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水を打ったような静かさの廊下にファイアールの足音だけが響く

その足音が向かうのは


「ファイアール兄ちゃん?どうしたの?」

「いや?風邪でも引いてねぇか心配でよ」


B級幹部が一人、ヴィユノーク・ヌーヴェルト拷問官ブィーチャーである彼の元だった、緑髪に桃色の瞳が目立つ彼の右側の口元には頬まで続く切り傷がある


幹部最年少のうちの一人である彼、

弓を手に持ち矢を背負う、彼の腕は見事な物で百発百中と言えるほどの腕前だ


彼は自分の役職をファイアールに言った事はない、この仕事は人の心を削ぐような悲惨な物が多いからだ


「ファイアール兄ちゃんだー!ヴィユ君だけ話しててずるい!」


そう話しながらファイアールに抱きついたのはルドベキア・ヌーヴェルト、サーナルガに続く執行官エクスキューショナーの一人であり、最年少のもう一人、ヴィユノークの双子だ

桃色の髪を二つに結び、緑の瞳と手に革の手袋を付けている

ハンマー使いであり、自身の体より大きいそれを彼女は軽々持ち上げ叩きつける


二人は自分の役職について情報屋インフォーマーと嘘をついている


「元気ならよかった、そうだ後…」

「大丈夫!殺しは魔物しかしてないよ!」


ルドベキアは笑顔でファイアールの言葉を遮った

二人はファイアールと〈人を殺さない〉と言う約束をしている


「大丈夫、心配しないで」

「…あぁ、頼んだ」

「「もちろん!」」


元気よく返事する二人に微笑みかけると彼はその場を後にした



「…普通に生かしてやりたかったな」


ボソッと呟くと彼はまた長い廊下を歩いて行った





『知ってる?同じクラスの窶?懿痤⬛︎欐儺さん』

『あーあの″狂人″って噂の!』


うるさい


『厨二っぽくてあれだよな…』

『見た目は良いのにねー…』


いやだ


『″普通″で居られないのかなー?』

『なんで合わせられないんだろ』


やめて


『近づくなってオーラ放ちすぎ』

『異常者じゃん、怖』


なんで関わってくるの?


『普通じゃない』

『異常者だろ』

『まず人なのかな?』


大っ嫌いだ



「私はその狂人度も好きだよ?」

そんなわけないでしょ


「あー!そのキャラ知ってる!」

合わせなくていいよ


「私は君を知っているから大丈夫!」


あんたが私の何を知ってるの


「″リトナ″ちゃん!」

やめてよ


「今日放課後一緒に遊ばない?」

お願いだから


「あ!あれ一緒に食べない?」

「おいしー!ほら早く食べないと私が全部食べちゃうよー?」


「濟△出墮#…w」


「あっ!笑ったねー?じゃあ一個いただき!」

楽し◀︎なっちゃ⬛︎じゃ▼

離無⚫️@嫌/!駄…


死にたく無くなるじゃんか…


私はガバッと音を立ててベットから起き上がる、時計は朝の6時を刺す

窓からは日の光が沢山の線となって差し込んできていた


「またあの夢か…」


殺しをした夜に良く同じ夢を見る

とある女の子と出かけて、遊んでいる時にいきなり 目の前で殺される夢

海でも、街でも、森でも、家でも、学校でも、どこでも必ず目の前で殺される

刺されたり、轢かれたり、引き千切られたり、潰されたり、撃たれたり、私に笑いかけた時に決まって死ぬ

未来を変えようとしても、道を変えてみても、遊ぶ場所を変えても、何をしても必ず死んでしまう


「気持ち悪…普段見てるのに…」


その夢で見る死に様だけには吐き気を覚えるし、その場から逃げ出したくなる


私は曖昧に前世の記憶がある、それが良くぼやぼやの夢になる

なんで前世だとわかるのかはわからない

その女の子の名前も、私の死因も、私を笑う人の正体も、何も知らない


ただ、一つ思うのは


「…助けられないのかな」


毎回そう思ってしまうのはまだ悪に染まり切れてないからだろうか


「大丈夫だよ、リトナちゃん」


背の方から声がして振り向くとそこには夢で見るあの子が立っていた

明るい茶色の髪を緩く後ろで縛り、おっとりしたその真っ赤な瞳は優しく私を見つめる

気配は感じない、足が透けている事から非現実的だけど幽霊だとなんとなくわかった


「リトナちゃんを傷つける奴は私がやっつけるから」

「…あなたは誰なの?」


そう聞いてもその少女は笑顔のまま、朝日の中に消えていった


「鞴〆釃↑⬛︎魑?」


何かを言った後にハッとする、もう一回同じことを言おうとしても嗚咽ばかりが部屋に響いた


「今、私なんて言った…?」


自分ですら聞き取れなかったその一つの言葉が、私の何かに重要な気がした




「ご依頼の説明を」

「…はい」


依頼者である女性は私とリトナさんに説明した、 最近街で子供が行方不明になる事が多いそうだ、依頼者である人の息子さんも行方不明になってしまったそう


「自分勝手ですみません…ですがお願いします…!私にはもうあの子しか…カサネしかいないんです…!」


ファイアールが調べたところ、この女性は付き合っていた男性に妊娠がわかると逃げられるが、子供に罪はないと産み、一人懸命に育てていたそうだ


「…世界は残酷ですね」


ボソッと私は呟いた後に続ける


「″あなたの夜を明かしましょう〝S級幹部のリュートルが貴方の依頼をお受け致しました」


そう言っても正直この依頼は受けたくなかった、少しトラウマを思い出しそうだったから


「リトナさん、明日の午前7時に出ますよ」

「…わかった!ちょっと用意してくる!」


次の日、外にいたのはリトナさんでは無くファイアールだった


「ファイアール?どうしてここにおられるのですか?」

「リトナが代わりに行ってくれって頼んで来たんだよ、私よりファイアールの方が安心出来ると思うってさ」


少し驚いた、確かに私はファイアールと仲が良いがそれはリトナさんにも同じことが言える

なぜ急にそんな事をしたのだろうか


「ま、言いたく無いなら言わなくてもいいさ、俺もまだ言った事無いしな、じゃあ行くぞ」


ファイアールは私にニッと笑いかけた



街の中央、そこは多くの商店や出店が並ぶ、こんな人通りの多い所で本当に行方不明になるのだろうか


いや、だからか


人通りが多い、すなわち見る人が多いからその印象は薄れる、珍しい服を着ていれば「見たか?」と聞けばはっきり答えれる

じゃあ逆なら?誰でも着そうな服の人を見たら答えられない、つまり目撃証言を取りづらい


「…」


普段なら虫の音のように聞こえない声がなぜか私にははっきりと聞こえた


「あっ!?どこ行くんだよ!」


咄嗟に走った、ファイアールの声も、周りの大勢の声を無視して一番はっきりと聞こえるその声を頼りに路地裏に入って行った


そこには子供の手を強く引っ張る男と死ぬ気で抵抗する男児が居た

私はその男に杖を向ける


「その手…離してください…!」

「…なんだよ」


怖く、怖くてたまらなかった

逃げ出してしまおうか、男児だけ連れて逃げればこの子は助かるんじゃないか?


ダメだ、ここで逃げても他に攫われた子達はどうなる?

助けられないじゃないか


「私は…!黄昏時トワイライトS級幹部が一人!リュートル・フェイスナル!貴方に誘拐の疑いが掛けられました!お話願います…!」


ならばここで過去を捨て去ってしまおう!

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