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 遥か昔、この国にはたくさんの妖怪がいた。よく知られている妖怪だと、ろくろ首や一旦木綿、ぬらりひょんなどが挙げられる。特に、「天邪鬼」天邪鬼あまのじゃく。人の心を読み、その人の意に反することをしてからかう妖怪であり、鬼の一種でもある。彼らは、人間の怒りや憎しみなど、負の感情を糧として生きていた。だが、平安時代に源氏の兵士たちによる鬼退治で、彼らを含む、あらゆる種の鬼が滅ぼされ、現代には残っていないとされている。天邪鬼は、その性質の通り、厄介な妖怪だとして嫌われてきたが、僕はそうは思わない。彼らは、ただ…



公園で、1人の女の子が泣いている。いつも一緒に遊んでいた女の子だ。僕は心配になり、その子に駆け寄る。


「どうしたの?」


僕が聞くと、女の子は答えた。


「いじめられたの…っ。おまえは…へん、だから…あそばないって」


どうやら仲間外れにされて、遊びに入れてもらえなかったようだ。僕は答える。


「へんじゃないよ。だって、ーーーちゃんは…


 あの女の子の名前も、声も、顔も、もう思い出せない。彼女は今、どこで何をしているんだろう。またどこかで会えたら良いな…



目を開けると、そこは自分の部屋だった。障子の間からわずかに光が差し込んでいる。


「なんだ夢か…」


ずいぶん昔の夢だったな、などと思いながら体を起こす。ちょうどそこに、使用人の永田さんが来た。


「おはようございます、奏多坊ちゃん。朝食の準備ができておりますので、大広間へお越しください。」


「おはようございます。ありがとうございます。」


さっと顔を洗い、大広間へと向かう。そこではもう、この家の主人である僕の父、その隣には母が、父の正面に弟の紫音が座って朝食をとっていた。


「おはようございます、父さん、母さん、紫音。」


「おはよう、奏多。 」

「……おはよう」


お膳の上には、いつもと変わらない朝食が並んでいる。

何も変わらない、普通の毎日のはずなのに、目覚めが違うだけで、いつもと違うように思えてしまう。

不思議なものだ、と考えながら朝食を食べていると、廊下から走ってくる音が聞こえる。


「おはようございます!父さん母さん!」


「おはよう桃音。」


「桃音、もう少し時間に余裕を持って行動しなさい。」


「すみません、父さん。」


この通り、父は時間に厳しい。1分の遅刻も断じて許さない。全然笑わないし、一見冷徹そうに見えるが、仕事熱心で、何より家族思いのいい人だ。しかし、正直なところ、僕は父さんがあまり好きではない。


「いいか、奏多。妖怪などはこの世にいてはならない。故に、見かけても話さず、触れるんじゃないぞ。そして、見かけたらすぐに殺すこと。お前は、将来この家を継ぐ長男なのだ。良いな?」


この通り。筋金入りの妖怪嫌いだ。僕は妖怪が好きなため、父さんとは相入れないところがある。本当はこの家だって継ぎたくはない。

 僕の家は、平安時代、鬼退治で活躍した源満仲源満仲みなもとのみつなかの血筋だ。満仲さんは妖怪が大嫌いで、見かけたらすぐに殺していたそうだ。父さんはこの家の血筋であるせいか、先祖の満仲さんとよく似ている。こういうところが苦手だ。ほとんど滅ぼされて残ってないんだから、いるわけが無いだろうと思いながらも、返事をする。


「……はい」


「では、私はもう行く。」


「いってらしゃい、父さん。」


みんなで父さんを見送った後、緊張が解ける。桃音は不服そうに言う。


「父さん厳しすぎ…あそこまで怒んなくても良いのにー! 」

紫音が答える。


「…桃音がしっかりしないからじゃん。」


「ちょっと、紫音までなんなのー!?」


こんな感じで毎朝騒がしい。僕は2人を宥める。


「3人とも、後少しで家を出る時間ですよ。」


時計を見ると、後10分で家を出る時間だった。


「うわっ!もうこんな時間!!」


身支度を終え、今日も3人揃って家を出る。途中で別れ、別々の道へと進んでゆく。前から歩いてくる人にふと目が行った。とても綺麗な女の子だ。すれ違い様に目が合い、お互いに立ち止まる。この出会いは、のちに僕の人生を大きく変えるなんて、思いもしなかった。



                                 つづく…





〈登場人物〉

源奏多 みなもと かなた … 源満仲の子孫で、源家の長男。天野原第一高校の2年生。優しく、

              世話焼きな性格で、頼まれたら断れない。


源桃音 みなもと ももね … 奏多の妹。あまりきちんとした性格ではないが、明るく、優しい。

              双子の弟の紫音とは打って変わって、表裏がなく、おしゃべりが好き。

              天野原第一中 学校3年生、生徒会長。


源紫音 みなもと しおん … 奏多の弟。家ではあまり喋らず、時に鋭い毒舌っぷりを見せる、所謂

              クール系 男子。学校と家での差が激しく、桃音には、「本当に同一人物

              か?」と疑われている。天野原中学校3年生、生徒会副会長。

源宗隆 みなもと むねたか… 3人の父。源家41代目当主。筋金入りの妖怪嫌いで、神社の神主を

              生業としている。 長男思想の持ち主。奏多にはあまり好かれていない。

              無口で厳しいけれど、それは家族を想っている証。


源恵  みなもと めぐみ … 3人の母。宗隆の妻。仕事はしていないが、生花、着付け、茶道の

              講師をしている。家族のことを第一に考えており、温厚な性格。

              怒るととても怖い。噂だと、怒った彼女には、宗隆も逆らえないとか。






この作品はフィクションです。歴史上の事実などは一切関係ありません。


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