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ぼんさんは俺の罪について聞いたあと、黙ってしまった。
そういえば、ぼんさんはどうして人を殺してしまったんだろう。
聞いてみようかな、でも、気に障ることだったらいけないし……。
考えてみた末、聞いてみることにした。
「あの、」
静かに声をかけると、ぼんさんは「ん?」と優しい声で返してくれた。
「その…俺、ぼんさんが悪い人に見えなくて……。どうして、人を殺してしまったんですか……?答えたくなかったらいいんですけど…!」
ぼんさんが「うーん、」と唸る。
「聞く?ちょっと、長いけど……。」
迷わず俺は縦に首を振った。
人を殺すまでは、普通の人間だった。
他の人と同じように、家族がいて、働いて、金を稼いで、ときには出かけたりして……楽しい日々だった。──はずだった。
俺の人生をぶち壊されたのは、27の頃。今のおらふくんと同じ歳のとき。
俺は、おばあちゃんっ子だった。……俺が大好きだった祖母が、無職の男に殺された。俺の誕生日の日だった。
家に帰ったときには、もう死んでいた。腹に包丁を突き立てられていた。
遺言を聞くこともなく、何か言葉をかけることもなく、祖母は俺の元からいなくなってしまった。
その時、家にいた知らない男。そいつは、煙草を吸っていた。
俺に気が付くと、鼻で笑って、祖母に吸っていた煙草を擦り付けた。
俺の中にあった怒りの鍋がふつふつと沸騰していくのが分かった。
俺は、祖母の腹にあった包丁を抜いて、男の頭めがけてぶん投げた。
男の頭には、俺が投げた包丁が命中して、男は死んだ。
肌が真っ白になった祖母に、布団をかけてやって、警察へ電話した。
住所だけを伝えて、机の上に事件の真相を書いた紙置いて逃げた。
俺だけは、生きていなきゃいけない。祖母の仇をとってしまったから。
それから俺は、人を殺し続けた。
殺人犯、銀行強盗、轢き逃げ、誘拐。色々な罪を犯した人間を、俺の手で罰した。
地獄へ送り込んでいった。だけど、それで俺の気が晴れることはなかった。
祖母を殺した人間は、罪人。その「罪人」という存在が許せなくて、罪人が全員、祖母を殺した人間に見えてきた。
だから、祖母と母親を悲しませた「罪人」という存在は、全て罰していく。
“あの人”たちと関係がある罪人らは、みんな殺す。
それが、間違った選択だったとしても。
───だが、祖母を殺した男が、血の繋がった父親だとは思っていなかった。
家族が一気にいなくなったと知ったとき、母親はどんなに悲しんだことか……。
それを、俺は知らない。
「ただ、唯一の心残りは、母親に手紙を残しておけばよかったなってことだけ。大切にしてもらってたのに、とんでもないことをしてしまった。」
ぼんさんは、震える声で頑張って伝えてくれた。
俺も、ぼんさんの気持ちが分からなくもない。
もしかしたら、俺が殺した人が、俺の大切な人を殺した人間だったら。
いや、そんなはずないか。
だって、俺は……。
………”一人”暮らしだし。
────ピーポーピーポー……
近くで、救急車とパトカーの音がする。
その音に、敏感に反応してしまう。
ぼんさんは「さっき、ここから近くの家の老人が倒れたそうだ。」と言った。
多分、俺が犯人だとバレたのではないか、と思ったことを悟ったのかもしれない。
……本当に、優しい人だ。
でも、「罪人」を罰しているなら、俺は……?