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ゴーストカオスガーディアンズと名付けられたカード――。


これを用いたカードゲームの勝敗によってあらゆる事柄が左右する世界がある。

夕暮れのスクランブル交差点はこの時間にしては人がまばらだ。

角刈りで前髪で覆われた目元には傷痕がのぞく不気味系チンピラカード使いはいつものようにかっ歩していた。

そしていつものように特定の相手にぶつかる。


「イッテえな~!」

見下ろした先にはいかにも弱そうな、だが目鼻立ちが整った少年が尻餅をついていた。


「どこ見て歩いてるのかな!」

一層人相悪く、鋭い視線を向ければ、


「すまない…」

少年はブルブルと震えていた。


たくっ!なんでこんな奴が主人公なんだよ。

不気味系チンピラカード使いは内心悪態をついていた。

だが、口に出す事はない。それは俺に与えられた言葉ではない。


「誤れば済むと思ってるのか?ああん!」


明らかに少年を見下したように詰め寄る。もう何百回と繰り返してきた行動だ。

他のモブ連中に負けないほど威圧感を表現できていると思っていた。


「おっ!このカードレアものじゃん!ウフフフフ!」


少年の足元に落ちていた黄金で縁取りされたカードを拾い上げる。

そう、まるでお宝を見つけたように目を光らせる。


「ぶつかったお詫びとしてもらっとくぜ!」

ニヤリと嫌味たっぷりに笑えば、

「それは僕の大事なカードなんだ…」

か細い声で少年は言い返してくる。


こういう所が主人公っぽいんだろうなと不気味系チンピラカード使いは思った。

彼の伝説の始まりとなるシーンだ。だが、この先を見届けられない。

だって、俺は主人公に食って掛かるだけの不気味系チンピラカード使いだからだ。


「文句あんのかい⁉」

「いや、そういうわけじゃないけど…」


チンピラカード使いは足に力を入れた。次にやってくる衝撃に備えてだ。


「弱い者いじめはみっともないんだからね!」

少女の声と共に不気味系チンピラカード使いの膝がガクンと落ちる。

毎度毎度、この気の強い少女の足蹴りは痛いったらありゃしない。


「このガキ!何しやがる!」

小さな体の少女を見上げる形になった不気味系チンピラカード使い。

「お兄ちゃん!こんな奴、カードでやっつけちゃって!」

そのセリフでこの二人が兄妹であるのがわかる。


不気味系チンピラカード使いはおもむろに立ち上がり、にやりと笑った。

「なるほどな。カードゲームでコテンパンにしてやるのも一興だな」

「たっ…確かにカードゲームで決めるのが正義だ」

「いいぜ。存分に楽しませてやる」

「カード!展開するぜ!」


この勝負に俺は毎回命をかけてるんだ。

今日こそは主人公に勝ってやる!


ドドンッ!


「なっなんだ?」


突然、視界に靄のような黒い煙が立ち込める。

こんなシーンは今までなかったはずだ。

空を見上げれば、こちらに向かって赤い炎の光線が降り注いでいる。

クライマックスにはまだ早すぎる。むしろ、物語は始まったばかりだ。

そう思っていたら、謎の光線はすごい音を立てて地面に落下する。


ギュルルルルッ!


そこにいたのはいかにも異凶っぽい見た目のモンスターだ。

青い肌にネズミのような耳のそれは小刻みに痙攣している。


「こんなカードあったか?」

不気味系チンピラカード使いは冷静だった。


キュルッ!


「うわッ!」

甲高い奇声を発したモンスターは不気味系チンピラカード使いを素通りして、少年に突撃した。


その鋭い爪が主人公を切り裂く。


「たっ助けて…!」


不気味系チンピラカード使いに延ばされた手は無慈悲にもモンスターの巨体に押しつぶされ骨董品が壊されるように崩れていく。


「主人公が…主人公が壊された!」


どうなってるんだ!こんな序盤で主人公が消えたら物語が紡げない。

この世界は創造主が子供達向けに作った世界だと聞いている。

シリアス展開などないはずだ。


ギギギッ!


「げっ!目が合っちまった」

異様に光沢のあるその目で不気味系チンピラカード使いは睨まれた。


くそっ!まだ、主人公に一勝もしてねえのに!

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