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ごぽり、ごぽり
泥が溢れる。泥からモンスターが生み出され、そのモンスターは外へと向かう。
泥が外に溢れる度に、涙が泥となって溢れる度に、
記憶が、過去が、溢れる。
『なんでこんなことするんだ!!』
──ごめんなさい。
『娘を、娘を返してぇ!!』
──ごめんなさい。
『神様なんかじゃねぇ!お前は邪神だ!!』
──ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
だって、これが“私”だから、“私”の仕事だから。
こうでもしないと貴方たちは堕落してしまう。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・
ドチャッ
・・・上から、何かが落ちてきた。この泥を浴びれば、激痛が走り、手足が動かなくなるのに。
そう思い、顔を上げた。そこには、
「・・・すま、ない、さん・・・?」
泥まみれのすまないが顔を上げていた。
✵✵✵✵✵
(泥があって助かった〜、まぁ、別に折れても治るからいいけどさ)
と、すまない先生はあっけらかんに考える。一応自分の身を大切にせずに突っ込んだら、風夜に平手打ちされたのが懐かしい。いや、それより。
(って、確かに、この泥痛いし、もう指先が動かないな・・・)
先程飛び降り、泥によって着地は何とかなったが、泥を被ったところは上手く動かせない。まるで、錆び付いた自転車のように指先が動かなかった。
そして、すまない先生は目の前を見た。
そこには、エウリが居た。
だが、エウリの綺麗な白の髪は真っ黒になり、服も真っ黒、目元からは黒い泥がポロリポロリと、零れ、地面に溜まっている泥に落ちる。
「・・・エウ・・・」
「来ないでください!!」
エウリの拒絶に、すまない先生は少し驚いたように目を丸くした。
「なんで来たんですか!?知ってますよね!?私が“人間”じゃないのを、それに、なんで泥の中に突っ込んで来たんですか!!バカなんですか!!」
そうエウリは叫ぶ。だが、すまない先生はそんなエウリを気にせず、近寄った。
「・・・そうだね、僕はバカだよ。不老不死だからって自分の身を気にせずに飛び降りたり、戦ったりして、大怪我して、それで、風夜達に怒られて・・・ほんと、僕はバカだよ」
そうすまない先生は笑い、エウリの頬に手を伸ばした。
「でも、僕は、助けたいって思った人は助けたいんだ。例え自分の身を削っても、自分が怪我しても、それが自己満足だとしても、手が届く範囲の人を助けたいって。だから・・・」
すまない先生はエウリの目から零れる泥に触れる。
「僕は、エウリも助けたい。君が今まで頑張ってきた分、僕もそれを背負いたい、恋?とかよく分からないけど、エウリの傍にいたいし、傍にいるのはエウリがいい。生徒達と同じくらい、エウリのことは大好きだから、大切だから」
そうすまない先生は微笑んだ。
「・・・ッ!」
エウリの涙が黒から、透明の涙に変わる。
透明の涙が泥の中に落ちた途端、そこから泥が花へと変わる。
白く、美しい花。
泥のモンスターも消え、泥も完全に消えた。
「・・・改めて、エウリ。僕と共に来てくれますか?」
「・・・ッ・・・えぇ!喜んで!」
そうエウリは微笑み、すまない先生に抱きついた。そんなエウリをすまない先生は優しく抱きしめた。
──こうして、泥のモンスター事件は、世界各地で白い花を咲かせ、幕を閉じた。