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第1話「バクダン」
地下研究所。
静かな研究室で、一人の研究員が机に向かっていた。
名前はカナモト。
彼女は長年、不思議な鉱石の研究を続けていた。
その鉱石は感情に反応する。
怒り。
悲しみ。
喜び。
様々な感情を吸収して光る謎の鉱石だった。
「今日も変化なし、か……」
そう呟いた時だった。
机の上の鉱石が突然まぶしく光り始めた。
「!?」
研究室が白い光に包まれる。
思わず目を閉じるカナモト。
数秒後。
光が消えた。
そこにあった鉱石は消えていた。
代わりに。
ぽつん。
丸い黒い何かが床に座っていた。
「……」
「……」
お互い見つめ合う。
そしてその黒い何かは言った。
「ここどこ」
感情のない声だった。
⸻
数日後。
その存在は「バクダン」と名付けられた。
不思議な生き物だった。
ご飯も食べる。
寝る。
歩く。
喋る。
でも。
感情というものがよく分かっていない。
「これなに」
「それはクッキーだ」
「おいしい」
「そうか」
「おいしい」
「わかった」
そんな感じだった。
⸻
しかし問題が起きた。
ある日。
研究員が大きな音を立てて書類を落とした。
バサァッ!!
「!?」
バクダンが驚く。
次の瞬間。
ボンッ!!
突風が研究室を駆け抜けた。
書類が舞う。
椅子が転がる。
研究員達の髪がぐちゃぐちゃになる。
「またかー!!」
「書類飛んだぞ!」
研究室は大騒ぎ。
しかし。
当の本人は首を傾げていた。
「なにがおきた」
⸻
調査の結果。
バクダンは感情が大きく動くと爆発することが分かった。
喜び。
驚き。
悲しみ。
怒り。
どんな感情でも。
一定以上になると爆発する。
本人に悪気は無い。
ただ危険だった。
⸻
そして改造の日。
「こわい」
珍しくバクダンがそう言った。
装置の上には固定具がある。
暴れた時のためではない。
改造中に爆発した時、バクダン自身を守るためだった。
カナモトはしゃがみ込む。
「大丈夫だ」
「ほんと」
「終わったら今までより安全になる」
「……」
「信じろ」
少しの沈黙。
そして。
「うん」
バクダンは小さく頷いた。
⸻
バクダンは装置の上に座っていた。
「まず検査からだ」
カナモトがメモを取りながら言う。
「けんさ」
「感覚があるか確認する」
「かんかく」
バクダンはよく分かっていない様子で首を傾げた。
カナモトは小さくため息をつく。
そして指先でバクダンの脇腹を軽くつついた。
「ひゃっ」
突然変な声が出た。
バクダン本人も驚く。
もう一度つつく。
「ふっ……!」
肩が跳ねた。
「くすぐったいのか」
「わからない…」
「今笑ったぞ」
「…」
バクダンは自分の口元を軽く触る。
すると近くにいた研究員が言った。
「感覚反応ありですね」
「というか、かなり敏感かもしれません」
カナモトはメモを書き込む。
その間も。
研究員の一人が興味本位で尻尾代わりの導火線をちょんと触った。
「ふふっ」
バクダンが小さく笑った。
「……」
研究室が静まる。
「今笑った?」
「笑いましたね」
「かわいいな」
「かわいいですね」
「…?」
バクダンだけが状況を理解していなかった。
その後。
必要な検査を終えたバクダンは装置へと移された。
結果、改造は成功した。
爆発しても誰も傷付かない。
爆風だけが起きる。
そんな身体になった。
だが。
代わりに変化が起きた。
⸻
「カナモト」
「なんだ」
「なんかへんだよ…」
「どこがだ」
「これ」
バクダンは胸を押さえる。
「うれしいとあったかい」
「……」
「かなしいといたい」
「……」
「まえよりいっぱいかんじる…」
カナモトは言葉を失った。
⸻
バクダンは知らない。
人よりも強く。
人よりも深く。
感情を感じる身体になったことを。
嬉しさも。
悲しさも。
寂しさも。
愛情も。
全部。
普通の人間よりずっと大きく。
⸻
その日から。
地下研究所に、
少し変わった爆弾の子が住むことになった。
感情で爆発する。
でも誰よりも感情豊かな。
不思議な爆弾の子が。
コメント
1件
うわあ、めっちゃ好きなやつだ……!「感情で爆発する」って設定、可愛いし切ないしで一気に引き込まれたよ。特に改造後の「うれしいとあったかい」「かなしいといたい」ってセリフ、心臓ぎゅっとなった。カナモト先生との信頼関係もじんわり来るし、研究員たちが「かわいい」って連発するの、よくわかる(笑)。バクダンの誕生、本当におめでとうって感じだなあ。続きが気になる!
#人外