翌日。
「え、飯? …もちさんが?」
早速剣持がご飯に誘ってきて驚く不破。
誘おうとしてたのを知っていたのは知られないように。
「はい、行きましょう」
「気分転換ですよ、気分転換」
加賀美と囲んできてて、逃げ場なんてものは最初からない。
「え、でも今日は…」
「はい、甲斐田くんのお見舞い行きますよ。その帰りに行きましょう」
そう、今朝長尾に
《お見舞い来ませんか?》
と聞かれ、今3人集合したところだった。
「わ、かりました…」
せっかくもちさんが誘ってくれたのを断る訳にはいかないと、不破は誘いに乗る。
「────て言うと不破くん」
「はい?」
「なんか、落ち着いたね?」
「確かに…昨日の暗さはどこへやら」
(やべっ)
「あぁ〜…昨日帰ったあと、ちょっと良いことがあったので…」
「…そう、良かったね」
「…もう普段通りって感じですね((ボソッ…」
「ちょっとどころじゃないですね((ボソッ…」
「? おふたりさん?」
「あ、なんでもない。大丈夫」
「?」
不破の頭上に?が浮いていると、
「あ、御三方、おはようございます」
「おはよう、長尾くん」
長尾がやって来た。
「遅くなってすいません」
「いや、全然大丈夫よ」
不破がニコッと笑って返すと、長尾は目を見開いた。
「ん? 長尾?」
「…いや、なんでもないです」
(戻ったんだな)
「おや、弦月さんは?」
加賀美が見渡して言う。
「確かに…てっきり一緒に来てるかと」
剣持が続く。
「あぁ、弦月は先に甲斐田のところにいます」
「なるほど」
「んじゃ、行きますか。着いてきてくださーい」
桜魔皇国・某病院廊下。
「え、魘されてた?」
長尾は、3人に昨日あったことを伝えた。
「はい、めっちゃ顔色悪かったし…って」
長尾が前を見て足を止めた。
「どうしたんですか?…え、人だかり?」
加賀美が長尾の後ろから覗き何かを確かめる。
「何かあったんですかね?」
と剣持。
病院で人だかりだなんて、よっぽどのこと…
「長尾? どうしたん?」
不破は、驚いたままの長尾に気づき声をかける。
「…アソコ────甲斐田の病室…」
「「「え?」」」
3人再び顔を前に向けた。
「ってことは…」
剣持が言い切る前に、長尾が動いた。
「すんません、通して下さい!」
少し遅れ、不破等も後に続く。
「おい藤士郎! いるか!?」
「い、いるよ、景くん…」
「何があっ────」
長尾が固まった。
「長尾っ、先行くなって────え?」
後から入ってきた3人も固まった。
「────あれ、皆さん…………」
「…は、る…?」
目に飛び込んできたのは、ベッドの背もたれが上がった状態になって、そこに佇む…
目覚めた甲斐田晴だった。
「…嘘だろ!?」
最初に口を開いき静寂を破ったのは剣持だった。
「いつ起きたんだよお前!!」
長尾が怒鳴るように聞いた。
弦月が、「景くん落ち着いて」と宥める。
「落ち着いてられるか!?」
「いやそうだけど!」
弦月も落ち着いてなかった。
「いや、何時って言われると…ついさっき? 10分くらい前?」
「え、さっきすぎる…」
甲斐田の返答に加賀美が驚く。
「おい晴」
「何?」
甲斐田は長尾の方を向いた。
「お前、眠ってる時何があったよ」
「…」
「あんなに魘されてて、何も無かったはねぇぞ」
「そうだよ」
長尾と弦月が問い詰める中、不破達は、黙ってそれを聞いてることにした。
魘されてたのは気になっているし。
「…分かった…」
真剣な顔になった甲斐田が言う。
「別に誰にも話せないわけじゃない。最初から話すから長いよ」
「それは問題ない」
長尾の返答を聞き、一瞬安心したように笑うが、またすぐ真顔に戻る。
「けど…」
「けど?」
弦月の聞き返しに、甲斐田は5人全員を向く。
いつの間にか、あれだけいた野次馬はみんな何処かに行った。
先程までいた医師も、甲斐田の良好状態が確認できたからか1度去った。
いつの間にか扉は閉まっていた。
野次馬が閉めたのであろう。
「ちょっと辛いから…詰まったらごめん」
「ッ…」
5人が息を飲んだ。
一体何を見たのだろう。
「…気がついたら、何も無いまっさらなところにいたんだ」
甲斐田晴は話し始めた。
どうしようもできなかった、悪夢の話を。
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