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注.片思い バトエン 、影日
R18シーン❌
『 翼がちぎれて離れ離れ 』
烏野高校排球部。
インターハイ予選を控えた体育館。
影山飛雄と日向翔陽のコンビネーションは、日を追うごとに鋭さを増していた。
周囲はそれを「進化」と呼んだが、日向だけは、自分の中に生まれた「猛毒」に気づいていた。
影山を見つめるたび、心臓が痛い。
それは「もっとトスをくれ」という渇望ではなく、「俺だけを見てほしい」という、バレーボールには不要な、独りよがりの恋慕だった。
「おい日向! 今のはもっと低く入れって言っただろ!」
影山の怒声が響く。
影山にとって、日向は「最強の駒」であり「最高の相棒」だ。そこに一ミリの恋愛感情も、甘えも存在しない。
日向は、影山がバレーのことしか考えていないと分かっていた。
だからこそ、自分の想いがバレたら、この完璧なコンビネーションが壊れてしまうと恐れた。
(影山は、俺を見てるんじゃない。俺の『背中』にある翼を見てるんだ)
日向は、影山の理想に応えようと無理な練習を重ねる。 影山のトスに完璧に合わせるため、自分の体調や限界を無視して、ただひたすらに跳び続けた。
影山が喜ぶトスを、影山が満足するスパイクを。
その献身は、愛ではなく、もはや呪いに近いものになっていた。
インターハイ予選。
勝負を決める大事な局面。
影山からの完璧なトスが上がる。日向はいつものように跳んだ。だが、酷使し続けた膝は、ついに限界を迎える。
「……あ」
空中でバランスを崩した日向の視界に、驚愕に染まる影山の顔が見えた。
ドサリ、
という鈍い音。ボールはコートに落ち、日向もまた、冷たい床に叩きつけられた。
靭帯断裂。
日向が二度と以前のようなジャンプができないと告げられたのは、その日の夕方のことだった。
数ヶ月後、卒業式を終えた誰もいない部室。
松葉杖をついた日向の前に、影山が立っていた。
「……日向。お前、もう跳べねーのか」
影山の声は低く、怒っているようにも、泣いているようにも聞こえた。
影山にとって、日向は「自分を完成させてくれる唯一の存在」だった。その存在を失った影山は、どこか魂が抜けたような顔をしていた。
日向は、喉まで出かかった「好きだよ」という言葉を飲み込んだ。
今さら伝えても、バレーを失った自分に影山は興味を示さないだろう。
影山が愛していたのは、自分ではなく、自分が打つ「スパイク」だったのだから。
「ごめんな、影山。最強の相棒じゃなくなっちゃって」
日向が無理に笑う。
影山は何も言わず、ただ拳を握りしめて背を向けた。
影山はこれからプロへ、世界の頂点へと進む。日向はその背中を、二度と追いつけない場所から見送り続ける。
二人の関係は、壊れた歯車のように二度と噛み合うことはない。
片方は、愛する男に「道具」としてしか見られなかった絶望。
もう片方は、唯一無二の「武器」を失った喪失感。
体育館に響いていたはずの「持ってこい!」という声は、二度と戻らない。
それが、二人が選んでしまった、いや、必然的だったのかもしれないあまりにも残酷な終止符だった。
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝
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