TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

雫 -SIZUKU- ~星霜夢幻ーー“Emperor the Requiem”~

一覧ページ

「雫 -SIZUKU- ~星霜夢幻ーー“Emperor the Requiem”~」のメインビジュアル

雫 -SIZUKU- ~星霜夢幻ーー“Emperor the Requiem”~

88 - 第88話 急 それぞれの譲れぬ闘い① 反逆?

♥

7

2025年07月18日

シェアするシェアする
報告する


――エルドアーク宮殿――



※戦略広間 第一会議室



「第三軍団を殲滅した特異点は、俄然このエルドアーク宮殿に向けて進行中です」



ハルは第三軍団のサーモの状況を元に、予測しうる現状を口にした。



この戦略広間内にはルヅキ、ハル、ユーリと三人の直属のみ。



軍団長以下全軍は、江戸へ進行中である。



「江戸は軍団に任せておけば、いずれ落ちるだろう。問題は特異点。間もなく此処へ来るか……。ノクティス様はどうなされている?」



ルヅキにとって問題は、江戸攻略より特異点。そしてこのエルドアーク宮殿が、完全に手薄になってしまった冥王の真意にある。



“一体何を考えているのか?”



勿論その真意は、直属にさえ分からない。



「ノクティス様は、相変わらず王の間で伏せておられます。特異点が此処に来るのを、ずっと待っているかの様に……」



「そうか……」



ルヅキとハルは複雑であった。



これ即ち直属の役目とは特異点を倒す事では無く、特異点を冥王の下へ案内する事にも等しいからだ。



「ボクは納得出来ないよ!」



複雑な心境の広間内に、ユーリの荒ぶる声が響いた。



「特異点が狂座入りする訳無いじゃん! 仮に仲間になったとしても、仲良くなんて絶対出来っこ無いよ……」



「ユーリ……」



それはルヅキとて同じ心境だった。



“冥王の意思は絶対”



それは決して覆してはならない絶対不変の真理とはいえ、相容れぬものがある事もまた確か。



真理と私事。その二つにルヅキの心は揺れ動いていた。



「でも特異点なんかに構うより、先にやる事あるじゃん! アザミを生き返らせる方が先なのにっ!」



ユーリはそう声を荒げる。



冥王は死者を甦らせる力を持つ事は、狂座の者なら誰もが周知の事実。第一、第二軍団長の両名はその典型だろう。



“何故それをしないのか?”



「忘れたのですか?」



そんなユーリの疑問に答える様に、腕組したままのハルが口を開く。



「我々狂座はノクティス様の力により、悠久の刻を生きる権利を与えられています。その対価として死した時、それは即ち肉体の死では無く魂の死。それが悠久に生きる我等の業である刻の盟約……」



「あっ……」



ハルの言葉に、ユーリは思い出したかの様に口を紡ぐ。



狂座に属する者は不老の存在であり、己が最も強い時期のまま、悠久の刻を生き続けている。



その為、進化する事はあっても、退化する事は有り得ない。



だが不老であっても、不死では無い。



肉体損傷等で普通に死を迎える。それは常人、いや生物と変わる事は無い摂理。



“死は新たな再生”



“魂は不滅の存在”



だが悠久の刻を生きる対価により、狂座にとっての“死”とは、本当の意味での“無”である事。



誰もが不老を望み、その願いが叶う狂座に歓喜する者は多い。



だが、この本当の意味を理解している者は少ない。



「その通りだ。我々は、あの御方に従う他は無い」



ルヅキがそう何処か、遠くを見ているかの様に。



「分かってる……でもっ!」



ユーリの次の声を遮るかの様に、ルヅキがユーリの頭にそっと手を添える。



愛しむかの様な瞳で見詰めて、それはまるでーー



“その気持ちだけでも嬉しい”ーーと。



言葉は無くとも、心意気は確かに伝わっているかの様に、ユーリもそれ以上の言葉は出さず、その包まれる掌になすがまま。



「…………」



ハルも口を挟む事は無い。



“この想いは永久(とわ)に変わる事は無い”



「それに……」



ルヅキが沈黙した広間内の刻を動かす。



これまでの言動から冥王は特異点、ユキを狂座に引き込むつもりなのは間違い無い。



「奴が……特異点が狂座に入る事は、決して有り得ない」



“――何故なら……”



「ルヅキ?」



断言とも取れるルヅキの一言に、ユーリは首を傾げる。



勿論直属以下、軍団員の誰もが特異点の狂座入りを望まぬだろう。



それでもそれが冥王の望みであれば、何があっても従う他に選択の余地は無い。



「う……うん」



ルヅキの紅い瞳に宿る、確かな決意に近いもの。それは筆頭としての意地なのか。



それともーー



「ボクも……そう思うよ」



その瞳に当てられたかの様に、ユーリはその真意の追及の言葉を出す事は出来なかった。

雫 -SIZUKU- ~星霜夢幻ーー“Emperor the Requiem”~

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

7

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚