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法廷の空気が、ひときわ冷たく張りつめた。 担任教師・佐伯直人の証言が終わり、裁判長が静かに槌を打つ。
「次の証人を呼びます。 ――螺斜 朝美絢をいじめていた三名の魂です」
朝美絢の肩がびくりと震えた。 逃げ場のない法廷で、彼女は小さく息を呑む。
白い霧がゆっくりと割れ、三つの影が姿を現した。
一人は、髪を巻いた女子。 もう一人は、無表情のまま腕を組む女子。 最後の一人は、気まずそうに俯く男子。
彼らは、生前と同じ制服を着ていた。
裁判長が告げる。
「証人、入廷」
三人は証言台に立つ。 その表情は三者三様だった。
主犯格の女子・水城 玲奈(みずき れな) → 強気な目つき。反省の色は薄い。
取り巻きの女子・高梨 ひより → 無表情。感情を隠している。
傍観者に近い男子・桐谷 悠斗(きりたに ゆうと) → 俯き、落ち着かない。
検事が口を開く。
「証人たち。 あなたたちは生前、螺斜朝美絢に対して継続的ないじめを行っていた。 まずは事実確認から始める」
玲奈が舌打ちするように言った。
「……別に、あいつを殺すつもりなんてなかったし」
朝美絢の胸が痛む。
検事は冷たく返す。
「殺意の有無は問わない。 問題は“行為の結果、被告の魂が破壊された”という事実だ」
玲奈は目をそらした。
ひよりは淡々と言う。
「……みんなやってたし。 私だけじゃない」
検事が鋭く切り込む。
「“みんなやっていた”は免罪符ではない。 あなたは被告の机に落書きをし、靴を隠し、嘲笑した。 事実か」
ひよりは唇を噛んだ。
「……はい」
次に、男子の桐谷に視線が向けられる。
「桐谷悠斗。 あなたは直接手を出してはいないが、 いじめを見て見ぬふりをし、笑っていた記録がある」
桐谷は震える声で言った。
「……怖かったんだよ…… 玲奈に逆らったら、次は俺がやられるって……」
検事は冷たく告げる。
「恐怖は理解する。 だが――あなたは“傍観者”ではなく“加担者”だ」
桐谷は顔を覆った。
裁判長が静かに言う。
「では、被告に対する認識を述べなさい」
玲奈が鼻で笑った。
「……あいつ、暗いし。 何考えてるか分かんないし。 こっちがちょっとからかっただけで泣くし。 正直、ウザかった」
朝美絢の目に涙が浮かぶ。
ひよりは淡々と続ける。
「……弱い子だった。 誰にも言い返さないし。 だから……標的にされやすかった」
桐谷は震える声で言った。
「……ごめん…… 本当に……ごめん…… 俺……止められなかった……」
玲奈が苛立ったように言う。
「なんで私たちがここに呼ばれなきゃいけないのよ。 悪いのは……あいつが勝手に――」
その瞬間、裁判長の槌が鋭く響いた。
「黙りなさい」
玲奈は凍りついた。
裁判長の声は、氷のように冷たかった。
「この裁判は、被告を責める場ではない。 あなたたちの“言葉”が、どれほど被告の魂を傷つけたか―― それを明らかにする場だ」
玲奈は唇を噛んだ。
裁判長は朝美絢に向き直る。
「螺斜 朝美絢。 あなたは、彼らに何を言いたいですか」
朝美絢は震える声で、ゆっくりと口を開いた。
「……どうして…… どうして私を……選んだの……?」
玲奈は答えられなかった。
ひよりは目をそらした。
桐谷は泣きそうな顔で俯いた。
法廷に、砂時計の音だけが響く。
裁判長が告げる。