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冬季限定。短編集

12 - 12 【雪からの贈り物】

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2024年11月27日

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塾の帰り道。商店街の近くを通った。この時期の商店街はいつもより増してきらびやかな飾り付けで華やいでいる。

もう少し…

凍てつく空気が和らぐ頃になるまでの辛抱だ…

受験の結果が出るまでは会わないと決めたのは自分自信の覚悟を示したから。

なのに…無性にあの人に会いたくなるのは自分の弱さなのかもしれない。

無自覚にこうして自宅と反対方向に足が向いているのも、もしかしたら…そんな淡い期待を抱いてる弱さが招いたからなのだと…

商店街の横を通り抜け自宅に帰ろうとした時、

(!)

ベンチに座る湊を見つけた。

今すぐ駆け寄り、近くに行きたかった。

踏み出しかけた足を止めたのは覚悟を揺るぎないものにしたかったから。

今会えば…会ってしまえばその決心が揺らいでしまう。

あの人を悲しませてしまう…。

そんな事はしたくなかった。

立ち止まり、遠くで湊を見つめる事にした。

湊はベンチに座り携帯を見ていた。

時折見せる優しく微笑む湊の顔をシンは複雑な気持ちで見ていた。

そして、急に真面目な顔をしてLINEの文字を打ち始めた。

悩みながら…打っては消しまた打っては消しを繰り返し最後は頭を抱えていた。

湊が送る相手に嫉妬してしまう。

こんなに悩ませている相手は誰なんだ。と…

しばらく悩んでいた湊は、頭を掻くと再び携帯の画面に向かう。

その時、ひらひらと小さな白い粒が空から舞い降りてきた。

(雪だ……)

手を広げその小さな粒を受け止める。

手袋に落ちた小さな雪の粒は吸い込まれるように消えて行く。

視界の先で何かが光った気がした。

その時、シンの携帯が鳴った。

画面を開くとそこには、

『初雪だ…』

その文字と共に画像が添付されていた。

手のひらに乗った小さな雪の粒の結晶が写っていた。

顔を上げ湊を見る。

そうか…悩んでいた相手は自分だったのかと、その時わかった。

知ってます…

一緒に…同じ場所で見てます…

そう返したかった。

でも、それはしてはいけない。

湊の気づかいを無駄にしない為に

『綺麗ですね』

そう一言だけ返した。

シンの返信を読みにっこり微笑むと携帯をポケットにしまい湊は去って行った。

湊はシンと会話をしたかったわけじゃない。LINEのやりとりがしたかったわけじゃない。

きっと自分を気にかけてくれている。

だけど…だから…あえて言葉を選び、悩んでくれた。

都合良く降ってきた雪に感謝をしなければいけない。

この雪が降ってこなければ、今夜、湊からのLINEは無かっただろう。

湊から送られた画像を待ち受けに変更するとシンは冷えた身体を擦りながら家路に向かった。


覚悟は固まった。

今度こそ揺るぐ事はない。


春になったら必ず笑って湊に会いに行くんだと…。


【あとがき】

Season1の、最終話だったかな…カットになった冬服の湊さんのシーンを見て思いついたお話です。


今夜も冷えますね…


それでは、また次回作でお会いできますように…

月乃水萌

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コメント

5

ユーザー

今回もめっちゃ最高です(⁎˃ᴗ˂⁎) 月乃水萌さんのストーリー大好きです♡♡

ユーザー

今回も最高です‼️ 今年は雪見れるかなーって毎年思ってます笑

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