コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
いつものように、ミナミはバトルロビーに向かっていた。
ガチマッチの空気が好きで、勝っても負けてもテンションは高い。
でもその日、ふと目に入った。
ロビーのすぐ横にある、妙に重厚な建物。
「……あれ、なんか怖そう。ていうか、何の施設?」
近づいてみると、扉は開いていた。
中は薄暗くて、インクの匂いが少し違う。
「うわ……なんか、空気違う……」
恐る恐る足を踏み入れると、
正面に木彫りのクマの置物が鎮座していた。
「え、なにこれ……インテリア? こわ……」
その瞬間、置物がしゃべった。
「おや、バイト希望者かね?」
ミナミは、声にならない声を漏らした。
「え、しゃべった!? 置物が!?」
クマサンは、まったく動じずに続ける。
「ふむ。君のようなイカした若者にしか頼めない仕事なんだ。とても助かるよ。」
ミナミは、半笑いで後ずさりしながらも、耳はちゃんと傾けていた。
「アルバイトのみんなには、まず『けんしゅう』を受けてもらう必要があるんだが、今から始めてもいいかい?」
「け、けんしゅう……? え、なんか本格的……」
その様子を、少し離れた場所から恒とひろが見ていた。
恒は、ペットボトルを飲みながらぽつり。
「初回あるあるだね。」
ひろは、ギアを整えながらうなずいた。
「置物がしゃべるのに驚くのは、みんな通る道。」
ミナミは、まだクマサンの前で固まっていた。
「え、これほんとにバイト? なんか、世界観違うんだけど……」
恒とひろは、何も言わずにそのまま見守っていた。