テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ゼノ千
(ある夜、実験室の片隅。機材の片付けもそこそこに、千空が椅子に突っ伏している)
⸻
ゼノ:「千空? ……返事がないな。まさか、寝落ちか?」
(近づいて肩に手を置く。触れた瞬間、明らかな熱を感じる)
ゼノ(目を細めて):「……なるほど。体温、手のひらで測っても38度台後半。君にしては珍しい失態だ。」
⸻
(ゼノ、静かに毛布と水を用意しながら千空を寝かせる。千空は薄く目を開ける)
⸻
千空(かすれ声):「……ん、なにしてんだよ……ゼノ……」
ゼノ:「君が倒れていて、何もしない選択肢など存在しない。」
千空:「……ただの風邪だ。いちいち……」
ゼノ(椅子を引いて隣に座る):「千空、“ただの”風邪で君が作業を中断することがどれほど珍しいか、自覚はあるか?」
千空(目をそらす):「……うっせーな……」
⸻
ゼノ(冷たいタオルを額に当てながら):「君の脳が発熱で処理速度を落とすなど、由々しき事態だ。ここは素直に従ってくれ。」
千空:「……なぁ、ゼノ。」
ゼノ:「なんだい?」
千空(ぼそっと):「……この状態でも、お前なら……俺の脳、解析できんのか?」
ゼノ(クスリと笑って):「科学的に興味は尽きないが、今は観察より、保護に徹しよう。」
⸻
(千空、目を伏せて静かに)
千空:「……優しすぎんだよ。慣れてねぇんだよ、そういうの。」
ゼノ:「では、慣れるまで繰り返すとしようか。」
千空:「っ……あっっっぶね……熱より動悸で死にそうだわ……」
ゼノ(穏やかに、彼の髪を一撫で):「それも副作用のひとつとして記録しておく。」
⸻
(しばらくの沈黙。千空が目を閉じ、ぼそっと)
千空:「……ゼノ、ありがと……」
ゼノ:「どういたしまして。君の“ありがとう”は、何よりも希少で価値がある。」
千空(薄く笑って):「……ほんっと、うぜぇ……でも、悪くねぇ……」