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「やっぱり、夢じゃなかったのか」
目を覚ますとウームの房が、両側の窓から光と影を同時に浴びて立体感を際立たせていた。少々空腹を憶えてはいるが、郷田は実をつまむ気にならなかった。
光る方の窓から故郷の星を探し出すのは、地球上の浜辺に散る砂から僅かに色の違った一粒を探しだすようなものだ。いや、その何億倍難しいことだろう。今見えている風景はまだ、三次元空間のほんの一角に過ぎないのだ。
郷田は身体中が……髪の毛の先、皮膚、筋肉から内臓の一つ一つに至るまで……こわばっていくのを感じた。口の中が乾いている。背中が汗ばんでいる。考えれば考えるほど、頭蓋骨の中にある糸がこんがらがっていく。地球ではこの状態をノイローゼと呼んでいた。宇宙では、そのような病名を付けてくれる機関はない。
助かるには、あとは神様に頼むしかなさそうだった。