テラーノベル
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車の窓は真っ黒だった。
外の景色は見えない。
涼架は後部座席に横たわり、拘束されたまま目を閉じていた。
手首には特殊な拘束具。
足にも鎖。
逃げることはできない。
それでも。
頭の中に浮かぶのは三人の顔だった。
モトキ。
ヒロト。
レイ。
今頃きっと、自分を探している。
「……来ちゃだめだよ」
小さく呟く。
だがその声はエンジン音に消えた。
前の席から榊が振り返る。
「君らしいね」
涼架は返事をしない。
榊は気にした様子もなく笑った。
「でも無駄だ」
「……何が」
「彼らは必ず来る」
静かな声。
「そして利用できる」
涼架の瞳が鋭くなる。
「彼らには手を出さないで頂きたい」
「それは難しい相談だなぁ」
榊は眼鏡を押し上げた。
「君は彼らにとって特別だから」
その言葉が嫌だった。
まるで人の気持ちまで研究対象みたいに扱うから。
数時間後。
車が止まる。
重いゲートが開く音。
金属の擦れる音。
涼架は顔を上げた。
見覚えのある景色。
白い壁。
巨大な施設。
高いフェンス。
あそこにみえるのは監視塔かな。
「……っ」
胸が締めつけられる。
帰ってきてしまった。
一番戻りたくなかった場所へ。
研究所。
兵士達に連れられながら廊下を歩く。
何年経っても変わらない。
冷たい床。
薬品の臭い。
消毒液。
そして。
遠くから聞こえる誰かの泣き声。
涼架は拳を握った。
榊は隣を歩きながら言う。
「安心してくれ」
「安心?」
「君は大事な研究資源だ」
涼架は本気で殴りたくなった。
だが今はできない。
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連れて来られた先は、施設の最深部だった。
重い扉。
何重ものロック。
そして。
中央のモニター。
榊が端末を操作する。
画面が点灯した。
そこに映し出されたデータを見て。
涼架の顔色が変わる。
「……何これ」
DNA配列。
獣人化適合率。
膨大な実験結果。
そして。
その中心に表示されている名前。
《被験体R-0》
レイだった。
「レイの……」
「そう」
榊は満足そうに笑う。
「零号体」
「奇跡の存在だ」
モニターが切り替わる。
次の瞬間。
涼架の息が止まった。
自分の名前が表示されたからだ。
《藤澤涼架》
《適合率 98.7%》
沈黙。
榊の目が細まる。
「君を研究所に連れてきたときに採った血を使って試してみたんだ」
「そしたら……ね」
「信じられない数字だろう?」
涼架は言葉を失う。
普通ありえない。
レイの元となったDNAは誰とも適合しない。
だから零号体だった。
それに、獣人のDNAとの適合なんて聞いたことがない。
なのに。
「……なんで」
榊は言った。
「理由はまだ不明」
「でも事実だ」
モニターに並ぶ数字。
何度測定しても同じ。
98.7%。
異常な適合率。
普通の獣人たちは、適合率が平均して30%ぐらい。
レイでさえ50%を超えなかった。
こんな数値、ありえない。
榊は静かに言った。
「君はね」
声に狂気が混じる。
「レイを超えられる」
涼架の背筋に寒気が走る。
嫌な予感がした。
本能が警告している。
逃げろ、と。
だが拘束具が食い込む。
逃げられない。
榊はゆっくり近づいた。
「君の頭脳」
「レイの遺伝子」
「そして人間の理性」
「全てを兼ね備えた存在」
涼架は睨みつける。
「そんなもの作る気か」
榊は微笑む。
「作る準備は終わってる」
その瞬間。
壁の向こうで機械音が響いた。
低く。
重く。
何か巨大な装置が起動する音。
涼架の顔色が変わる。
知っている。
あの音を。
施設時代。
最も危険な実験区画でしか聞かなかった。
榊は楽しそうに笑った。
「久しぶりだね」
研究者の顔ではなかった。
夢を語る狂信者の顔だった。
「実験を始めよう」
重い扉がゆっくり開く。
その向こうに広がる白い光を見て。
涼架は初めて。
本気で恐怖を感じた。
コメント
1件
第13話、めっちゃ重かった……涼架が一番戻りたくない場所に戻っちゃうし、しかも自身がレイを超える適合率98.7%って……それ、何の実験だよって思わず声出たわ。榊の「夢を語る狂信者の顔」って表現が刺さった。あいつ、マジでやばいね。モトキたちが来る前に何か起きそうで続きが気になって仕方ない🔥