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「……あの、そもそも誰なんだ、君は」
「あぁ、そうだった。申し訳ありません、自己紹介が遅れました。ぼくは、エリ・エルスター。年は23、冒険者をしている者です」
おいおい、と俺は内心おののく。
……その名前と華々しい実績は、5年間田舎で暮らし、情報に疎い俺でも知っていた。
数いる冒険者の中でもトップクラスの実力を誇り、一人で上級ダンジョンをも踏破したことのある実力者にして、『疾風の剣聖』とまで呼ばれる女性だ。
容姿の美しさもさることながら、その実力は折り紙付き。
誰もに求められる冒険者で、一人で億ベル以上を一年で稼ぐとも聞いたことがある。
となれば、不思議な点だらけだった。
「な、なんで、あなたのような人が俺を勧誘するんです? それこそ一人でも十分なんでは……」
「ぼくは、より強くなりたい。未曽有の敵に遭遇しても、立ち向かえる力がほしい。そのためには、さらなる進化が必要になります……。色々な手を尽くしてきましたが、その一つとして喪失魔術の習得が近道であると考えたのです」
それが五年前、まだ俺が教授をしていた頃のこと。
いつか教えを乞おうと機会を窺っていたところ、俺が追放されてしまったそうだ。
それからというもの。
エリは冒険と鍛錬で全国を行脚するかたわらで常に俺を探していたらしい。
そして今回なぜここへ来たのかといえば……
「ヒュドラを誰にも気づかず倒せる人間は、そうはいません。ぼくにもまずできない。となれば、あなたしかいないかと」
「またそれかよ。君らなんなの、ほんと」
普通、それだけで俺だと分かる人間は、そういないはずなのだが。
これでもう2人目ときていた。
こんなの謎の英雄でもなんでもない。ばればれじゃねぇか……!
一人、がっくりとくる俺に、
「それで、どうでしょうか。ぼくとともにこれから北方のダンジョンへ行くというのは。
今受けている依頼から、加わってもらいたい」
エリは長いまつ毛を伏せながら、こう投げかける。
そんな突然の申し出に答えたのは、俺ではなくリーナであった。
「残念ですね、エリさん。もう遅いです。私が先に勧誘したんです。
あなたのような一流冒険者相手でも、今回は引けません。先生には、王立第一魔法学校に来ていただきます」
「まだサインをしたわけではないのだろう? ならば、ぼくにも誘う権利があると思うが? 今ならそうだな……賞金の山分け、家の保証、それから……ぼくがなんでも言うことを聞く権利もつけますが」
いや、なにその子供じみた権利は。