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「ここだね。」
「うん。」
スマホを見ながらたどり着いたのは古民家。恐る恐る引戸を開ける。
「え、嘘めっちゃお洒落。」
「これ全部ヒルコがDIYしたのかな。」
「兄さんがここまで器用だったなんて。」
と片付けを始める。
「これって…。」
宝箱のような箱から彼女が取り出したのは。
「赤い紐と、封筒…だけみたいだね。」
「封筒の中は、この土地関係の書類と手紙??」
「僕片付けしとくから、よかったら目通す??」
「うん。」
それから。
「あの家、両親に譲ろうと思う。」
足がつかないようにしていたのか、ヒルコの荷物は海外旅行にもっていくほどのキャリーケース満杯にもならなかった。それをホテルに置いて近くの居酒屋で食事をしているなか、彼女はそう言った。
「綾野さんは一緒に住まないの??」
「うん、今はね。然るべき時が来たらそうしようと思う。」
「然るべき時??」
「結婚して出産した時。」
「それ良いと思う。」
綾野さんにはそうなってもいい意中の人はいるんだろうか。そう思ってはかっちゃんと楽しそうに話している彼女が思い出されて、少し胸が痛い。
「(かっちゃんに嫉妬してる??まさか。)」
「緑谷君次なに頼む??」
「え??あ、じゃあコーラとチーズ盛り合わせで。」
この気持ち気づかれてませんように。
最後にデザートを食べてホテルに戻る。
「片付け手伝ってくれてありがとう。」
「いえいえ。じゃあまた明日。」
隣同士の部屋にそれぞれ入った。
帰りの新幹線で、日本神話のことを話した。綾野さんは日本神話以外にも世界の神話は一通り好きで調べたことがあったと話した。
「(アワシマ神社とえびす様の総本山に一緒に行かないかって誘われてしまった…。僕で良いのかな。)」
募る思いがぐるぐると頭を回る。
休み明けから、出動要請が相次いだ。
「これまとめたら帰れるぅ。」
「疲れ出てない??大丈夫??」
「私は大丈夫。緑谷君こそ大丈夫??」
「僕も平気だよ。どう??提出できた??」
「うん…できた!!」
更衣室で着替えていると。スマホが鳴った。
「(かっちゃんからだ…!?)」
いつまで自分の気持ち見てみぬフリしてやがる。
「(破壊力あるなぁ…。)」
外に出ると綾野さんの後ろ姿が。思わず引き留めて勢いのまま告白してしまった。
「いきなりでごめん!!どうしても伝えたくて!!」
「私も、好き。」
彼女の微笑みはこうなることを分かっていたかのようで。
「行こうか。」
手を差し出すと指を絡めてつないでくれる。
「今度細やかなお祝いしようね。」
「うん。あ、アワシマ神社とえびす様の総本山いつ行こうか??」
「そうだね、いつがいいかな。」
帰り道の僅かな時間さえ愛おしく。これからも綾野さんと居れることがさらに僕を満たしてくれる。
「(幸せにするんだ。必ず。)」
No.1ヒーローと彼女のヒーローどっちもなってみせる。