「あぁ…なんでこんなことに。」
僕はため息をつきながら荷物をまとめていた。大阪に行くための荷物だ。真っ黒のキャリーケースに衣類や日常用品、愛用のナイフと銃、最近習得しようとしている刀も入れた。もちろん、こんなもの見つかったらどう考えても警察に連行されるだけだが、このキャリーケースにはいろいろ細工が仕込まれていて絶対に警察にも見つからない。
ボス「おや、ため息なんかついてどうしたんだい?」
僕の部屋をノックもしないで入ってきたボスがそう言った。
「いきなり大阪行きなんて聞いてなかったんでね。」
そう言いながらキャリーケースを勢いよく閉めるとボスはニコニコ笑いながら言った。
ボス「そうかい、私と離れるのが寂しいのかい。大丈夫、1週間の辛抱だよ。」
「…」
図星ではないと言ったら嘘になるがなんかムカついた僕は少し強い言葉を放った。
「だまれ」
ボスはニコニコしていた顔をもっとニコニコさせた。
どうやら、逆効果だったようだ。
ボス「ボスに黙れだなんて、ウランも成長したなぁ。でも、私は知っているよ。君は図星な答えを言われたら口が悪くなる。輝の時から。きみ、結構なツンデレだからね。」
そう…だったのか…?僕にも癖がついていたのか?
「あーもういいですどいてください。」
僕は諦めてキャリーケースと共にボスの間をすり抜けて部屋を出ようとした。
その時
ーぎゅっー
「?!?」
ボスが僕に抱きついた。
何が起きたか考えられない僕ははてなとびっくりマークを何百個も浮かべていただろう。
「おや、ウランの赤面なんて初めて見たよ」
赤…面?確かに顔が急に熱くなってきたけど…
「ちょっ…ながい…!」
いつまでも僕を抱きしめているボスから離れようと必死に動いた。するとボスはなんだようーと言いながら僕を解放した。
「いきなりなに?!」
ボスは口を尖らせた。
「いやー、久しぶりに親子みたいなことしたくて。1週間も会えないしさー。」
僕はそっぽを向いてぼそっと言った。
「親子みたいなって…元から親子だろ……」
するとボスはとても驚いたような顔をして大声を上げながらもう一度僕に抱きついた。
「あぁウランー!そうだよね、そうだよねぇ。私の息子だもんなぁ!」
「ちょっ!だからやめて!」
ボスは今度こそちゃんと僕を解放して、肩に手を置いた。
「じゃあ頑張ってね。」
「そんな頑張れって言われなくたって分かってるわ!いってきます。」
僕はそう言ってキャリーケースを持ってバス停まで急いだ。
ニコア「ウランー!!!大阪へようこそぉ!!」
「うん、よろしく!」
新幹線で大阪までやってきた僕はわざわざ駅で待っていてくれていたらしいニコアに笑顔で手を振った。
それから2人で隠れ家まで歩くこと5分。
ニコア「来て早々申し訳ないんやけど、この前言った脅されたっちゅう下っ端があの集団に拉致されたねん。下剋上出されてしもうてウランの荷物置いたらすぐ行こう思うとるんや。」
拉致…。向こうも赤いディナーがどんな組織かくらいは知っているはず。下剋上なんて、生きて帰れないぞ…?
僕は殺る側なのにも関わらず向こうの心配をした。かわいそうに。
「全然大丈夫だよ。拉致なんていつぶりだろうー」
ニコア「ほんまにな!全員殺すんか?」
僕はニコアをまっすぐ見つめて静かに言った。
「当たり前じゃん。赤いディナーに喧嘩売るとか生きて返せないよ。」
ニコア「ひぇー流石時期ボスとなりうる男ですわぁ」
ニコアはこんなにチャラいのにも関わらず、本当に強い。この1週間のうちに対戦を申し込もうかな。
そうこうしているうちに隠れ家にたどり着いた。関西方面もカフェが隠れ家になっている。名前は“RED Flower”。本当にここに来るのは久しぶりだ。
ーガチャー
ニコア「ただいまぁー!!」
「こんにちは」
ニコアは元気よく挨拶をし、僕はお辞儀をしながらカフェに入った。
??「ニコおかえりー!…って、、え、?ウランさん…?!」
カウンターで接客をとっている人はアキトさん。アキトさんと面と向かって話すなんて何年ぶりだろう。
「アキトさん久しぶり!」
僕は元気よくアキトさんに挨拶をした。
ニコア「びっくりやろー?1週間こっちでお手伝いしてくれんねん!」
アキト「えぇほんまに?!よろしくお願いします!コーヒー飲んで行きはります?荷物お預かりしますよ!」
アキトさんは僕の方が断然年下なのに、僕のキャリーケースを運んでくれた。
ニコア「え?!何その態度の変え方?!俺も一応関西ではリーダーなんですけど?!」
ニコアはそう言って自分を指さした。
アキト「お前はええやろ!」
ニコア「えぇ〜?」
関西方面は楽しそうだなぁ。僕はニコニコ眺めていた。
「アキトさんありがとう。コーヒーは後でもらうよ!今から花枯らしてくるから。」
僕が静かに言うと、アキトさんは一瞬だけ動きを止めてこちらを振り返った。
アキト「ほんまですか…。この前ジブン遭遇したんですけど、なんか変な集団でしたよ。お気をつけて!」
ニコア「おうー!」
「ありがとうございます」
僕はアキトさんにお辞儀をして、あらかじめキャリーケースから取っておいた銃とナイフ、念の為手榴弾と刀も一緒に持って、カフェを後にした。
ーガチャー
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