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「ありがとうございましたー」
満面の笑顔で犬を抱えた女の子と、その家族を見送り、私は微笑む。
「いいなあ、私も子供の頃飼いたかったな」
ボソッと独り言を呟いて、伸びをする。
私がこの『スカラ・ペットショップ』で働き始めて3年が経った。
今ではすっかり仕事にも慣れてきた。
私は学生時代、両親がアレルギー持ちだったため、大好きな犬が飼えなかった。
だから、大好きな犬と触れ合えるペットショップを就職先に決めたのだ。
「ももせんぱーい!」
3年前は新人だった私も、今では可愛い後輩が出来た。
つばさ君という、明るい茶髪が特徴的なとてもいい子だ。
「どうしたの、つばさ君?」
「キャットフードってどこにありましたっけ?」
「あー、キャットフードはね…」
つばさ君はアルバイトとして、約2週間前に配属された。
私が場所を教えてあげると、つばさ君は首の後ろに手を回して掻いた。
「すみません、オレ全然場所覚えられなくて…」
「しょうがないよ。まだ2週間だもん」
全然大丈夫だから、と私が言うと、つばさ君はぺこりと頭を下げた。
ポメラニアンの毛を整えていると、つばさ君が私の肩を叩いた。
「もも先輩、もう休憩の時間っすよ」
つばさ君に言われて壁時計を見る。
「…あ、本当だ。夢中になって気づかなかった」
私とつばさ君はスタッフルームに入り、昼食の準備をした。
私はカバンから木製の弁当箱を取り出す。
弁当箱の蓋を開けると、つばさ君が中身を覗き込んできた。
「もも先輩って、毎日手作り弁当っすよね。もしかして…彼氏さんとかですか?」
つばさ君が冗談めかして言う。
「彼氏なんていないよ。全部私が自分で作ってるの」
つばさ君は目を見開いた。
「……えっ、自分でこんな美味しそうな弁当作れるんですか!?えー、凄すぎ…」
褒められて照れくさくなり、つばさ君の昼食を見る。
また今日も高級なお店の弁当だ。
「つばさ君もすごいね。毎日高い弁当じゃん。お金大丈夫なの?」
私が心から思っていたことをつい言うと、つばさ君は苦笑いをした。
「あー、オレのお金じゃないんで」
「じゃあ、親御さんとか?」
「まぁ、はい」
実家がお金持ちなのは本当に羨ましい。でもそんなつばさ君が、どうしてペットショップをアルバイトとして選んだんだろう。
「つばさ君、どうしてペットショップでアルバイトをしようと思ったの?」