蛞蝓→中也の事
※危険行為を推薦している訳ではありません
※作者に医療の知識はありません
・太宰さんは毒に強い耐性を持っているから死には至らないけど、人間なので身体に害がないわけではない(という設定)
完成させるのめんどかったから、きり悪いですが途中で終わります。申し訳ない。
*
太宰side
とある日、依頼人から『お礼の品です。』と言われ貰ったチョコレートがあった。
まあなんとなく、変な匂いがしたので口に含んでみると、案の定、妙に甘くて。
*
矢張り、すごく懐かしい味だ。
以前はこの痛みが朝食の様なものだったなと朧気乍も思い出す。
この味は彼岸花だろうか?嫌、でも夾竹桃だろうか。
多少痺れはするが、もう一寸甘くても良かったな。
『________嗚呼、毒ね。』
『真逆、致死量とは思わなかったけど。』
なんて白々しく言ってみたら探偵社員全員が驚くものだから面白い。
『太宰さッ……』
『大丈夫だよ、敦くん。私この程度じゃ死なないから。』
だからそんな不安そうな顔をしないでおくれ。とは言えなかった。
嗚呼、私が毒に耐性が無ければ死ねていたのに。
まあでも、こんな端くれに殺される気も更々無いのだけど。
『其んなに怯えなくても良いじゃないか。』
私の昔の姿を知っているであろう犯人は怯えたのか、赦しを乞うように平謝っている。
こういう連中は何時もそうだ。謝るぐらいなら最初から選択を誤らなければ良いだろうに。
『君、どうせ私に恨みがあるんだろう。なら私を狙い給え。其れで死ねるのなら本望だし、勝手にするといい。』
武器を持たれていたら厄介なので縄で縛り付ける。
そしてゆっくりと腰を下ろして、犯人の顔を覗き込んでみた。
蛞蝓ならこう言う態度を取るだろうな。と思いながら。
『嗚呼、でも……………………』
『次探偵社員を巻き込む様なら、手前の汚ねぇ面剥ぐからな。』
厨二病じみた台詞を凄んで言って見せれば
案外効いたようで、犯人は気絶していた。
少し手荒にしただけだと言うのに、この程度の度胸で毒を盛ったのか。薄情者にも程がある。
ポートマフィアは怨みを売って買っての場所であるし、あまり毒を盛られたりする事は少なくないが、
仲間を巻き込まれるとなると少々憤るというものだ。骨を折っておけば良かった。
起きる様子がないのを確認して、念の為口もガムテープで貼付する。
護身用に小型ナイフと銃も隠し持っているし、万が一起きたとしても何とかなるだろう。
*
『あ、そう云えば国木田くん、警察を--』
『巫山戯るな!』
先程からずっと周章狼狽していた探偵社に、乱歩さんの怒号が鳴り響いた。
『幾ら護る為とは云え自分の命を軽々しく扱うのも大概にしろ!』
『太宰が其れ程に迄莫迦だとは思わなかった…!』
そう言いながら乱歩さんは私の胸倉を掴んできた。
わあ、流石。凄い剣幕だ。
乱歩さんがこれ程迄に感情的になるとは余っ程御怒りのようだ。意外な一面だなぁと何処か他人事に思った。
『ああ、すみません。此様なやり方しか知らないものでして』
薄らと笑みを浮かべ、私はそう言った。
乱歩side
太宰が、貰い物のチョコレートを開封して、真っ先に手を取った。
嫌な予感がした。持ち前の頭脳で、瞬時に毒が入っていたことを理解した。でもその時にはもう遅くて。
そして躊躇いもなく舌先で溶かすように食べる太宰を見て背筋が凍った。
頭では冷静でいられるはずなのに、心臓だけが莫迦みたいに早く脈打っている。
嫌だ、また誰かを失うのは。
どうやら此奴は自分がどうなっても構わないようで
普通の人間だったら吐き出すであろう物を、此奴は何の変哲もない表情で飲み込んだ。
『________嗚呼、毒ね。』
その一言で場が騒然とした。まあ当たり前だろう。
『真逆、致死量とは思わなかったけど。』
『は……?』
国木田は想定していなかったのか、はたまたその余裕さに驚いたのかそう言ってから固まっていた。
『太宰さッ……』
『大丈夫だよ、敦くん。私この程度じゃ死なないから。』
あ、またか。
だからそんな不安そうな顔をしないでおくれ。とでも思ってるんだろ?
太宰は縄を取り出し、迷いもなく犯人の手首を縛りつける。
暴れられないように肩を押さえ、脅して、淡々と処理していく。
ああ嫌な奴だ。自己犠牲する事がさも当たり前だと思ってる。まるで十六の頃の僕じゃないか。
凄く苛立って仕方ない。社長が当時僕を叱った理由がよく分かる。此んな気持ちだったのか。
何故飄々としてるんだ。何で此奴は此んなにも無作為なんだ。
まだ昔のように己の命を消耗品の様に扱うのか。
そう思って居たら何故かいても経っても居られず、自分の中の何かが切れた音がした。
*
______気づいたら頭ごなしに怒鳴っていて。
違う、こんなことを言いたい訳じゃない。
ただ、自分を軽視した行動に腹が立ってしまった。
見ていられなくなって、理性が無くなって、心にもないことを言ってしまった。
正直に言うと、怖かったのだ。
自分と同じ鞭を踏むのが、どうしようも無く。
怒りでも辛さでもない、何か別の感情が喉につっかえる。
胸倉を掴んだまま、何も言えなかった。きっと凄く今僕は惨めな顔をしているだろう。
僕が何も言えず固まっている間も、太宰はヘラヘラと笑っている。
乱歩さんならそうなると思った。
私はどうせ死にません。
そんな軽い考えが丸見えで。
________そんな太宰の笑みと無邪気な振る舞いが、僕との距離を無理やり引き延ばす。
近くにいるのに、まるで別の世界の人間を見ているようだ。
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