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「「え……?」」
「僕が不老不死になったのって……呪いだったのか……?」
「ああ、そうさ」
そう答え風夜は続きを話し始めた。
ヤマタノオロチを倒した後すまないスクールの生徒達は卒業し、それぞれの道を歩んだ。その後も度々会ってはすまないスクール時代に戻ったように馬鹿騒ぎさ。でも、時は進むもの。生徒達はみんな成長しそして老いてゆくけれど、すまないくんだけは永遠に若い姿のまま。最後には限りのある命を生きる彼らを全員看取るハメになったんだ。
「……それは僕も同じだけれど……人間の情を持たない僕と不老不死になっただけの人間であるすまないくんとじゃ、別れた時の悲しみの大きさは比にならないよ」
風夜はフルフルと首を振った。そして
「僕が思い出したのはここまで。それ以上はたぶんどうやっても思い出せないよ」
と言って話を締め括った。
「「……」」
二人とも沈黙した。風夜は曖昧だと言っていたが今の話の中にはいくつも重要な情報が織り込まれていた。しかしその中で最も重要なのは、やはりすまない先生が不老不死になった原因だろう。
「今の話は……全て事実なのか?」
すまない先生がそう問うた。
「僕が嘘を言って何のメリットがあるのさ。それに僕は“世界の過去を写す魔導書”だ。魔導書が誤作動を起こさない限り僕の頭の中にある記憶は全て事実だ」
と言い切る。キッパリしすぎて逆に心配なくらいまであるが風夜の言っている事に怪しい点はない。とりあえず信じる事にした。
「じゃあさ、僕のこの呪いを解けば僕は不老不死じゃなくなるのかな?」
と問うた。すると風夜は難しい顔になった。そしてゆっくりと話し出す。
「……確かに理論上はそうなる。でも相手はあの【暗黒神・ヤマタノオロチ】だ。君達はおろか僕にも手の出し様がない。だから理論上解けばいいとしても解くことが出来ない、と言った状況だ」
神に作られた風夜でも手を出せないとは非常に迷惑な呪いをかけられたものである。
「大体解けるならすまないくんがボロボロの状態で僕の元に現れた時点で呪い解いてるさ」
風夜は当然だろうとでも言いたげにそう吐き捨てる。
「見捨てるには僕はすまないくん達と関わり過ぎた。僕は人間の心を知り過ぎたんだ」
風夜は目を伏せる。
「未来永劫、僕に呪いを解く事は出来ない」
風夜はそう言い切った。
「けれど」
と風夜は続ける。
「永遠に一緒にいる事くらいなら……僕にだって出来る。それが僕に出来て人間には出来ない唯一の事だ」
風夜は悲し気に微笑むと
「だから、寂しくなったら言ってね。それが僕に出来る最大の君への贖罪だ」
と言ってすまない先生をそっと抱き締めた。
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