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どんどん展開の緊張感が増すばかりです…😖😖 中々出てこない青さんが偶然なのか意図があるのかも気になるところです…!!😿💞 本日も元気を頂きました…また色々と頑張れちゃいます😭😭 他サイトの投稿も吸い込まれるように見てしまいました…✨✨ 投稿ありがとうございますー!!🙇🏻♀️⸒⸒
【お願い】
こちらはirxsのnmmn作品となります
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ご本人様方とは一切関係ありません
りうらに言われて気づいた。
…いや、りうらに言われるまで「気づかなかった」。
まろの優しさに甘えて、色々とすっ飛ばして「抱いて欲しい」とだけ言葉にしていたこと。
そこに至るまでの想いとか…そんなことは放ったらかしで。
自分の想いなんて、云うべきではないと思っていたから。
いつかまろに好きな人ができたとき、俺の想いが足枷になっちゃいけないと思っていた。
セフレならすぐ離れられる。
遊びと割り切れば簡単に関係を断てる。
まろが終わらせたくなったときのための、逃げ道を作っているつもりだった。
でもそれは、本当は俺自身の逃げ道でしかなかった。
「まろのため」だと言い聞かせるための。
他でもない、自分の弱さでしかなかったんだ。
「……」
覚悟を決めて、勢いよく顔を上げる。
ハンガーにかけてあったコートを引っ掴んで、俺は慌てて事務所を後にした。
りうらとはゆっくり話していたから、今から追いかけてもまろに追いつくわけはない。
大通りに出てタクシーを拾おうとしたけれど、こんな時に限って1台も通らない。
(…駅まで走って電車に乗った方が早い)
咄嗟にそう判断して、俺は勢いよく地面を蹴った。
日頃からライブに向けてダンス練やらなんやらがあるから、全く鍛えていないわけではない。
それでも逸る気持ちに追いつかず、足はもつれそうになる。
途中で、何度か人にぶつかりかけた。いや、1回は本当にぶつかった。
ガタイのいい中年の男性で、振り返りざまに睨みつけて舌打ちをされる。
「すみません」と小さくお辞儀だけして、相手の反応も待たないまま先を急いだ。
電車に乗って、たった数駅。
大した時間じゃないはずなのに、その揺られているだけの時間が今日は永遠のようにも長く感じられる。
ホームに停車した電車がプシューッと言う音を立ててドアを開けた瞬間、弾丸のごとくそこから飛び出した。
改札への階段を3段くらい飛ばしながら上がると、その勢いに驚いたらしい塾帰りの女子高生が何人か振り返る。
だけどそれも気にする余裕すらなかった。
そうしてようやく辿りついたまろの家。
着く頃には、走りすぎたせいで肩で大きく息をしていた。
何度も来たことがあるそのマンションの前で、俺は乱れた息を整えるべく深呼吸を繰り返した。
…何から言おう。
とりあえず最初に謝らなきゃ。
それで、自分の思っていることを伝えて…。
「まろには自分だけを見て笑ってほしい」なんてりうらには言ったけど、奥底の本音はもっと手前の段階で…。
ただまろを好きだと伝えて、想い続けさせてもらえるならそれで十分な気もした。
…なんて、今そんなことに思いを巡らせても、顔を見たら全て吹き飛んで真っ白になってしまうかもしれない。
覚悟を決め、壁に埋められたインターホンでもう覚えてしまっている部屋番号を押す。
軽い呼び出し音が繰り返されるけれど、どれだけ待っても応答はなかった。
まだ…帰ってない?
それとも、俺だから出てくれない…?
自分でそんなことを考えたくせに、自分で傷ついてしまう。
「……」
その時、マンションの住人らしい若い男性が中から出てきた。
入り口に茫然と立ち尽くす俺を不思議そうに一瞥した後、それでもすぐに興味をなくしたようにマンションを出て立ち去る。
ハッと我に返った俺は、開いたエントランスドアが閉まりかける瞬間に中に入った。
さっきの男性には申し訳ない気持ちと罪悪感があったけれど、この際仕方ない。
エレベーターに乗り込み、まろの部屋がある階まで上がった。
一番奥の部屋の前で立ち止まり、さっきと同じようにインターホンを押す。
返る声はないし、中で物音もしない。
気配すら感じられず、やっぱりまだ帰ってないのかもしれないと思った。
取り出したスマホで、まろの番号を呼び出す。
指が震えそうだったのは、きっと寒さのせいだけではなかっただろう。
強ばる指で発信マークをタップする。
聞き慣れた呼び出し音が流れたけれど、しばらく待ってもやはり返る声はなかった。
無視されているのかもしれないと思うと、メッセージを送る勇気はもっと出なかった。
既読無視なんてされたら多分もう立ち直れないと思う。
「……」
吐息まじりにドアに背を預ける。
だんだんと力が抜けていき、ズズ、とその場に座りこんだ。
…寒い。会社と家の往復だけだと思って薄手のコートで来たのが失敗だった。
手袋もマフラーもなく、夜の冷たい空気が身を引き裂くようだ。
まろの部屋が、フロアの一番奥…しかも玄関ドアが廊下から少し奥まったところにあるのがせめてもの救いだった。
風はいくらかしのげるし、何より他の住人に気づかれずにここにいられる。
「早く帰って来てよ…まろ…」
膝を抱えて座りこんだ俺は、顔をうずめてそう呟いた。