「ママ、お腹空いた~」
可愛い可愛い我が息子。
「ごめんなさいね。一緒におやつを食べましょう。ママの手作りクッキーよ。とっても美味しんだから」
「ありがとう、ママ」
「マリエ、君も仕事が大変なんだから、子育てはある程度、家政婦に任せてもいいんじゃないか? 僕は君が心配なんだ。頑張り過ぎだよ」
いつだって私を心配してくれる優しい旦那様。
「大丈夫よ、これくらい。お菓子作りは大好きですもの」
仕事ができる旦那様と可愛い息子に囲まれて、私は幸せだ。
藤間フーズの業績も、彼が社長に就任してから、かなり伸びている。
経営手腕のある彼とお見合いして、お父様もすごく喜んでくれてるし、私も藤間フーズの役員として会社を守りたいと奮闘している。
最初は戸惑いもあったけど、今は……本当にとても幸せ。
嘘じゃない。
あの時、慶都さんが私にサヨナラを言わせてくれたから、私は結婚に踏み切れた。
『マリエは必ず幸せになれる』
そう言ってくれたおかげ、だから感謝してるの。
でもね、あの時私は「彼はあなたよりもずっと素敵な人」って言ったけど……
本当は……
慶都さんより素敵な人なんて、この世にいない。
今は、会社のために頑張って仕事をして、藤間フーズをいつか食品業界のトップにしたいと思ってる。
将来、自信を持って息子に社長を譲れるような会社に。
大切な家族と一緒に、大切な会社を絶対に守り抜いてみせる。
「クッキー美味しい。ママお菓子作り上手だね」
「嬉しいわ。また作ってあげるから」
「僕も1口」
「あ~パパも食べちゃった」
「大丈夫よ、まだまだあるからね。パパにもわけてあげましょう」
「は~い」
「美味しいよ。マリエは良いママだな。いつもありがとう」
「僕もママ大好き~」
「パパもママが大好きだ」
こんなに幸せなんだから……
慶都さんのことは、もう、ちゃんと忘れられる。
見ててよ、慶都さん。
私は、もっともっと幸せになるんですから。
あなたが私をフッたことを……後悔するくらいにね。