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俺は___恋をした
転校してきて1ヶ月。
俺(結城 蒼太)には誰にも言えない秘密がある
それは、全校生徒の憧れの的であり、完璧すぎて「鉄の仮面」なんて呼ばれている生徒会長、一ノ瀬 蓮先輩に恋をしていることだ。
きっかけは、転校初日の放課後だった。
道に迷って途方に暮れていた俺に、
彼は冷たいようでいて、
驚くほど丁寧な言葉で校内を案内してくれた。
その横顔があまりに綺麗で、西日に透ける切れ長の瞳を見た瞬間、俺の心臓はうるさいくらいの音を立てた。
けれど、彼は遠い。
「……一ノ瀬先輩、お疲れ様です!」
廊下ですれ違うたび、精一杯の笑顔で声をかける。
けれど、一ノ瀬先輩はいつも、氷のような無表情で小さく頷くだけだ。
「ああ、結城か。……騒がしいぞ、廊下は静かに歩け」
「あはは、すみません……」
冷たくあしらわれるたび、胸の奥がチクリと痛む。
先輩にとって、俺はただの
「騒がしい転校生」でしかないんだろうな。
そんなある日の放課後。
先生に頼まれた書類を届けるため、俺は緊張で震える手で生徒会室のドアを叩いた。
「一ノ瀬先輩、失礼します……」
中に入ると、先輩は窓際で一人、
夕暮れに染まりながら書類を読んでいた
。
その姿があまりに美しくて、俺は思わず息を呑む。
「……結城か。何か用か?」
「あ、はい! これ、先生から……」
書類を渡し、そのまま帰ればいいのに。
俺は少しでも長く彼と一緒にいたくて、ポケットで温めていた缶コーヒーを差し出した。
「これ……良かったら。先輩、ずっと根詰めて仕事してるから」
「……っ」
先輩が、弾かれたように俺の手を振り払う。
ガシャン、と床に落ちる缶コーヒーの音。
「……先輩?」
「……いいから、放せと言っている……!」
先輩の瞳には、見たこともないような鋭い色が宿っていた。
嫌悪感……だろうか。触れられたのが、そんなに嫌だったんだろうか。
「……すまない。……もう、帰れ」
拒絶の言葉が、冷たく突き刺さる。
俺は言葉を失い、逃げるように生徒会室を飛び出した。
冷え切った廊下を走りながら、視界がじんわりと滲む。
「やっぱり、迷惑だったんだ……」
高嶺の花に手を伸ばした報いだ。
自分の熱すぎる想いが、
先輩にとってはただの不快なものだったのだと思い知らされて、 俺は冬の風のなか、独りきりで立ち尽くした。