王宮へ続く道には数多くの馬車が停まっていた。
なぜなら、今日は王太子の成人パーティがあるからだ。
若い令嬢はここぞとばかりに着飾り、令息たちは王太子との人脈作りに精を出していた。
そして私はというと…それをつまみにジュースを飲んでいた。
「あーおいしい、このジュース取り寄せられないかな」
まるで王太子を祝いに来た態度とは思えないが、そこは出席しただけ偉いと言ってほしい。
ただ、私もどうせ来るならお気に入りの服を着たかったんだけどさぁ…。
ちなみに今日は薄緑色のAラインドレスを着た。金色の刺繍がポツポツと施されているのが大人っぽく見えるらしい。
いや知らんけど。
オフショルダーだから首元が寒い…なのにメイドにはこれ以外却下された。
「メイドよ…私は着飾る必要ないんだって…」
ほら、王太子の目を喜ばせる役はもういっぱいいるじゃん。
「は…くしゅん!あ〜っ寒い!」
私と同じく寒々しい格好のはずの令嬢達は、何であんなに元気なの?
王太子の嫁なんて面倒臭いに決まってるのに、よくやるよ…。
すると、
「あ、あの…アントネラ嬢、もし良かったら私と一緒に踊っていただけませんか?」
知らない若い男に話しかけられた。
ん?あれ、この人誰だっけ…?
ダンスね、うんうん。
めんどくさ。
「…ふふ、嬉しいですわ。ですがあいにく、今日は足を痛めていて…ごめんなさいね」
「そ、そうだったのですね!とんでもありませんっ、お大事になさってください」
私が微笑むと、男は顔を赤くして、ピュ〜ッとその場から逃げる様に去っていった。
「何あれ、かわい〜」
その間、男はすれ違う人にぶつかっては頭を下げていた。
「それにしても…」
王太子が人気すぎて集団が出来てる(笑)
「埋もれてるなぁ」
大変そ〜。
私は混ざらなくても良いよね。
だってあんなに人いるもん。
「あ、すみません〜、それください」
「かしこまりました」
「ありがとう」
ボーイからジュースをもらい、料理を頬張る。
あ〜、最高。
将来は食っちゃ寝出来たら良いのに…。
王太子の嫁……いやいや!
やば、つい揺らいじゃったよ。
あれ、というか揺らいでない?
何か…視界が…。
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