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(ただの子どもだなんて思ったことはない――)
悠真の言葉が、何度も頭の中で反響する。
夜風が頬を撫でているのに、熱は下がらない。
(……どういう意味なんだろう。からかい? それとも……)
胸の奥がざわざわして、うまく息ができない。
小さい頃から「妹ちゃん」としか呼ばれなくて、いつも子ども扱いだと思っていた。
けれど今の言葉は、今までの関係を壊してしまうような響きを持っていた。
隣を歩く悠真の横顔は、花火の光を失った暗がりでもはっきり見える気がする。
落ち着いた声、歩調を合わせる足音――どれもが心に深く入り込んでくる。
(……やっぱり私、ずっと悠真さんのことが――)
気づきかけた瞬間、咲は慌てて首を振った。
「……っ、なんでもない」
自分自身に言い聞かせるように、つぶやく。