コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
深夜の風呂場。
昼の喧騒は消え去り、換気扇の音と水の音だけが静かに響く。
やけに緊張感が漂っていた。
ふたりは向かい合って、見つめ合う。
重たい口を開いたのはシャークんだった。
「…本当にやるの?」
少し躊躇っているような、緊張しているような。
そんな表情と声色だった。
「もちろん。…怖い?」
きんときの手には使い慣れたカッター。
カチカチと刃を出す音が恐怖を際立たせる。
それと共に、好奇心が溢れる。
きんときの目はあまり笑っていないが、奥深くには愛情が篭っている。
気がする。
「…やるなら、やっていいよ」
シャークんは覚悟を決めた。
きんときの狂った愛も受け止める。
腕をきんときの方に向け、気まずそうに目を逸らす。
少しだけ、腕は震えていた。
恐怖からではない。これから起きる事への興味、そして愛から。
「大丈夫だよ、俺の目見てて。」
シャークんの腕をしっかりと掴んだきんとき。
目を合わせる。
「……っ…」
そしてカッターの刃を優しく、でも俊敏に滑らせる。
シャークんは鋭い痛みに顔を歪める。
傷口が開き、白いものが見える。
それが一瞬にして赤く染る。
湿った肌からじわじわと血が溢れる。
ドクドクと傷口が脈打つのが分かる。
「…きれいだね。」
きんときはその血と、高揚しているシャークんの顔に興奮する。
あまりにニヤけるものだから、顔を手で隠す。
「…ほんとお前変態だよな」
血を流しながらも、ニヤけるきんときを見て少し口角が上がってしまう。
自分の腕が、愛する人に傷付けられ、血が流れている。
その事実すらに薄ら興奮を覚える。
…
「…ほら、水赤くなってきたよ」
きんときの声にドキッとする。
シャークんの流れる血が、ぽたりと垂れていき湯船が赤く染る。
落ちて滲むその瞬間が、とても美しく見えた。
「シャークんの血に浸かれるの、嬉しい」
「…本当に俺のこと好きだな」
風呂場は血腥くなる。
そして、透明だった水は、段々と赤に染まっていった。
ふたりの頬も、赤く染る。