――恒一視点――
発進した瞬間、空気が変わった。
轟音。
衝撃波。
味方の支援砲撃が、空を引き裂く。
《後方より支援、継続中!》
「……了解!」
ガンダム・シラヌイは姿勢を整え、一気に前へ出る。
その直後、警告音。
《高速接近反応》
「……っ!」
瓦礫の影を裂き、
黒紫のモビルスーツが姿を現した。
角のある頭部。
あの機体。
「……この前の敵と、同じだ……」
少し前の戦闘が、脳裏によみがえる。
「ぐっ……」
底知れない力。
押し寄せるプレッシャー。
だが――
「……いや……」
前とは、違う。
操縦桿を握る指に、迷いはない。
「このスイッチが攻撃……
ここが移動……」
自然と手が動く。
「……わかる……
わかるぞ……!」
理解してしまった。
ガンダムの動かし方を。
シラヌイは腰部からビームサーベルを引き抜く。
白い光。
黒紫の機体も、同時に距離を詰めてきた。
刃と刃が激突する。
閃光。
衝撃。
「ぐっ……!」
重い。
だが、押し切られない。
――前より、戦えている。
そのとき、別方向で動きがあった。
――敵量産機部隊。
「今、隊長がガンダムを引き付けてある!」
苔色の量産型モビルスーツが編隊を組み、進路を変える。
「先に戦艦を落とす!」
「了解!!」
スラスターが噴き、
敵は秘匿戦艦《アマノハシダテ》へ向かう。
《敵モビルスーツ接近!》
ブリッジが騒然とする。
神崎艦長の声。
「迎撃開始!
進行はそのまま、基地へ!」
副砲が火を噴き、
一機が爆散する。
だが被弾。
艦が揺れる。
「残り距離、報告!」
《基地まで……残り六百!》
――恒一視点に戻る。
「……アマノハシダテ……!」
だが、その前に立ちはだかる影。
黒紫。
完全に、分断されている。
その瞬間、通信が割り込んだ。
《……聞こえるか。ガンダムのパイロット》
低く、落ち着いた声。
「誰だ!」
《そう声を荒らげるな》
《目の前にいるじゃないか》
「……お前が……!」
怒りが噴き出す。
「なんでガンダムを狙う!
町を、あんなふうにめちゃくちゃにして!」
一拍。
《それは、我々の持ち物だ》
「……え……?」
理解が追いつかない。
《逆に聞かせろ》
《なぜ貴様は、それを扱える》
「そ、それは……訓練の経験とかで……!」
次の瞬間。
黒紫の機体が急加速。
「——っ!」
衝撃が走る。
《その機体、シラヌイは》
攻撃と同時に、声が重なる。
《元々のパイロットしか動かせない》
「ぐっ……!」
「そんなの知らない!
だったら……なんだっていうんだ!」
《お前が——》
言葉は、遮られた。
《朝倉!!》
神崎艦長の声。
「艦長!」
同時に、敵側。
「隊長!
敵基地方面より、増援が来ます!」
状況が、一変する。
神崎が即断する。
《朝倉、遅くなったが援軍が来た》
《もう大丈夫だ、下がれ!》
「……了解!」
シラヌイが後退する。
黒紫の機体は、追ってこない。
《一旦、ここまでのようだな》
《また会う時を、楽しみにしているぞ》
通信が切れ、
黒紫のモビルスーツは戦線を離脱した。
静まり返る戦場。
恒一は、荒い息を吐く。
「……元々の、パイロット……?」
分からない。
だが確かに、
このガンダムには、自分の知らない過去がある。
そして――
敵は、それを知っている。






