TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

ホテルから出ると紫色の雲り空から霧雨が降っていた。俺は、乱暴に扱われて痛む腰をさすりながら空を見上げていた。1秒でも早く離れたくて、相手を部屋に残したまま出てきたが、家に帰るまで少し濡れることになりそうだった。

 意を決して雨の中飛び出すと、背後から今は聞きたくなかった人の声が聞こえてきた。

「あれ?りぃちょ?」

「あ……ニキニキ……やっほ」

「お前……そんなとこから出てきて……女?」

「あー……うん、そんなとこ……かな?」

 今は出来れば会いたくなかった。テキトーにひっかけたオッサンに抱かれて、金を受け取って出てきたところなんて…好きな人には見られたくなかった……。

 俺が少し口どもりながら答えると、ニキニキは少し訝しげな顔をしながら、それならいいけど……と小さく呟いた。

「遊ぶのはいいけど、程々にしとけよ?」

「えーいいじゃんwきもちーこと好きなんだもん」

「お前は……そのうち刺されるぞ……」

 務めて明るく言う俺に、ニキニキは心底呆れた顔をした。

「そういうニキニキだって、なんでここに?」

「あー俺は、近道だから通っただけ」

「あ、そうなんだ…」

 少しだけほっとした自分がいた。ニキニキが誰かと身体を重ねている訳では無いということに…。俺、最悪じゃん…。そう呟いた時、最悪なタイミングで声をかけてきた奴がいた。

「あ、まだいた!よかった。これ、忘れ物」

「チッ……」

 さっき相手したオッサンだった。その手には俺のピアスが1つ乗せられていた。俺は溜息をつきながらそれを受け取り、小さくお礼を言った。

「またよかったら相手してよ」

「いや…あんた下手だからもう次はないかな」

「ひどいなぁ…あ~次はその男の子かな?」

「は?」

「次の相手はその子なんでしょ?ほんとお盛んだなぁ」

 そう言って下卑た笑いを残してオッサンは去っていった。最悪だ…ニキニキにだけは知られたくなかった。俺は、ニキニキの顔を見られなくて下を俯いていた。

「りぃちょ…お前…」

「はぁ…なぁに?」

「あんなのの相手してんのか?」

「あーまぁね。相手見つかんない時はね」

 呆れたような溜息が聞こえてきて、足先や指先から血の気が失せていくのを感じた。本当に嫌われてしまった…。もうこれで終わりだ…。

「そんなにしたいの?」

「あーまぁうん…」

「じゃあ、俺が相手になるよ」

「え?好きな人いるって言ってなかったっけ?」

「いるよ。でも、相手に気持ち伝えられなくて俺も溜まってんだよねww」

「俺がその相手ってことは……?」

「ないないww相手男だけど、お前じゃないわw」

「あ……そっか……」

 ワンチャン…狙って聞いてみたら撃沈した。まぁ、そんな気もしてた。結構前からニキニキに片思いしているけど、他の人のことを見てる気がしていた。それが誰かもなんとなく予想がついている。多分…両思い何じゃないかな…。でも悔しいから教えてあげない。

 知らないフリをしていれば、好きな人に抱いてもらえる…。だったら、俺は卑怯だってわかってても知らないフリをする。その瞬間だけでも求められている気分に浸りたいから……。

「じゃあ…俺を抱いてよ」

「ふふw俺でも抱かれていいんだww」

「まぁ……仕方ないからねw抱かれてあげるw」

 虚しくて泣きそうな気持ちをヘラヘラとした笑顔で隠した。ニキニキも笑ってる…。俺は嫌な気持ちを振り払いたくて、ニキニキの腕に自分の腕を絡めた。

「ね、試しに今からやってみる?」

「今から?wお前さっきやったんじゃないの?」

「下手くそでさぁ…全然満足できてないんだよね」

「あーwwじゃあやるかぁww」

「やったww」

曇り空から覗く陽の光

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

201

コメント

1

ユーザー

最高です👍

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚