4.ブルーローズと魔法少女
「ピーチ、この上にサイエンティストとノワールエスピ がいる。早く上がって!」
ずっと体育の成績オールBの私は息を切らしながら急いで走る。
「そこ左曲がって真っ直ぐ行けばサイエンティストがいる。初仕事頑張れ!!」
ルナの言った通り炎をくぐり抜けて行くとそこにはサイエンティストがいた。
「おっ、初仕事にしては終わるのが早いね。すごいすごい」
珠莉さんはこちらを見て笑顔を浮かべた。
「この先ずっと行ったらノワールエスピがいる。今はあまり激しく動いていないから今だ」
ルナは落ちついてパレットから言う。
「OK。ピーチ行くよ」
「わかりました…!!」
初めて…魔法少女という肩書きを背負って…怪物と戦える…!
足踏まないように…頑張らないと!!
私達は炎の向こう側へ一歩踏み出した。
「…五月蝿いと思ったら魔法少女かよ」
私より少し大きいノワールエスピがこっちを睨んでいる。珠李がポケットから大きなモーニングスターを出し構えていた。
「(私も武器を出さないと……)」
ポケットから折りたたみの剣を出し、珠李の構え方を真似た。
「お〜隣の桃みたいな奴は新人ちゃんか?じゃあ……」
ノワールエスピはニヤリと笑い私の方へ走ってくる。
う…腕が動かない……!
「…!!」
珠李がモーニングスターを私の目の前にいるノワールエスピへと勢いよく投げた。
壁へ押し込まれたノワールエスピは負けを認めずにすぐ立ち直り、今まで隠していたように出すとがった爪を見せつけたあと、またこちらへ走ってきた。
「ピーチ落ち着け、腕を振るだけだ!!」
ルナが優しく、早口で話したあと気持ちを落ち着かせ、剣を両手で握る。
「ー!!」
今まで叫んだ事のない声が一気に溢れたが、そんなの気にしてられない。
「お、腕やったか。」
私はノワールエスピの片腕をちょんぎった。だが、血というより炭のような黒い液体が出てきた。
グワァァとノワールエスピは叫び、腕をゆっくり生やしながらまたこちらへ走り出した。
「次は僕がやるね。」
珠莉はモーニングスターをものすごい強さでノワールエスピに投げる。
そしたら、ノワールエスピはボトンと床に倒れ込み、それが立ち上がろうとした時、珠莉がポケットから出した薬をノワールエスピの体に流すと動かなくなり、口がうるさいだけになった。
「次はトドメをさそう。僕と手を繋いで、一緒にクールルリエって言うんだ。」
わかりましたと、うなづくと珠莉は口角を軽く上げてから前を向き、手を差し出してきた。
大丈夫、いける。
あとは、これで_!
すぐに珠莉と手を繋ぎ、深呼吸をする。
すー…はー……よし…
珠莉がこちらをまた向き、目を合わせてから私たちは口を動かした。
「「cœur relier!! 」」
そう一緒に言うと、繋いだ手から大きな剣が出てきた。その剣の中には薬が入っていて刺したら薬がノワールエスピの中に入っていくのだろう、注射器みたいだ。
「いくよ、ピーチ」
「はい!」
私たちはその剣を持ち、助走をつけながらノワールエスピのお腹へ、その剣を刺した。
そして、剣の中の薬が全部お腹へといった後、珠莉は私をまたお姫様抱っこをして後ろへと下がりはじめた。
「リーダー!?」
その後ボンッとノワールエスピが建物を壊さないぐらいの大きさで爆発したのだ。
「…うん、これでノワールエスピは消えたよ。」
珠莉さんは私を優しく下ろし、目の前のノワールエスピがいた場所へ指を指す。
指を指した方を見てみると、少しキラキラしている濁った色のハートのペンダントのようなものが落ちていた。
「ノワールエスピってね、人間の暗い心から生まれた怪物なんだよ。」
珠莉は指していた指をおろし、そのまま目の前に落ちているペンダントをじっと見て話す。
「まあ、人間がイライラしてる時、関係のない物とか人にあたっちゃうでしょ?だから、人間の中にいるノワールエスピが出てきて、こんなに暴れちゃうんだ。」
こんなに、というのは多分今ここにいる燃やされたハンバーガーショップなどだろう。
「このペンダントは、ノワールエスピの中の本当の心。分かりやすく言うと、ノワールエスピが着ぐるみで、中にいるそれを操っているモノがこのペンダント。」
珠莉はペンダントに向かって歩き、ついたらそこでしゃがみ、そこで後ろを向き手招きをしてきたから、私は珠莉の隣でしゃがんで、ペンダントを見た。
「ノワールエスピを倒した後にこのペンダントが出てくるから、出てきたらマジックモーンドに行って、誰かが回収機用意してくれるか、回収機がある場所へ持っていってそれに絶対いれてね。」
「わかりました!」
私はペンダントをポケットの中にしまい、珠莉の方を向いた。
「じゃあもう帰ろうか、用は済んだし。あとは消防士さんに任せよう。」
珠莉は私をまたお姫様抱っこして、空(マジックモーンド)へと飛んだ。
「ちょっ!!珠莉さん!?」
「珠莉?今の僕は珠莉じゃなくてサイエンティストだよ。」
そうだった、仕事中は違う名前なんだった…!
「空飛んでいけばマジックモーンド出てくるから、安心してね。」
そのまま私たちはマジックモーンドへ。
「でさ〜…わっ!おかえりなのだー!」
私は下ろされ、目の前のベンチにチルルちゃんとあずさちゃんと、初仕事前に寝ていた女の子がいた。
「笑夢さん…初仕事…お疲れ様です……」
「おはよぉ〜珠莉さんと…笑夢さん?だよね〜おつかれさまぁ〜」
その3人はクッキーを食べているのかな、美味しそう。
「あ、ちなみに〜私の名前、榎本 紅葉。魔法使いやってまーす、よろしくお願いします〜あ、回収機ですよね〜」
紅葉ちゃんはほうきを出し、「かいしゅーき〜」と言うと、回収機が出てきた。
「すごいね、紅葉ちゃん。ほんとの魔法使えるんだ…!」
「うん、魔法使いだからね〜」
紅葉ちゃんは自慢げにほうきを抱く。
「ボク、マジックできるよ!!」
チルルちゃんの手から私のポケットにあったペンダントが出てきた。
「チルル、嫉妬?」
珠莉さんが少し笑いながらチルルちゃんを煽る
「じゅりあん!これは嫉妬じゃないなのだ〜!!」
チルルちゃんは珠莉を軽く叩く。
「あ…チルルちゃん…ペンダント、回収機に……」
あずさちゃんは小さな声で言い、チルルちゃんの裾を引っ張る。
「もう夜だ。今日は疲れただろう?家でゆっくり休んで、また明日ここに来てくれ。」
珠莉さんがこちらを向き、微笑んだ。
「今日はありがとう、笑夢。」
「こちらこそありがとうございます。また明日…」
「あと、タメ口でOKだからね、コンパクトのカラフルなボタン押して目瞑れば帰れるから。じゃあまた。」
私はコンパクトのカラフルなボタンを押し、目を瞑る。
目を開けると、風呂場に戻っていた。
つづく







