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もう泣こうよ一緒に
というわけで4話です(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
――乱歩視点
ポオ君は、
もう一言もしゃべれない。
病室でもなく、自宅でもなく、
静かな書庫の一番奥、誰にも見つからない、あの小さな部屋で
僕たちは二人きりだった。
小さなランプと、ひざ掛けと、ポオ君が大事にしていた古い本だけ。
誰にも邪魔されない。
ただの、ふたりだけの夜。
そして、それがきっと最後の夜になるってことも、
僕は知っていた。
ポオ君は、もう力もほとんど入らないはずなのに、
僕の手を、ぎゅっと握り返した。
細くて冷たくて、でも、
その強さだけは、最後まで変わらなかった。
彼の隣に寝転びながら、
僕は言葉をひとつひとつ選んだ。
「……僕ね、ずっと前から気づいてたよ。
君が、“大丈夫”って言うたびに、本当は全然大丈夫じゃないってこと。」
ポオ君の目が、すこし揺れた。
「でも、君がそうやって嘘をついてくれたから、僕も笑えてた。」
「だから……ありがとう。」
彼の喉が少しだけ動く。
だけど、声にはならなかった。
わかってるよ。
言わなくていい。
“ぼくも、ありがとう”って言ったんでしょ。
数時間後、ポオ君は眠るように目を閉じた。
もう呼吸の音もしない。
でも、どこにも悲鳴はなかった。
涙は……出なかった。
ただ、心が音を立てずに崩れていくのを感じた。
彼の指の間に、小さな紙が挟まっていた。
震える手で開いたら、たった一行だけ。
「ぼくがいなくなっても、
君は、君の物語を続けてください。」
それが、彼の最後の原稿だった。
翌朝、誰にも言わず、
僕はひとりで彼を見送った。
花も、音楽も、なにもない。
ただ、ページのない本を抱えて、彼は静かに風になった。
だけど。
その本の表紙には、こう書かれていた。
『君の声で、僕を思い出してください』
乱歩の手帳の最終ページ(閉じたままのページ)
君の嘘は、すべて優しかった。
君の沈黙は、すべて愛しかった。
だから僕は、
君の「さよなら」を、ずっと読んでいる。
声が聞こえなくても、
名前を呼べなくても、
僕は君を忘れない。
次で終わりのつもりですが、転生させて再会させます?
させたい方は♡1500までお願いします