湯気がさらに濃く立ち込め、浴室は熱と欲望で満たされていた。
スマホの画面には、ふざけ半分で撮ったはずの写真——若井と自分のディープキス。
けれど今は、その一枚が藤澤を支配していた。
「……若井……」
名前を呼ぶと、胸の奥が切なく疼く。
右手はすでに湯の中で自身を握り、ゆっくりと上下に動いている。
お湯の抵抗が心地よく、柔らかく包まれるような感覚が熱を増幅させた。
「んっ……くぅ……」
吐息が湯気と混じり、浴室の狭い空間に淫靡に響く。
妄想の中では、あの写真の続きが鮮明に浮かんでいた。
キスの後、若井の大きな手に抱きすくめられ、そのままソファに押し倒される自分。
『涼ちゃん……もう離したくない』
低い声で囁かれ、首筋を舐められる。
「んっ……若井……やだ……」
抵抗するように言っても、声は甘く震え、逆に快感を煽るだけ。
「……っ、だめ……俺……」
現実の藤澤の指が速度を上げる。
画面の写真を見つめる目が潤み、口から熱い吐息が漏れる。
「この後……もし若井と……っ」
想像はどんどん深みにハマっていく。
浴槽の中で、腰が無意識に揺れる。
波紋が広がり、湯が縁から跳ねた。
「はぁっ……ああっ……」
妄想の中で若井が自分を抱え込み、強引に繋がってくる。
『涼ちゃん……俺のものになれよ……』
「あっ……わ、若井……もっと…っ……!」
その言葉に全身が震え、腰が跳ねる。
「や……ば……イく……っ」
浴槽の中で一気に熱が解き放たれる。
指先にまとわりつく濁りと、湯に広がる温かさ。
「んんっ……あぁぁ……っ!」
身体を震わせながら項垂れ、必死に声を抑えようとする。けれど唇から漏れ出る甘い声は止められなかった。
数度の痙攣の後、ようやく静けさが戻る。
息を荒げながらスマホを手に取り、再び画面を見つめた。
そこには相変わらず、笑いながらキスをする自分と若井。
「……もし、本当に……続いてたら……」
切なさと余韻が胸に広がる。
妄想は夢にすぎない。
けれど、写真がある限り、藤澤の中でその“もし”は何度でも繰り返される。
浴槽の中、汗と湯気に包まれながら、藤澤はまだ微かに震える指先で画面を撫で続けていた。
END
コメント
2件
涼ちゃんと若井両方積極的って感じしたけど若井の変態は変わらず(´∀`*)ケラケラ