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短いやつ

46 - 調和

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2025年05月28日

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💙×💛 リクエストを頂いた作品です🪶

💙視点


「えへ、カラオケ久しぶりだね!今日はいっぱい歌うぞ〜!!」

「………」

マイクを片手に、張り切った様子で曲を入れ始める涼ちゃんの姿をじっ、と見つめる。暗い室内で光る端末が涼ちゃんの瞳に反射し、キラキラと映っている。おもちゃに目を輝かせる子供のようで、無意識の内に頬が緩んでしまう。

「今日はミセス縛りで行こ!僕最初ね!」

「うん、涼ちゃん最初でいいよ。」

いつもよりもご機嫌そうに話す姿が何とも愛らしい。カラオケに誘って正解だったな、と幸せに浸っていると、突然誰かが涼ちゃんの肩を引き寄せた。

「涼ちゃんこれ歌ってよ〜」

「庶幾の唄?」

「そお、俺エアフルートするから。」

「……………」

涼ちゃんに顔を近づけ、一緒に画面を覗き込む元貴。特に涼ちゃんは気にする素振りもなく、寧ろ楽しそうにニコニコと微笑んでいる。

「……てか、俺元貴のこと誘ってないんだけど、!!なんでいんの、!」

「なんでって……ね〜?」

「ねー!」

ねーってなんだよ、と出そうになった言葉をなんとか飲み込み、仲睦まじい2人の姿から目をそらす。別に元貴のことをハブりたい訳ではなく、今日は涼ちゃんと2人でカラオケに行きたかった。だって、涼ちゃんを好きだから。もっと俺に興味を持って、あわよくば振り向いて欲しい、なんて思って昨日の夜も全く寝れなかったというのに。折角の完璧な計画が全部白紙になってしまった。

「、俺飲み物取ってくるわ。」

「ん!おっけー、いってらっしゃい!」

「あ、俺のもお願い。」

「…はいはい、分かりましたよー、」

早速曲を入れた涼ちゃんの楽しそうな声を背に、カラオケの個室を後にする。中よりも涼しい空気が、嫉妬で埋め尽くされていた頭を冷静にしていく。そもそも元貴だって大事な俺の友人なんだ。こんなにも嫉妬するなんておかしい。

「、1回落ち着こ……」

ぱちん、と両の手のひらで自身の頬を叩き、何とか涼ちゃんの姿を頭の中から無くそうと首を振る。何もチャンスが完璧に無くなったわけではない。大丈夫、俺ならやれる。

「よし、…頑張ろ!」










「、、ふぅ、…」

3人分のドリンクが入ったコップを載せたトレイを片手に、2人がいるであろう個室の前で深く呼吸をする。この飲み物を涼ちゃんに渡したら、「一緒に歌おう」と誘うんだ。もうずっと一緒にいると言うのに、1つの誘いが酷く緊張する。怖気付く手のひらを無理やり動かし、勢いよく扉を押した。

「飲み物取ってきたよ〜……っ、え?」

「あ、若井。おかえり。」

開いた扉の先にあったのは、ソファに仰向けに倒れる涼ちゃんに覆い被さる元貴の姿。涼ちゃんのすぐ側にはマイクが放り出されていて、心做しか頬も赤い。

「、お前!何して、っ!」

完全に元貴が涼ちゃんを襲っている、としか言えない状況に、勝手に身体が動き出していた。片手に持っていたトレイを机に雑に置き、傍に駆け寄った俺に、涼ちゃんの明るい声が響いた。

「やっぱり元貴凄いね〜!!体幹とか関係してるのかな?」

「涼ちゃんの体幹が無さすぎるだけじゃない?てか、顔赤すぎでしょ。無理な体勢で歌うからだよ。」

「えへへ、…めっちゃ音程ブレちゃった。」

「……は、?」

困惑をする俺を置いて繰り広げられる2人の会話に、思わず声が零れ落ちた。丁度入れていた曲が終わったのか、大画面の中には、「82点」という数字が表示されていた。

「若井もやってみる?横になりながら歌うの結構きついよ〜。」

「いや……、」

そんな俺の様子を気にする素振りもなく、はい、とマイクを差し出してきた涼ちゃんの手元をじっ、と見つめる。ここで言うべきなのか、それとも違うタイミングで言うべきなのか。数秒の間で頭の中に様々な考えが浮かび、ぐるぐると回り続ける。パンクしそうな思考量に覚悟を決め、差し出されていたマイクを手に取った。

「…っ、一緒に歌お!!」

ばっ、と顔を上げて涼ちゃんの姿を瞳に映す。一瞬目を見開いた涼ちゃんだったが、直ぐにいつもの笑顔に戻り、傍らに置かれていたもうひとつのマイクを手に持った。

「何歌いたい?」

「え……」

突然の質問に言葉が詰まってしまう。脈略のない質問、とは言い難いが、一緒に歌おうと切り出すことばかり考えていて、歌う曲を全く考えていなかった。机の上に置かれていた端末をスクロールする涼ちゃんを横目に、また必死に頭の中で思考する。まだカラオケが始まったばかりのこの空気でしんみりとした曲を歌うのも何か違うし、ここは無難に明るい曲で行くべきか。いや、でも………

「ちょっと俺トイレ行ってくるー!ついでに飲み物取ってくるわ。」

「おっけー元貴〜。てきとーに歌っておくね〜」

いつの間にか空になっていたコップを机に置き、部屋を出ていった元貴の背中を見送る。流石にナイスタイミングすぎるこの状況。無駄にする訳にはいかない。

「…、じゃあこれ歌お!!」

「これ?」

たまたま端末に表示されていた「フロリジナル」と言う文字。このままずっと曲に悩んでいたら、元貴が帰ってきてしまうかもしれない。「どんな感じだったっけな〜」と悩む涼ちゃんを横に、さっさと曲の予約を入れてしまう。

〜♪

綺麗なメロディと共に、画面に緑が基調のMVが映し出された。楽しそうにリズムに乗る涼ちゃんのすぐ横に座り直し、片手に持っていたマイクを握りしめる。

「「緑が深いこの森を抜け その先の町へ行こう」」

涼ちゃんの少し高めの歌声と、俺の低い歌声が重なり、ひとつのハーモニーが生み出される。MVに映る涼ちゃんの髪色が懐かしく、何となく感慨深い気持ちになる。今の髪色と比べてみようと横を見ると、ふと瞳がかち合った。

「愛してる」

「っ、!?」

真っ直ぐと瞳を見つめたままそう告げられ、心臓が大きく跳ねた。思わず歌を止めてしまった俺の様子に、涼ちゃんが不思議そうな表情を浮かべて首を傾げている。

「なんかもう要らないよ 今だけただ抱きしめてほしい」

曲の歌詞の1部なだけだというのに、1度撃ち抜かれた心臓が酷く煩い。そんな気持ちを誤魔化すよう、マイクを握り締めて先程よりも声を大きく歌い直す。

「「大切な人に大切にされたい」」

〜♪


順調に歌い続け、Cメロの前まで差し掛かった時、ふわりと横から香った甘い香りが鼻を通った。何処か覚えのあるような香り。

「「目で見てみないと 冒険しないと」」

ワクワクが腐るから 外へ出たい

スクリーンから映し出される光に照らされた、綺麗な涼ちゃんの横顔。その首元につけられていたネックレスがキラリと光を反射した。

「「壮大な景色を 想像してる今日も」」

見覚えのあるデザインに目を見開く。ついこの前俺がプレゼントしたネックレスで、さっき香った香水も俺があげたものだ。「勿体ないから使えない!」なんて言っていた涼ちゃんに肩を落とした記憶も、鮮明にある。

「消えちゃいたい夜も 私の導火線」

突然歌を辞めた俺に、楽しそうに笑みを浮かべていた涼ちゃんの困惑した瞳が向けられた。サビの前に訪れた歌のない間。ぎゅっ、と手のひらを握りしめ、マイクを置いて涼ちゃんの頬に手を伸ばす。スピーカーから流れる涼ちゃんの軽快なピアノの音を耳に、柔らかな唇に口付けた。

「………へ、」

ちゅっ、と可愛らしくマイクに入ったリップ音。みるみるうちに頬を赤く染めていく涼ちゃんに微笑み、そっと言葉を紡ぐ。

「愛してる」

ならもう聞かないよ

大きな目を見開き、瞳を潤ませたまま動きを止めてしまった涼ちゃんに釣られ、段々と気恥ずかしくなってしまった。慣れないことはするものじゃないな、と後悔しそうになっていた時、部屋の扉が開いた。

「あぁ 生きてる〜なんてそう思えやしないよ 今だけ香りに包まって 」

握りしめた手をマイク替わりにし、スピーカーから出る音にも負けない声量で歌いながら入室した元貴にビクリと肩を跳ねさせる。

「私は知る 完璧な思いはこの世に無いと」

不自然な配置で固まった俺たちに向けられた、何もかもを見透かしたような元貴の瞳。涼ちゃんの手に持たされていたマイクを手に取った元貴が、にやりと口角をあげた後、唇を緩く噛み締め、小さくリップ音を立てた。

「…俺が居ない間にあちちだね〜?」

悪戯に笑った元貴の声と同時に、曲が終わった。大画面に映し出された「51点」という文字。思っていたよりも低い数字に反応を示すより早く、未だマイクを握りしめたままの元貴が大きな声をあげた。

「あっれれ〜!これは51(恋)って事ですか〜!若井さんったらロマンチック〜〜!!」

「「………、」」




付き合った後も一生❤️にネタにされたらしい。










あんころ様、素敵なリクエストをありがとうございます🤤💞

フロリジナルを聴いていたら浮かんだシチュです✨️

実際の曲の方はキャップを開ける音でしたっけ🤔












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