かに、ちぐちんの頬を撫でる。
その先にある不穏な音を、
ふたりの息でかき消すように。
♡▸︎▹︎▸︎▹︎2000