「好きな人ってさ、もしかしてだけど…」
キュッと、強く目を瞑る。
「イブ………?イブラヒム…?」
『はへ?』
予想の斜め上の質問に、思わず情けない声が出てしまった。
いやいや、ヒムはないでしょ、ヒムは。
全力で首を横に振り、『違うよ!断じて違う!』と言ったら、大きなため息をつく雲雀。
「良かったあ………。イブって言ったら瑠花のこと嫌いになっちゃうとこだった」
『え、え!?な、なんで!?!?』
「はははっ、嘘だよ。応援する。でも良かった。違うんだね。」
良かったって、何?
なんで安心するの?
疑問に思っていたら、彼の手が私の手を握った。
「上手く歩けないでしょ?手貸してあげるから、家まで送るよ。」
『え゛!?!?そ、そんな、申し訳ないよ…!』
握られる手が、また強く握られる。
大丈夫かな、私手汗かいてない?
手を握られている恥ずかしさより、自分が今汗をかいていないかという心配が勝った。
「遠慮しなくていいよ。家教えてくれればおんぶしてもいいよっ!」
なんだこの犬みたいな人は。
見えないしっぽがぶんぶん揺れているように見える。
彼の純情な心に呆れて、『いいよ』と、言ってしまう。「しょうがないなー」と言いながら私の手を握ったまま部屋を出ていく彼。
可愛らしくて、いじらしい。好き。
「イブにバレないように静かに行こうね」
『あ、う、うん…』
声を潜める雲雀。可愛い。好き。
ゆっくり玄関のドアを開けて外を出る。
長いこと彼の家にいたからなのか、太陽の光が眩しい。
「ペースこれぐらいでいい?速くない?」
『うん、丁度いいよ。ありがとう…』
優しすぎるよ、渡会くん。
『渡会くん…』
「ひ、ば、り!!!」
『あっ…雲雀、』
「なあに?」
『その…手繋ぐの、恥ずかしいから…』
「………」
一瞬固まってから、悪魔のような笑みを浮かべた彼。
嫌な予感がする。
「じゃあ、抱っこかおんぶ、どっちがいーい?手繋ぐの嫌だったらそっちになるけど。」
『あ……いや……その………やっぱり、このままで………』
「ふふ、おっけー♪」
怖いこの人。圧がやばい。
どちらにせよ密着するじゃん。なんでそんなに私をドキドキさせるの?
もっと好きになっちゃうよ。
結局、ずっと手を繋いだまま家まで送ってもらってしまった。
『あの…家まで送ってくれてありがとう。』
「うん、いいよ」
『あの、雲雀…』
「んー?」
『………そろそろ、手、離してもいい…?』
家に着いても手を繋いだままの彼。
私の家の周り、同じ学校の人が多いから見られたら一環の終わり。だって、イケメン四天王って言われてる彼と手繋いで家の前にいるって…完全に、その、かっぷる…じゃん!
「えー、…分かったよ。」
な、なに、その、「えー」は!?
どういう意味?私の事好きなの?
期待させないでよ!!!
「じゃ、また明日!体調崩さずにね〜!」
『あ、うん…!また、あした』
お互い手を振る。私が手を振って雲雀は満足したのか、背中を向けて帰っていった。
彼の背中が見えなくなるまで、私は彼の背中を見続けた。
あっという間だったな。
「…で、家まで送ってもらったと。」
「はい。」
朝登校中。
昨日起こったことを全て湊に伝えたら、目が飛び出そうな勢いで私を見てきた。ちょっと面白かった。
「はあ、でも良かったよ。瑠花がひばの部屋にいるってイブから連絡来てさ〜。襲われたんかと思っちゃって歯医者で大声あげちゃった。」
『なにしてんの…。…え?』
「ん?」
湊も、ヒムと仲いいの?
ど、どういうこと?ヒムって、高校一緒じゃないよね?
△△高校行ったって、ヒムがいってたのに。
「あー、イブのこと?」
『う、うん。なんで知ってるの?』
イブって呼んでるし、仲良いのかな。
「イブはね〜、俺た「俺たちと一緒の軽音部なんだよ」…っておいロレ!!今俺喋ってたのに!」
「しーらない。…ね、君かわいいね。前ひばとふわっち連れて逃げた子でしょ。」
ローレン・イロアス…!!!
出たな、イケメン四天王…
「きゃー!!!ローレン様ー!!」
「はいはーい♪ロレ様だよーん」
『ちょ、湊…い、いこ、』
「あ、行かせないよ?」
そう言って、イロアスは私の腕を強く掴んだ。
『いっ、いたっ』
「ちょ、ロレ…なんでそんなキレてんのよ」
「俺さあ…こういう女子嫌いなんだよね。欲張ろうとする女子。」
『は…?な、なんのことですかっ…』
イロアスは私の腕を掴んだまま、早歩きで学校に向かう。
「はっ!?ちょっ、ちょっとロレ!?!?」
「ごめんねふわっち、ちょっとこいつ借りてくわー」
『やっやめてくださ』
「黙れ。」
『っ…!!!』
威圧的かつ、恐怖を乗せた声。
私は彼に逆らうことが出来なかった。
そのまま空き教室に連れていかれ、乱暴に床に投げつけられる。
教室の鍵を閉めたイロアスは、そのまま床に寝そべる私のほうに歩み寄った。
『なにっ、するんですっふあ!』
喋っている最中に急に両頬を片手で掴まれる。
「お前…俺らに漬け込んで何がしたいの?」
『はひ?』
頭がすっからかんになる。
急に何を言い出すんだこの人は。
「俺さあ…周りの女子みたいにキャーキャー言うだけの女子は全然好きなんだけど、お前みたいな近付いて仲良くなって物にする、みたいな女大っ嫌いなんだよね。」
『な、なにをいっへるんへすか…!?』
「ひゃはっ、何を言ってるんですか…って、お前の方だろ。」
この人、何か勘違いしてるよね?
漬け込んでるとか、…さっぱり何を言ってるのか分からない。
『イロアスさっ、、あのっ、、はなしをっ、』
「話ィ?俺もちゃんと聞こうとは思ってるよ」
「でも、どうみても漬け込んでるようにしか見えないからさ、余裕ないんだよね。」
頬を掴む力を強くする彼。
怒ってるのが、すごく伝わる。
あぁ、これは、抵抗したらダメだ。
抵抗せずに、ゆっくり、言わないと。
『ローレンさん。』
「!!!」
優しく、彼の頬を握る手を解く。そのままイロアスの両頬を両手で包み込んだ。
そして、イロアスの耳元に口を持っていき、
「っおい、なにすっ」
『湊は‼️昔から大親友で‼️‼️‼️雲雀は‼️中学からの初恋の人で‼️‼️‼️ヒムは‼️いじめられていた私を友達って言ってくれた大親友で‼️』
『みんなのこと大事に思ってて‼️‼️‼️決して‼️漬け込んではいませんし‼️そういう貴方がいっちばん嫌いですしヤバいやつだと思います‼️‼️』
「〜〜〜〜〜!耳、いってぇ〜…!!!!!」
こいつに強い力で腕や頬を掴まれ乱暴に床に投げつけられた仕返しに、耳元で大声で私の気持ちを叫んでやった。
するとイロアスは耳を抑えながら床に転がる。
ざまあみろ。
「っ俺、別に嫌いって言ってねえしヤバいやつとも言ってねえよ…!!いって〜〜……!!!」
『あれ、そうでしたっけ。』
すると、ガラッとドアの開く音がした。
音がした方向に目をやると、雲雀と湊が共に教室に入ってきて、状況を把握してないふたりはイロアスの状態を見て駆け込んでくる。
「なんで鍵しまってんの…って、ロレ!!?!?」
「ロレさああああああん!?!」
2人が駆け寄ってきたから、イロアスはゆっくりと体を起こして私を見た。
やばい、殺られる。
「…」
『あ…えっと…』
すると、イロアスは私に思いっきり抱きついてきた。
「ちょっとー!!!漬け込んでないなら早く言ってよ!俺、勘違いしちゃった♪なーんだ。普通の友達なのね!俺、ローレン・イロアス♪仲良くしよ?瑠花ちゃん♡」
『はい????』
さっき床にぶつかった衝撃で脳しんとうがおきて記憶喪失になったか???
こんな、こんな人って変わる???
コメント
1件
あああああー神ーーーーー