僕が好きな人は学校1の人気者。
ファンクラブもあるし、手作りグッズも出てる。
その人が通る道は混んでいても自然と開けて、静かになる。
周りにいる人達みんな自分の前を通る姿を拝むのだ。
それは、男女問わずその場にいる全員。
話しかけようとすると近くにいる人に止められる。
彼は、気高く、尊く、麗しく、強く、優しく、美しいから。
自分みたいな地味陰キャとは違うところに住んでいる。
ほら、今日もまた。
「りうら様よ」
「ほら皆さん道を開けなさい」
その声とともに道は開け、 そこを通っていく人気者。
廊下で起こっているその光景を僕は教室から見ていた。
相変わらずすごい。
「みんないつもごめんね。ありがとう」
そしてニコッと笑って去っていく。
「はぁ、今日も麗しい」
「ええ、尊いわ」
ある女子生徒が
「隣に立ってみたいわ」
「え〜?無理だよ。隣に立てる人などいないよ。きっとりうら様の理想は高いのだから」
「たしかに。可愛くて美人さんしか立てないよ」
僕はその言葉を聞きながら視線を窓の外にずらした。
僕には全然無縁の話。
友達はいないから、いつも1人。
話が合う人がいないし、わざわざ群れる必要も無い。
1人の方が楽だし。
キーンコーンカーンコーン
1時間目が始まる予鈴がなった。
廊下にいた人達は教室に入ってきて、一気に騒がしくなる。
「1時間目何?」
「数学」
「うっわ最悪。1時間目からキツ」
「それな」
口々に文句を言う。
気持ちも分からなくもないが、もう少し静かに話して欲しい。
ガラガラ
先生が入ってきた。
それと同じタイミングぐらいで
キーンコーンカーンコーン
本鈴が鳴った。
「起立、お願いします」
「お願いします」
1時間目が始まった。
先生の話を聞いてるふりをして右から左にながす。
平常点のためにノートは一応とるけど。
書き殴られすぎて読めたものじゃない。
そうこうしてるうちに1時間目が終わった。
「起立、ありがとうございました」
「ありがとうございました」
終わった途端一気に騒がしくなる。
本当にうるさい。
授業が始まり、終わり、騒ぐ。これの繰り返し。
これが5日間。毎日。
キツい。
でも、時間はあっという間で気づけばもう帰る時間になる。
「さようなら」
「さようなら」
みんな部活があるため、それぞれ活動場所に行く。
僕は帰宅部だから関係ない。
そのまま直帰だ。
家に帰ったらゲームして、YouTube見て、ネトフリ見て、寝る。
これの繰り返し。
つまらない。
そう思っていた。
あの時までは。
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