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静かな夜道を歩きながら、咲はふと横に並ぶ悠真の歩幅に合わせている自分に気づいた。
「……悠真さんは、子どもの頃から変わらないですね」
気恥ずかしさをごまかすように笑いながら言う。
「変わらない?」
「はい。いつも冷静で、大人っぽくて。お兄ちゃんの友達っていうより……先生みたいだなって」
自分で言っておきながら、咲は頬が熱くなるのを感じた。
悠真は少し黙ったあと、ふっと息をもらす。
「……そう思われてたのか。俺としては、妹ちゃんのこと――ただの子どもだなんて思ったことはないけどな」
「……え?」
立ち止まりかけた咲に、悠真は視線を合わせず前を向いたまま歩を進める。
胸の奥で、なにかが大きく波打った。
咲はその鼓動を必死に隠しながら、隣を歩き続けた。