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事故以降のワープ回数は約三〇回。出入りで計二度のずれを生んだ結果、通常の誤度に加えて30×2の、およそ六十度も誤った方向に移動してきたことになる。そこへ、大きめにとったワープ幅が傷口を広げていた。さらに、船が宇宙の外側へ向かえば向かうほど、に内側方向から働く遠心力が一層強くなる。
しかも、それだけではない。二次元の画面は真実の一面しか伝えていないことに、郷田はまだ気付いていない。たとえこの宇宙で最も直線に近くても……大公転軌道は円だ。三次元世界では、それは球を意味していた。百八十度度の違いなどなくたって、その角度で航行を続ければ、いずれ大軌道に向かっていくのと同義であった。
さらなる追い打ちは恒星風だった。船はそれでもまだ大軌道に入らずに済む位置にいたにもかかわらず、風に流されて一気にレーンに乗ってしまった。
宇宙地図が正常でも、ワープ機能が正常でも、プログラムが正常でも、いや、だからこそ地球との通信が取れないほどの距離を隔ててしまったことに、この船が大公転軌道上、つまりは宇宙の縁にいる事実に、今や郷田も気付きつつあった。
彼は壁の遺影前に泳いだ。隊員達が、存命中と変わらぬ微笑みでこちらを見ている。
「みんな、どうして」
今はどうしても、微笑み返せない。
「こんなとこに、俺を一人ぼっちにしちまったんだい?」