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忘れもしない、4月5日の20時頃だった。
『〇〇です。今家出して他県向かってるからよろしく!』
そんな一言だけが、スマホに届いた。
一瞬、意味が分からなかった。
『は?どこ行ってるの』
『どうやって向かってるの?』
まるでお母さんみたいに、
君のことを心配する言葉ばかり並べていた。
誰といるのか、
どうやって行くのか、
どこにいるのか。
一つずつ聞いていくたびに、
少しずつ安心していく僕がいた。
本当は分かっていた。
安心していい状況じゃないことも、
止めなきゃいけないことも。
でも、画面越しに君と繋がっているだけで、
どうしても離れられなかった。
「一人で行ってるの?」
そう聞くと、少し間があってから、
『うん』
とだけ返ってきた。
その一言が、やけに重かった。
同時に、どうしようもなく守りたくなった。
『ちゃんと気をつけて』
結局、僕が送ったのは止める言葉じゃなくて、
見送る言葉だった。
あの時、僕はもう知っていた。
これより前から、もう分かっていた。
君のことを好きだと。
というより、すでに虜にされていたことを。
それなのに、その瞬間の僕は、
その気持ちに気づかないふりをした