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大造じいさんとガン
著:椋鳩十
一
今年も、ガンの季節がやってまいりました。
栗の木が、すっかり葉を落として、夕日の中にその黒い枝を、あみ目のように広げているころになると、北の国から、ガンの群れが、渡ってくるのであります。
じいさんは、いつものように、狩猟のしたくをして、沼地へ出かけていきました。
この沼地は、毎年、たくさんのガンが、おりる場所であります。
じいさんは、ここで、もう五十年の間、猟をしてくらしてきたので、ガンの性質を、手にとるように、よく知っていました。
ところが、二、三年まえから、この沼地へやってくるガンの群れの中に、たいそう、知恵の進んだ、かしこい頭領が、まじるようになりました。
そのガンを、猟師たちは、「残雪」と呼んでいました。
というのは、そのガンの、両方のつばさに、白いまじり毛があって、それが、飛び立つときに、まるで、雪が、一ひら、残っているように、白く光るからでした。
残雪が、ガンの群れの頭領になってからは、猟師たちは、一羽のガンも、しとめることができなくなりました。
なぜなら、残雪は、いつも、みんなが、安心してえさを食べているときにも、一番高い所に立って、四方に目を配っているのであります。そして、少しでも、怪しい影が見えたり、物音が聞こえたりすると、すぐに、
「クワッ、クワッ。」
と、鋭い声をあげて、みんなに危険を知らせるからでした。
大造じいさんは、長年、鳥を相手に戦ってきた、誇り高い猟師でしたから、このように、一羽のガンに、まんまと、裏をかかれていることが、しゃくにさわって、たまりませんでした。
「今年こそは、きっと、あいつを、ひっ捕らえてやるぞ。」
じいさんは、こう心に誓って、いつものように、じっと、チャンスをねらっていました。
一段落 終わり
コメント
1件
すご てかなつかしい! クラスの男子が本の紹介文に「大造じいさんが飛び立った」って間違えて書いてて笑ったなー
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