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「――安心しました。日織さんの身体はそのつもりでいらっしゃるようです」
私の反応に満足なさったように微笑まれると、修太郎さんがツ……と身を引かれました。
彼の口調が穏やかになったのと同時に、いつものように「日織さん」と呼んでいただけたことに酷くホッとしました。
目端を赤く染めたまま、力なく修太郎さんを見上げました。
「シャワー、浴びてきますね」
修太郎さんがそう仰って、私の額に軽くキスを落としていらした途端、張り詰めていた全身の力が抜けました。
(こ、怖かったのです……)
久々に心の底から修太郎さんのことを男性として怖い、と思ってしまいました。
一人取り残されたリビングの片隅で、小さく唸りを上げるエアコンの音をぼんやりと聞きながら、私は床に両手をつくようにしてへたり込んだまま動けません。
こんなんで、キスのその先に進めるでしょうか。
修太郎さんが仰ったように、私は心のどこかでそのことを薄ら期待していたのに……恥ずかしくて、まるでそんなこと想定していないかのような天邪鬼な態度を取ってしまいました。
(もっ、もちろん! お風呂はそういうつもりで入ったわけではなかったのですけれどもっ)
修太郎さんを怒らせてしまったのは当然な気がします。
全ての問題が片付いたら……一緒にキスのその先へ進みましょう、と何度も二人でお約束をしたのに裏切るようなことを言ってしまったのですから。
私はおバカさんなのですっ。
このままは絶対よくないので、修太郎さんが戻っていらっしゃるまでに何をすべきか、一生懸命考えてみることにしました。
普通、女性はこういう時にどうするものなのでしょう?
寝室で裸になって、お布団にくるまっておくのでしょうか?
それとも……ベッドに腰掛けて待つものですか? えっと……その場合お洋服は?
お部屋の電気は……いつ切るものなのでしょう?
そわそわと思いをめぐらせてみたものの、何の名案も浮かんできません。
そもそも何の予備知識も持たないのに、いくら考えたって分かるわけがないのです。
「あっ」
私はそこで、秘密兵器の存在をふと思い出しました。
「スマートフォン……!」
さすがに持って大分経ちましたので、使い方も板についてきました。
私は検索ウィンドウを開いて検索ワードを打ち込もう……としてまたしても止まってしまいました。
(えっと……何と打てばよいのでしょう?)
キーワードを思いつけなければ、何も調べられません。
結局スマートフォンを手にしたまま、私は固まってしまいました。
そうなのです! 私が修太郎さんをお部屋で待とうとするからいけないのかも知れません!
こ、ここは、修太郎さんが出ていらしたら、「やっぱり私もシャワーを……」とお話してお風呂をいただけば良いのではないでしょうか?
そうすれば、待つのは修太郎さんにシフトして、私はただお風呂から出てくるだけですみます。
あれこれ思い悩んで、お部屋を右往左往しなくて良くなります。
シャワーを使わせていただくからには、せめてショーツくらいは取り替えたいです。
下着、余分に持ってきておいて正解でしたっ!
コメント
2件
ひおりちゃん、可愛い!
いやもう、日織さんの戸惑いが可愛すぎて悶えたわ…!「スマホで検索しようとしてキーワードが浮かばない」っていう初心すぎる葛藤、完全に共感する。修太郎さんの「怖い」って思った後に、待つときの格好とか真剣に悩んでるのが健気で、応援したくなった。ちゃんと二人で約束してるからこその緊張感と覚悟が伝わってくるエピソードだった🔥