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女装したオジサマがはびこる大阪のハッテン場にVtuberが一人で行ってみた

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女装したオジサマがはびこる大阪のハッテン場にVtuberが一人で行ってみた

1 - 女装したオッサンがはびこる大阪のハッテン場にVtuberが一人で行ってみた

2023年08月07日

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こんれどー(天下無双)


カッコイイ死神界隈で有名なVtuberの紅羊レドだ!!!


さて、唐突で申し訳ないんだけどこの文章を見ているそこの人間は7月をどう過ごしてた?

私はというと原因不明の眩暈と吐き気でで職を離れ、実家に帰ってからは毎日毎日ゴロゴロデスワをしながら怠惰な日々をすごしていた。


そんなリアルエンドレス8みたいなことをしていると、死神も人間もやはり刺激がほしくなるものだ。

かといって心待ちにしているアーマードコア6まであと1か月以上ある!!

ただでさえ電気屋さんとかで試乗できるイベントが開催されていたにも関わらず、私情があって参加出来なかったのにこのままだと精神状態が持たないぞ!!


そんな中、私が心の中で掲げたスローガン的なものこそが「そうだ、ポルノ映画館に行こう」というものだった。


ところで視聴者たちはポルノ映画館を知っているだろうか?

まあ名前を聞けば想像できるだろうけど、その名の通り「エッチな映像を流している映画館」のことだ。

ちなみにポルノ映画館の全盛期は1980年代とされていて、当時は全国に1000館以上・年間200本も上映されていたそうだけど、視聴者も知っての通り、家でも簡単に見れるビデオ、DVDの発達、1990年代にはインターネットの復旧もあり、今ではHなサイトでHなコンテンツを無料で見れる時代にもなった。

そういった時代の流れもあって、今では全国に36館しかない。

だから必然的に今残っているポルノ映画館は、性の歴史を見届けてきた傍観者でもあるということだ!

自分でいうのも何だけどなんか傍観者ってかっこいいな


……という話を職場の同期に聞いた時、私は是非ポルノ映画に行きたいと思うようになった

いや別に性的なことに興味を持っていたわけではないぞ!!!

ってかそういうの興味ないね!!!

……いやホントダゾ?


でもなんか歴史的な建造物って入ってみたくない?

私けっこう「むかしながら」とか「歴史があるモノ」とかが結構好きで、祖父が使っていたサングラスを私も使うぐらい、なんかそういうモノは大切にしていくべきだしめっちゃ興味あるって思っちゃうんだよね。

それに……ちょっとエッチな映画館見に行くのって……なんか大人の階段を登った気がしない?


あっ……そんなことないか……


まぁともかく!

私は思い立ったら直に行動に移す「行動力の化身」!!!

友人に詳しい場所と住所を教えてもらって、Googleマップでどの電車に乗るかとかバッチリ確認。

怠い身体を起こして下着のままからちゃんとした服に着替えたのちに、僕は新たな世界に希望を抱きながら、ちょっと落ち着きのない手付きで玄関のドアを開けたぁ!!!!


この時の私は知らなかった。

私が行こうとしていたその映画館は60代前後の女装したオジサマが蠢く……ハッテン場だということに……


到着したのは土曜日の夜20時ジャストだった。

私が行った場所は「新世界国際劇場」という映画館だ!

インターネットで調べたらわかると思うけど大阪の通天閣のすぐ東にあって、そこからさらに東に歩いていくと15分後にはあべのハルカスに到着するという、かなりアクセスの良い場所にあった。


外装は暗くてあまり分からなかったけどちょっと西洋っぽい感じで、一面真っ白かな?

ぱっと見て滅茶苦茶汚れているわけではなく、ただちょっと看板がレトロチックだったな。


最初に見て一番驚いたのは、写真に移ってるんだけど放送されている映画の内容が壁に描かれていたことだ!!

どうらや他のサイトとかで調べてみると、店主のこだわりか昔ながらの映画館らしくポスターを使わずに職人が手書きで描いているとのこと。分かる人にはわかると思うけど「はだしのゲン」で映画の看板を手で描くみたいなアレだな。


そしてもう一つ驚いたのが普通の映画もやっているということ。

映画館の張り紙を見ていると、どうやらちょっと前に作られた映画とHな映画をそれぞれ上映しているらしい。

てっきりポルノ映画しか放映してないと思ってたからそこはイメージと違っていた。


さて当初の予定では、私はポルノ映画だけを見てみて帰ろうかと考えていたが、私の心の中でその予定の優先順位がかなり下がっていた。

というのもその時に放映されていたベネシアフレニアという映画のポスターにかなり興味を惹かれてしまったからだ!!

だってペストマスクだぞペストマスク! ビジュアルがかっこよすぎるだろ!! そしてこのビジュアルでサスペンスとか……た、たまんねぇ〜!


ただその時点での時刻が20時に対して、ベネシアフレニアの放映時間は20時40分ぐらい。

残りの時間がどうしても暇だし、夜遅くまで残ることは考えてなかったので、中途半端ではあるがべネシアフレニアが始まるまでの間、ポルノ映画を楽しむことにした。


目的がいつの間にか変わっているがまあいいでしょう!

だってペストマスクだし!


さて出入り口のすぐ隣にある券売機でポルノ映画の券を購入!

ワクワクしながら中に入ってみると、レトロティックな雰囲気に心が踊る!

中は本当に無骨なデザインというかたちの「鉄筋造」で特徴的な装飾は特にない。

壁や天井は真っ白で床がゴムっぽくてちょっと赤色みたいな感じ。

そしてところどころ汚れていて、埃っぽい臭いが漂う空間!

「あぁ、歴史的な映画館だ」って感じがする。

それもそのハズ、真偽はわからないが、インターネットとかで調べてみると昭和25年に創業したらしく、もう70年以上も前から存在する建造物だからだ。

まだ入口だというのにそんな感じだから、シアターに入るのがもっと楽しみになった。


すぐ左手にあったカウンターで券を手渡すと、目の前の地下へと続く階段に進んでくださいと言われた。

どうやら地上が普通の映画、地下はポルノ映画みたいな感じでシアターが分かれているらしい。


かなりドキドキしながら階段を一歩一歩下っていくと、さっきよりも強烈な埃くささとアンモニアの臭いが漂う地下シアターへと足を踏み入れる。

階段から見て左側にすぐトイレがあり、右奥にスクリーンがあって、それに伴い座席が設置されている。


パッとみて気になったのは、シアターに近寄れば近よるほど暗くて客がどこに座ってるとかわからないこと。

私がよく知る映画館なら足元にライトとかあったけどそういうのは全くない。

スクリーンの反対側は3本の柱がスクリーンに対して平行で並んでいて、比較的明るい場所だからなのか、3人ぐらいのオジサマが腕を組んで立っているのが見えた。


僕も暗い中歩くのは誰かに当たりそうでちょっと怖いので、柱の付近で立つかどうか迷ったが、でも折角ポルノ映画館に来たんだ。どうせだったら席に座った方がいいということで歩を進める。


スクリーンの明かりで辛うじて座席は見えるので、適当なところで座ろうとしたが、通路に入った時に、何というかこう足に軽い何かがぶつかった。


慌てて足で確かめてみるとどうやらそれは、重さ的にも形的にも、踏んだ感覚的にも靴ということが分かった。

なんでそんなものが地面に捨てられてるんだよと思うと同時に、その席の列にただならぬ気配を感じたので一つ前の列に移動した。


新幹線とかでよく窓側の端っこの席に移動する私は、今回も同じように列の奥まで歩こうとしたが、また何かが足に当たって歩みを止めた。

でも今回は靴じゃない。

足で動かそうとしてもなんか重いし、形も分厚い板みたいな感じで到底床に落ちてるモノだとは思えなかった。


そんな状況でこれ以上進んでもいいのかが分からないし、かといってまた暗闇の中、何度も何度も列を変えるのは面倒くさい。

幸い通路側から二つ目の席があったので、通路に面してなければいいかと思ってそこに座ろうとしたが、手で探ってみて違和感を感じる。


「あれ? 背もたれはあるけど座る部分がなくね???」


一応通路に面してる座席を触ってみると、映画館らしいあの引っ張ると前に座る所が出てくる折りたたみ椅子だということが分かるが、通路側から二つ目の席には背もたれしかない。

えええどういうことだ!? ここだけ他の椅子と仕組みが違うのか!?

色々考えてはみるが、暗いし始めて来てるし驚きの連続で落ち着きのない私は、これ以上立つのは映画を見ている人の邪魔になるだろうと思い、渋々座ることができる椅子に座った。


映画の内容は途中から見ていたせいで全くストーリーが入ってこない。

ていうかそもそもかなり終盤だったようで行為の最中に「私の復讐はこれからだ!!」みたいな打ち切りエンドみたいな感じで終わってしまった。

唯一覚えているのはヒョロガリで童顔の割に体毛が濃い男優がいたことと、なんか男優の男優が白く光ってとてもシュールだったので笑いそうになったということだけだ。


ポルノ映画のスタッフロールが流れ終わると同時に、シアターがゆっくりと明るくなると色々なものが見えてくる。

シアターの全体的な雰囲気はやはりどこか古臭い。天井は真っ白だけど壁の途中からこげ茶に塗装されていて、床はホコリとかで汚れている灰色の床っていう感じだった。

特に凝った装飾もない。ただの鉄筋コンクリート造

だけどやっぱり私はこういう雰囲気が好きだなぁとか思いながら「そういえばさっき足元に何が当たったんだっけ?」と思って視線を向けてみると、なんということでしょう。


座席の座る部分が取れてる……!?


おいおいおいおい思いっきり座る部分じゃん! しかも僕が座ろうとした座席のヤツじゃん!

こんな状態で放送している映画館は死神生で初めて見た。

興奮しすぎて写真とか撮っちゃったもん。

だけどしばらくして落ち着いてから、それもまぁ仕方ないのだろうと考えた。

ポルノ映画館はさっきも話した通り、徐々にその数を減らしている。理由は利用者が徐々に減っているからだ。そんな現状だからこそ、修理するための資金集めもままならないんだろうな。


なんてことを考えながら、次は最初に席に座ろうとした時に靴らしきものが転がっていた列が気になった。自分のすぐ後ろがそこだったのでチラッと振り返ってみると、確かに地面に転がっているのは靴だった。だが一番目に止まったのはそこではなく座席。Tシャツを着た薄着のオジサマが、横3〜4列を占領した状態で爆睡を決めていた。


こんな喘ぎ声が聞こえてきて、なおかつホコリっぽいとこでよく寝るなぁと眺めていたが、インターネットによるとどうやらポルノ映画館を宿泊施設として利用しているホームレスの方がいるらしい。確かにアンモニアの臭いと喘ぎ声に目を瞑れば、クーラーが効いていてそこそこフカフカのクッションで寝れるのに、1000円以下で利用できる施設ということになる。


まぁ当時の私はそんなこと知らず、もしかしたらポルノ映画の音声でしか寝付けない人なのかもとか想いながら、もっと他に何か面白いものがないかとふと横を向くと、床に落ちている……その……丸まったティッシュと……その付近を動くミニサイズのGが視界に入ってしまった。

いや確かにそういう映画館だけどさ、捨てろよ普通に!!!

なんでそこらへんに45ティッシュが落ちてんだよ!! まだ思春期の中学生の方がゴミ箱にシッカリ捨てる分マシだわ!!

しかもGお前それ食って繁殖したわけじゃないよな!?

ということはオジサマの45ティッシュで繁殖した=実質Gは子供たち……ってこと……!?


いやもう当時の思考を思い出すだけで気持ち悪くなる。

その衝撃的な光景を最近買ったばかりのpixel7で写真に納めるか迷ったけど、色々あって納めるのを辞めた。

理由は二つある。

一つ目は写真に納めたらもう二度とそのスマホに触れなくなりそうだったから。

二つ目は……それもりも……それよりも衝撃的な光景に、私が釘付けになってしまったからだ。


このポルノ映画を上映しているシアターは両端の席が真ん中の席よりもちょっと高い位置にある。

その高い場所で、なおかつ私と同じ列。

そこで60代後半くらいのオジサマが、オジサマのオジサマを加えた状態で頭を上下に揺らしていて、咥えられている60代前半のオジサマはご満悦そうにオジサマの頭を撫でていた!!!


えっ……えぇぇぇぇええ!!!

ええぇっぇぇぇっぇぇえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!!!!!!!


あれってフェラーリ!? あれフェラーリしてるんだよな!?

うわめっちゃ頭揺らしてる!!!!!

おっオジサマ!?!?! オジサマぁぁ!?!?!?

ま、まさかアレか? ポルノ映画を一緒に見てお互いHな気分になったからフェラーリしたくなった的な!?

そんなBL漫画のHの導入的なことある!?!?


なんてことを思った後、私は壊れた椅子も、45ティッシュもすっかり忘れて一刻も早くその場から離れるために席を立った!!!

来た道を戻ろうと後ろへ振り返ると、さっきからずっと柱の付近で立ってる男性3人と一寸のブレもなく目が合ってしまった。

そして同時に気付いてしまう。

あいつらの目……あれは完全に僕を獲物としてスナイプしてるくない?

いやそれは私の気のせいなのか???

さすがに自意識過剰か???

いやでも見てる!! めっちゃ見てるよ!!!

いやあれは自意識過剰じゃなくないか!?!


……って心の中で何度ももう一人の私と会話していたが、結論が出るよりも先に階段を上がって外へ出て行ってしまった。


さて、その後映画館を飛び出した私は何のあてもなく新世界をただただブラついていた。

そして迷っていた。このまま家に帰るべきかどうか!!


いやでもなぁもうベネシアフレニアの映画のチケット買ってるからなぁ!!

あのペストマスク気になるからなぁ!

大画面で見たいしなぁ!!!


なんてことをふらつきながら10分考えていた結果、時刻は既に20時半。

残り10分で始まるということを考えた時、もうこれ以上悩んでいたら席を取られるかもしれない。

それにあの瞼を閉じれば鮮明に思い出す、オジサマカップルのフェラーリの光景は、きっとお互いに同意があったから起こったことだ。

幸い私は同性愛に対して「自分の好きな人なら男だろうと女だろうと別によくね?」のスタンスだから抵抗はないし、もしも再度フェラーリをオジサマがしていたとしても映画を見ておけば自然と気にならないだろう。


もっと言えば次に見るのはヴェネツィアを舞台としたサスペンス映画。濡れ場もなければ同性愛的な要素はほぼ皆無だと思うので、興奮して誘われる心配もない。

それにそもそもの話、第一に私は異性から見ても、同性から見ても恋愛対象としての魅力がないことを今までの死神生で分からされている。

分からされている!!!

大切なことだから2回言った!!!


確かに今まで電車の中で痴漢に会ったり、パチンコ店で椅子に座ってる時に酔ったオジサマに抱き着かれて愛を囁かれたことはある。しかし、前者は髪の長い時に後ろ姿で勘違いされたんだろうし、後者は酔っていて冷静な判断ができなかったのだろう。

仮に自分がそういうことに誘われてもシッカリと否定すれば大丈夫だと思った。


思ってたんですけどねぇ……


1階の映画館の中に扉を開けてはいると、既に映画が終わっているのか明るくなっていた。

扉から見て奥にはスクリーンがあって、その両脇にはそれぞれ右が男子トイレ、左にはなんと客席のすぐ横に女子トイレがあった。

いやどう考えてもその位置に女子トイレはおかしいだろって想いながら、今度はどんな構造になっているんだろうと周囲を見渡した。

天井や壁は基本的に真っ白で、特に目立った装飾はない。良くも悪くも多少天井が高くなって大きいモニターになっているだけで、地下のシアターと同じレトロ感溢れる作りだ。

ただ明確に一つ違う点が一つある。

天井付近を見て気付いた。

手すりっぽい所からちょこっと見えている誰かの足。いつもの私なら「うわマナー悪いな」とかで終わっているかもしれないが今は違う。

この状況はつまり……つまりは2階に座席があるということだ!!!!!!


私は映画館とかの2階にめっちゃ憧れていた!!

家の近場にはそこまで大きい映画館ってなかなかないし、かといって自分が見たい映画って大体人気な作品ばかりだから、2階があったとしても大体埋まっていることが多い。

けど今回は違う。かなり気になっている映画を2階の座席から見ることができる!!


私はその事実に心を躍らせながら、駆け足で2階へと上がった。

2階の座席はシアターの真正面とその両脇にあった。

一部座席が壊れているが、地下のシアターみたくほったらかしにされているわけではなく、黄色と黒のロープで「ここ壊れてますよ!」的なニュアンスで示していた。

それにどちらかというと1階のシアターの方が綺麗だと思った。

実際ゴミ袋を持ったオジサマのスタッフが定期的に館内を循環しているようで、落ちている空のペットボトルを拾っているのを見た。


これなら先程のように映画をほったらかしておっぱじまることはないだろうと考え、スクリーンの正反対の座席の端っこ。通路から見て3番目の、ロープが貼られている席の隣に座ることにした。2階の席はどこも端が通路になっているので両隣りが空いてしまうが、これで私の隣の席には片側しか座れなくなる。実質新幹線の奥の座席ということだ。

一先ず席も確保して落ち着いたので、残りの数分間を観察のお時間にあてることにした。

人数は上と下合わせて30人前後で少なめだった。実際どこの席もガラガラで、1階に至っては広々とした空間なのに座席で寝ているのは3人しかいない。

「土曜日の夜だというのに意外と人が少ないなぁ」と考えながら1階の座席をぼんやりと眺めていると、スクリーンの左手にある女子トイレに出入りしている人影があることに気付く。


えっここって女性の人来るの!? しかもやけになんかオシャレなドレスを着ている。

思いっきり背中が見えるような女性っぽい服装。しかもかなりの頻度で様々な人が出入りしている。

結構目立つ格好をしているのに全然気が付かなかったな。俺がちゃんと見てなかっただけかなぁ。


何か違和感を感じながらも他にやることはないので、背中が丸見えの女性の背中をじっと眺めていた。

するとしばらくしてから先程から感じていた違和感が言葉になり、周辺にそこそこの人がいるのに思わず呟いてしまった。


「なんか背中曲がってない?」


真上から見ていてあまり気付かなかったが横を向いた時それが核心に変わる。

なんかおじいちゃんみたいにかなり背中が曲がっていて、もっと言えば背中から見える肌もかなりおじいちゃんみたいな感じだった。

いやおじいちゃんみたいな感じというかめっちゃおじいちゃんじゃねーか!!!!


再び女子トイレへ目を向けるとそれはそれはもう様々な女性(意味深)が出入りしている。

肩幅がでかい人、カツラがズレて頭頂が光っている人、よぼよぼで移動にめっちゃ時間がかかっている人……すごーい! 君達はポルノ映画館のフレンズなんだね!


と、心の中で全てを肯定するサーバルちゃんを召喚して、何とか動揺しないように映画館の天井を眺める。

凄い人達と同じ空間にいるな……私は今凄い体験をしているのかもしれない。

思い返せば、今まで周辺の死神や人間にそういった性癖を持ち合わせている人がいなかった。

まぁ私は女装、BLや百合、オメガバース、ケーキバース、カントボ……まぁそういう様々なジャンルを「なんでも食べまする」みたいにある程度抵抗なく見れる人種なので、その光景を見た時は、勿論驚きはしたし動揺はしたしもぬけの殻になった気がするが、気付けば「まぁそういう性癖の人もいるでしょう」で落ち着いていた。

我ながら適応能力が凄いな……。


そんなことを考えているといつの間にか周辺が暗くなっていて、スクリーンには序章的なヤツが映し出される。

この映画の最初の掴みはなかなか良かった。

まず男女の観光客が道化師の男に攫われるシーンから始まった。場面が変わって男2人女3人で構成される主人公たちの下ネタトークが流れた後、ベネチアに向かうため船の便に乗り込むところから始まる。その後にしばらくOPが流れてから本編が始まり、到着したと思えば現地住民からの大バッシング。そして目的地に向かうために水上タクシーを利用していると、冒頭で登場した道化師が乗り込んできて、オペラをやるから来てくれとチケットを渡してきた。しかしあまりにも面倒くさすぎるアッパー系的な絡みをし続けるのでキレた水上タクシーのおっちゃんが、なんか浮いてる三角コーンみたいな所に置いていき、無事に主人公達を届けてからホテルでキャッキャウフフし始めた。


これから何が始まるんだろう? いつ何所であのアッパー系道化師が襲ってくるんだ!?

テンポよく、着々と進んでいく映像に惹かれて、言葉に表すのなら釘付けだった。

実際映画が始まってから問題なく視聴できていて、立ち上がって歩いている人はいるけど先程のように急におっぱじめているとか、そういった光景は見受けられなかった。

地下のシアターよりも明るいので、もしかしたらあそこの空間だけがちょっと特殊だったのかもしれない。だから大丈夫だ、このまま何も問題なく映画を見れるだろう。


安心しきって映画に集中していると、後ろから扉を開けた音が聞こえてきた。

映画を見ていておそらくまだ数十分しか経っていないにも関わらず、5人以上の出入りがあって殆どの人達が映画なんて見てないんだろうなぁ。みんな寝るためにここに来てるのかな?

なんてことをスクリーンを見ながらぼんやりと考えていると、突然自分の席が僅かに振動する。しかも隣の座れる席の方から。


おいこれがもしかして……最近噂のトナラーってやつか!?

他にも見やすい席とか空いてる席あるのに????

いやでも私も分からなくはない!

確かにトイレとかで3つ致す所が並んでいて、なおかつ端に人がいる時には私は何故か真ん中を選んで隙間を無くしたくなる。

そっちの方がなんかこう、なんか良い気がするからだ!!


だけどこの映画館はトイレと比べて他に座れる座席がある。

妙な緊張感が体に走り、一瞬場所を移すことも考えたが、でもここで立ち上がって別の席に行くのは隣に座ってきた方に失礼だ。

それに映画も徐々に盛り上がりを見せていて、これを逃すのはもったいない!!

ここで一々隣に座ってきた人のことなんて気にせずスクリーンに集中すればいいじゃないか。ちゃんと払った分の元を取り戻さないと!!


そう思っていた矢先だった。


突然私の太ももを撫でるような感触!!!

驚いた私はその手が生える方向へ目を向けようとしたが、それよりも先に誰かの影が顔に近づいてきて一言。


「きみかわいいね゛ぇ゛ぇ゛ 女の子かと思っちゃったよ゛ぉ゛ぉ゛♡」


あっあっあっ……


(゚Д゚)あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!


柄〇明さんを丸一日水に漬け込んでふやかしたようなオジサマが、私に対してスナイプしてるぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!

まっまずい!! でも落ち着け私!!!

こういう時は落ち着いて冷静に誠実に断ればいい!!!

私はヤリ〇ンでもヤリ〇ンでもない、そういうことをしっかりと伝えなければ!!!


「あの、僕映画見に来てるんで……」

「そうなんだ」

「は、はい……」


「「……」」


……あれ、なんか断ってもさわさわしてくる手が止まらないんだけど。

それどころか腕は徐々に上半身の方へ移動していき、気付けば私の胸を人差し指で撫で回すことにシフトしていた。


いやおい何勝手に人の乳首触ってんだ!!!!!!!!!!!


まるで自然な流れかのようにシフトしやがったぞコイツ!!!

しかもなんかめちゃくちゃ人差し指動かして先をくすぐってくるし!!!!

な、なんかこの人手慣れてる気がするし間違いなく歴戦の猛者!!!

まっまさか……まさか私にワンチャンあると思われてるのか!?!?


「いやぁ君かわいいねぇ……まつ毛とか長いねぇ」

「アッ……ハイ」

「今日ここにくるの始めて?」

「アッ……ハイ」

「へぇ~ それにしてみ君まだ若いねぇ 大学生?」

「アッイヤ……シャカイジンデスゥ」

「へぇ〜 どう? 乳首いじられて勃ってきた?」

「アッイエ……アハハ」


勃つわけねーだろ!!!

俺の心の中は完全にガンタンクというか、いやそもそも勃つための足もねーよとかそんな感じだった。

それになんか初めてのことが多すぎて、そもそも頭が追いついてなかったというのもある。だって私家族以外の人に胸触られるのなんて初めてだぞ!? そこがオジサマに触られた状況と私の気持ちを理解してくれよ!!!!


……いや、けどこの考えは間違っているかもしれない。

一旦冷静に考えてみよう。

そうだ、私はさっきから「映画館でそういうことをされるのは異常事態だ」と考えていたけれども、もしかしたらその考え方がおかしいんじゃないか?

さっきから何度か感じていた違和感だってそうだ。

初っ端のフェラーリで全部麻痺していたが、やっぱりここは何かがおかしい。

女装をしているオジサマだって「そういう人達もいるよね」って考えてたけど、なんでそういう人達がこの映画館にいるんだ?

それに席に座っている人達も、映画を見るというかは何かを探しているかのように落ち着きがない。

この時、私の脳裏には家族から借りたとあるBL漫画を思い出していた。

そしてそのシーンと雰囲気が似ている気がして、けどまさかそんなハズはと一旦心の奥底に留めたが、それでも質問せずにはいられなくなってしまい、触ってくるオジサマに聞いてみた。


「あのここって……そういう場所ですか?」

「そういう場所って?」

「あのその……もしかしてハッテン場……」

「うんそうだよ! えっ知らなかったの?」


あぁ……予想が当たってしまった。

私はそこが、叡智な映画を放映しているだけの映画館だと思っていた。

だけど違う。

なんと女装をした60代前後のオジサマと、それに物理的に繋がりたいオジサマ達との憩いの場に私は知らずに迷い込んできてしまったのだ!!!


この時の私は完全に参っていた。

まぁハッテン場に入ってしまったことはまだいい。

自分が襲われるかもしれないっていうのも……いや勿論無い方がいいけど、でもそういう場所に入ってきてしまったのは私だから、多少のそういうのは受け入れざるをえないとも思った。勿論ヤルのとかチソチソを触らせるとかはNGだけどな!!


ただ一番辛かったのが、そこそこ面白い映画に集中したいにも関わらず、この後しばらくの間もまるでナンパする際の質問みたいなのをずーっとされていたことだ。

例えば……


「これどこが舞台の映画なん?」

「アッ……これヴェネツィアらしいです」

「ヴェネツィアって確か地中海の方やんな?」

「アッ……スッ」


とか!!!


「君と同じくらいの双子の娘がおんねん。身長は170㎝くらい」

「アッ……娘さん身長高いですね。僕172㎝なんで……」

「そうやろ~しかも二人揃ってドスケベな顔してるねんで」


おい娘の顔をドスケベとかいうな!!!!

それとも何か!? まさか私を高身長でドスケベな顔してる娘で釣ろうとしているのか!?!?

……ちょっと興味はあるな。


いやどちらにせよそんな会話しながら胸をいじってくるのやめろ!!!

あと定期的に「乳首ここやんな?」とか聞いてきたり、「もうそろそろ勃ったんちゃうん?」とか言いながらチソチソを触ろうとするな!!!


もうオジサマとの死闘に熱中しすぎて映画の内容が全く分からない。

なんか気付いたら主人公パーティーが何人か既に見当たらず、女性の1人がペストマスクに連れ去られてるシーンが流れていた。

もうあれから何分経っていただろうか。


内容も全然覚えてねぇわ……と絶望していると、触ってきているオジサマに声をかけられた。


「兄ちゃん、あれ見てみ」


顎をクイっ2階の私達から見て右側へと向ける。

もう映画も途中まででどうでもよくなっていたので、どうせならオジサマのお話に付き合ってあげようかと考えながら同じ方向を見てみると、疑問符が浮かび上がるような光景がそこにあった。


壁に手を付いて腰を突き出しながら喘いでる露出多めな女装オジサマ!!!

そしてその腰にさらに腰を打ち付けているオジサマ!!!

さらにその周辺にはまるでスクラムを組むかのような人だかり!!!!!!


えっ……あの……まさか。

さすがにここまで判断材料があると、そういうのに鈍感な私でも分かる!

人だかりが多くてハッキリとは言えないが、アレは間違いなくアレだ!!!!


「あそこで女装してる人とオッサンがなぁ……やってんねんで」


私がだらだらとした思考を脳内で繰り広げて、結論を出す前にオジサマが言った。

ああ……スゥゥゥゥ……ですよねぇ~~~~~!!!!

あぁぁぁなんかめっちゃ盛り上がってるぅぅぅ!!!!

10mくらい離れてるけどなんか甲高い喘ぎ声が聞こえるよ~!!!


「じゃあ兄ちゃん、ちょっと近くに見に行ってみるか?」


おいおいおい何言いだすんだこのオジサマ!?!?

行くわけねーだろ僕は元を取るために映画がが見たいの!!!!!


「イヤ……イイデス」

「でもな兄ちゃん。兄ちゃんみたいに若いうちから色々経験せんといけんで! そういうことをやらんとオッサンなってから性欲を抑えきれんようになって、やれセクハラだ、やれ痴漢だをすることになるねん! これは言うたらガス抜きや、ガス抜き!!」


ま、まぁ……そうかもしれない。

確かに以前遊んでいたPSO2というオンラインゲームで「子供の頃からゲームを禁止されていたけどこのゲームに出会ったせいで職を失った」と言う先輩アークスもいらっしゃった。

やはり何かを制限すると言うことは、時として正しいこともあるが間違っていることもあるだろう。

成る程……そう考えると私も今のうちにこのハッテン場で沢山の叡智を経験したほうがいいということに……なんねーよ!!!!!!


その後もオジサマは滅茶苦茶私に対して例の行為を近くで見ることを勧めてきた。

何なら「お兄ちゃん若いからすぐ入れさせてくれるで〜」とか「あのコめっちゃカワイイで! ワシ知り合いやから呼んでこよか?」とか言われたが、いや入れるわけないだろそんなもの!!!! 私はそれよりも映画が見たいの!!!!! 女性が監禁されてるシーンの続きが気になるの!!!!!!

つーか胸をいつまで弄ってくるんだよお前よぉ!!!

もう諦めろよ絶対無理だから!!!!!!!

他の人に行け他の人に!!!!!


とかは言わずに「アッスゥゥゥ……イヤイイデス」としか言えなかった。


そんなことを考えているとまーたオジサマが「あそこみてみて」と声をかけてきた。

次はどんなイベントが待ち受けているんだろうと、なんか妙な気持ちがが底から湧き上がってくる感覚に驚きながらも示した場所を見た。


先程腰を打ち付けられていた女装オジサマがトイレに足繫く移動している。


「あれな、お尻に貯まった精子を水で洗い流してんねん」


えっ……なにこの解説キャラ……本部以蔵!?

なんでそんな詳しく説明してくれんの?

そしてなんで他人の胸触りながらそんな普通に説明できんの?


結局僕はもうこれ以上映画を見逃すわけにはいかないと考え最低限の返事をしていると、どうやら反応的にも私の私的にも盛り上がりそうにないことを察したのか、オジサマも諦めたらしく「別のところ行くわ」と呟いてから立ち上がった。

助かった、もう胸の感覚がない。かれこれ30分以上触られていた気がするが「人差し指はまだ動くのかな?」とかどうでも良い疑問が妙に気になる。


オジサマは背後にあった出入り口のドアを抜けていった。


「今日何時までおる?」


その一言だけを残して。


映画はついに終盤へと差し掛かっていた。

どうやら犯行は旅行客のマナーに対して恨みがある地元住民達により結成された組織によるものらしく、ついに場所を突き止めた警察官と主人公は、いつの間にか囚われている女性と男を救出しようと突撃作戦を続行していた。


突然私の映画干渉を阻害するかのようにまーた座っている席が揺れるが、今度は壊れた席を一つ挟んだ反対側だ。

絶対さっきのオジサマだろうなぁ……という予想をして視点を移すと、そこには確かに予想通り私にセクハラをかましてきたオジサマが座っていた。だけど一人だけではない。もう一人……そうもう一人、フリフリのドレスを着た阿佐ヶ谷姉妹の渡辺江里子さんを上下に引き延ばしたような方が横に座っていた。


何が始まるんです?

隣にカービー将軍がいればすぐに聞きたくなるようなよくわからない状況に思わず困惑する。それが私の顔に出ていたのか、それとも見透かしいたのか、どちらにせよオジサマは滅茶苦茶楽しそうな顔で私にこう言った。


「社会勉強や。良く見ときよぉ~」


直後、オジサマのズボンのチャックから「ポロン♪」とオジサマが飛び出してきたかと思えば女装したオジサマが、オジサマのオジサマにしゃぶりついた!!!!


ジュポッ♡ ジュポッ♡ ジュポッ♡


うわぁ!!! 音が聞こえるレベルに近い場所で……ふぇ、フェラーリしてるぅぅぅぅ!!!!

でも全然叡智な気分にならねぇぇぇぇぇ!!!!!!!

う゛わ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!


もうその時の私は目の前の行為に釘付けだった。

別に叡智な気分になったわけではないぞ!!!

ただ私は……私は、死神生で始めて生のフェラーリを見たからだ!!!!


こ、これがフェラーリ……!!!

なんか結構音してる!!!!

ていうか頭の動き早くない!? こっ、この女性(オジサマ)慣れてるな!?!?


「いやぁ~ほんとにめんこいのぉ~!」


うわぁオジサマのオジサマめっちゃ固くなってるぅぅ!!!

えっ私はオジサマが達するまで見ておけばいいの? あと何分かかるのこれ?

おいもう隣でそんなことされたら終わるまで落ち着いて映画見れないじゃないか!!!


しかし、そんな心配は不要だった。

フェラーリが始まってから20秒後、女性(オジサマ)が慌てた様子でティッシュを口で抑えた。


早くね……!?


そんな野暮なツッコミ……野暮?

ともかく私は流石に他人が傷つくかもしれないことを言わない死神だ。

「めっちゃきもちよかったで~ ええ社会勉強になったやろぉ〜」とご満悦で話すオジサマに、張り付いた笑顔で脳死で頷く。

そしてオジサマは女装オジサマと共に席を立つと、私に手を振りながら扉の奥へ消えていった。


映画ももう既に終了していたので、そのまま映画館を出た私は家に直帰して1日が終了した。


いやぁ……凄かったなぁ。


今回の話を聞いてもしかしたら興味が出る人もいるかもしれないが、なかなかハードルは高い部類だと思う。

そもそも私が笑い話としてここでつらつらと文章を書けているのは、あくまでも過去に男からの痴漢を2回は軽々してある程度耐性ができているからだ。インターネットとかで「男 痴漢された」とかで調べてみると立ち直れない人がいたりするほどだ。

もっと言えば、今回私に接してきたオジサマは諦めてくれて色々教えてくれた分まだ良かったと思う。調べる限り恐らくないとは思うが、人によっては粘着されて面倒ごとに巻き込まれる可能性も高いだろう。

もしも足を踏み入れるのであれば、それなりの覚悟は必要だろう。


だけど正直言って雰囲気は最高だった!

レトロ感満載な館内は勿論、あまり知らなかった映画を1000円ぐらいで3本も大画面で見ることが出来るという点でコスパも良い。

そういう独特な雰囲気に興味があるのなら、後悔はないだろう。

それなりの代償を支払うことになるかもしれないが……。


どうやら調べてみると、一階の座席の真ん中は映画館を見る人が座る場所だと決まっているらしいので次はそこで3本の映画を見てみたいなーと考えている。

ちなみに2階と地下シネマはヤることを目的とした人が集まる場所らしい。


いやしらねーよそんなことぉ!!!! 壁にでも書いとけよぉぉぉぉ!!!!

初見殺しすぎるだろデモンズの愚か者の偶像かよ!?


ということで皆様、機会があればぜひ堪能してみては如何でしょうか?

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