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放課後。
「神崎。」
「ん?」
冴が鞄を持って近づいてきた。
「今日。」
「少しだけ付き合ってほしい。」
「いいよ。」
奏斗は即答する。
「どこ行くの?」
「……秘密。」
「また!?」
「嫌なら――」
「行く!」
「……まだ何も言ってない。」
「だって気になる。」
冴は小さく笑った。
「じゃあ、行こう。」
-–
二人が向かったのは、学校から少し離れた商店街。
「ここ?」
「うん。」
冴が立ち止まったのは、小さな文房具店だった。
「何か買うの?」
「……ノート。」
「ノート?」
「昨日、数学やったとき。」
「ページが足りなくなった。」
「なるほど。」
店内へ入る。
冴はノートを何冊か手に取って比べ始めた。
「こっち。」
「でも、こっちも……。」
「迷ってる?」
「……うん。」
「じゃあ二つ買えば?」
「多い。」
「じゃあ俺が選ぶ。」
「神崎が?」
「うん。」
奏斗は二冊を見比べる。
「こっち。」
「理由は?」
「表紙が石川っぽい。」
「……何それ。」
「なんとなく。」
冴は少し笑った。
「じゃあ、こっち。」
「決定?」
「決定。」
-–
店を出る。
「ありがとう。」
「え?」
「一緒に選んでくれて。」
「そんなことで?」
「そんなことじゃない。」
冴はノートを大事そうに抱える。
「一人だと、どっちでもいいって思っちゃうから。」
「でも。」
「神崎に選んでもらうと、ちゃんと決められる。」
奏斗は少し照れた。
「……それなら、いつでも呼んで。」
「うん。」
-–
帰り道。
突然、冴が立ち止まる。
「どうした?」
「……。」
冴は鞄の中を探す。
「あ。」
「?」
「財布。」
「ない?」
「……たぶん。」
奏斗も一緒に探す。
「最後に使ったのどこ?」
「文房具店。」
「戻ろう。」
二人で急いで店へ戻る。
店員さんに聞くと――
「これですか?」
カウンターの上に、冴の財布が置かれていた。
「……!」
「ありがとうございます。」
冴は深く頭を下げる。
店を出てから。
「よかった……。」
奏斗が胸をなで下ろす。
「ごめん。」
「謝らなくていいって。」
「でも。」
「見つかったんだから。」
「……。」
冴は少し黙ってから。
「神崎。」
「ん?」
「ありがとう。」
「今日、何回目?」
「……分からない。」
「じゃあ、今日のありがとうはもう禁止。」
「え。」
「代わりに。」
「また一緒に帰ろ。」
「……うん。」
-–
学校の近くまで戻ったところで。
冴が突然言った。
「俺。」
「最近。」
「神崎に頼るの、嫌じゃない。」
奏斗は黙って聞く。
「むしろ。」
少し恥ずかしそうに目を伏せる。
「頼れると、安心する。」
「……。」
「だから。」
冴は顔を上げる。
「これからも、頼っていい?」
奏斗は笑った。
「もちろん。」
「何回でも。」
「……うん。」
その返事を聞いて、冴は安心したように笑った。
-–
二人が歩き去ったあと。
商店街の角から、蓮が姿を見せる。
偶然通りかかったらしい。
二人の後ろ姿を見ながら、蓮は小さく笑う。
「……昔とは大違いだな。」
そして、そのまま反対方向へ歩いていった。
-–
第24話 おわり
次回・第25話「蓮の質問」
翌日。
蓮が奏斗に突然、
「冴のこと、どう思ってる?」
と聞いてくる。
「どうって……友達だけど。」
そう答える奏斗。
でも――
「じゃあ、なんでそんな顔するの?」
その一言で、奏斗は自分の気持ちを少しだけ考え始めるようになる。
コメント
1件
**はる。だわ!** うわあ、この回めっちゃ良かった…。冴が「頼っていい?」って聞くシーン、じわじわ来たなあ。昔は一人で抱えてたんだろうなって想像させる蓮のセリフも効いてるし、奏斗の「何回でも」がすごく優しい。文房具店でノート選ぶだけのやり取りも、二人の距離感が自然に出てて好き。次回「蓮の質問」で奏斗がどう気づくのか、続きが気になる🔥
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