テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
2件
景乃ぉ...
その日、景乃(けいの)は、夫、進次郎(しんじろう)と共に都会を歩いて仕事へ行こうとしていた。進次郎の事務所の一角に、景乃は小さめのミニ菓子店、『キジ猫屋』をやっている。いつもは通らない道だが、景乃はみごもっており、出産前の体のために歩こうと思ったのだ。途中、二匹の痩せた猫を見た。二匹ともそっくりな大人の猫だ。手前の猫は白黒で、イエローアイのハチワレだ。手前にいた猫が、餌をねだるようによってきたが、奥側の白黒で長毛のハチワレイエローアイ猫は警戒心が高いのか、こちらを睨んでいた。どうやら親子のようだった。「都会にも野良猫っているんだね」「そうだな」ただ、景乃は出産を控えてるし、家に保護猫、保護犬がいるので家に迎え入れることはできませんでした。
通り過ぎた後も景乃の心に引っかかっていた。そして双子の娘の出産で、一年過ぎてまた行った。
猫はきちんといた。だが、子の方は、ぐったりとしており、親が必死に毛繕いをしていた。
二匹の猫はもともと、3匹いたそうだ。母、娘、息子で暮らしていたがある日、フッと息子が消え、しばらく母と娘で暮らしていたそうだ。だが、さらに過去を遡ると、3匹は一人暮らしのお年寄りの家で約7年飼われていた。時折散歩にも連れ出したため、近所の人は3匹をよくよく知っていた。そして、飼い主が亡くなると親族たちはまるで厄介者のように、汚い汚物を捨てるように追い払った。3匹にご飯を与える人は何人もいた。だが、母猫、ウィッキーは、追い出されるや触ろうとすると、シャー!っと毛を逆立て、威嚇する猫になってしまった。子供と自分を守るので精一杯だったこともあるだろうが、飼い主が突然消え、知らない人にずかずか家に入りこまれ、追い出されれば誰だって人間不信になるだろう。そしてしばらくたち、息子、ウィスキーも消え、娘と二人きりになった。
どうしても助けたい。景乃夫妻はそう思ってある動物保護団体の預かりボランティアベテランの、犬町春奈(いぬまちはるな)と知り合った。春奈は気前の良く、明るく優しく、そして辛抱強い20歳になったばかりの若い女性だ。
ウィッキーたちのことを相談すると、「それは大変!今すぐ行きましょう!」と捕獲器とクレート、湯たんぽとフードと水を持って白い車に乗って、ウィッキーたちのもとへ急ぎました。娘の様態は良くなったようだった。そしてまず、春奈が、そっとフードを一口分入れた容器を近くに2つ置いた。娘の方は数秒たってすぐに食いついた。だが、母猫はすぐには食いつかなかった。じっとこちらを睨んでいる。まるで、娘を守るように。春奈は、「一旦、離れましょう」と言って近くに身を隠した。景乃夫妻も同じようにした。すると、きょろりと周りを見回すと、近づいて、食べ始めた。そして一口分無くなると身を引いた。
すると、ササッと春奈は出てきた。そして2つの捕獲器をさり気なく少し離れたところへ置いた。そして二匹の前に一口分のご飯を一つずつ置いた後、それぞれの捕獲器へ、フードの粒をまるで導くように置き、捕獲器の中にたくさん入ったフードと水の器を置きました。そして三人は先程隠れたところへまた身を隠した。
娘はすぐさま捕獲器へ入ろうとした。けれども賢く警戒心の強いウィッキーが止めた。娘はしぶしぶ諦めたがお腹が空いて、しかも目の前も栄養たっぷり、量もたっぷり、とてもおいしい、そして新鮮なごちそう、新鮮、きれい、量もたっぷり、そしておいしい水が置いてあるのだ。とても耐えられない。娘はバッと入った。すると、扉が、バタンとしまった。娘はびっくりして振り返り、ニャー!っと泣き始めた。ほら言ったのに。もう。というような顔をしながら、母のウィッキーが周りをうろうろしはじめた。それからしばらくたっても母は入らなかった。すると、「奥の手を使いましょう」と春奈が隠れ場所から出て奥の手とやらを使った。するとウィッキーも捕獲器へ入った。
「もう大丈夫だよ。いじめられる心配もないし、寒さで震えることも、暑さでバテることもないよ。病気も予防できるし、毎日新鮮なご飯と水が食べられるよ。おやつももらえるよ。毛玉で痛い思いをすることだってないんだよ」
景乃はずっとささやき続けた。