テラーノベル
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「あ、それ僕が持つよ。駿斗はこっち座ってて」
土曜日の朝、リビングで出かける準備をしていた駿斗の手から、僕はすかさず重い旅行バッグを奪い取った。社会人になって数年。お互いに仕事で忙しい日々を送っているけれど、週末の予定だけは絶対に合わせるのが、僕たちの一番大切なルールだ。
「ありがとう、空大。でも、これくらい自分で持てるのに。相変わらず過保護だなあ」
駿斗は苦笑しながらも、嬉しそうにソファの僕の隣へと腰を下ろした。スーツを脱いで私服になった駿斗は、中学生の頃のあの無垢な輝きをそのまま大人にしたようで、僕はいつだって目を奪われてしまう。
「過保護で結構。駿斗に何かあったら、僕が困るからね。ほら、今日のルート、これで大丈夫?」
僕がタブレットで事前に細かく調べ上げたドライブの計画を見せると、駿斗は目をキラキラと輝かせた。
「すごい! 駿斗が前に行きたいって言ってた海沿いのカフェも、展望台も全部入ってる! 本当に空大は、俺のやりたいことを何でも分かってくれるね」
「当たり前でしょ。駿斗のことは、世界で僕が一番よく知ってるんだから」
昔、ネットの偽物に騙されかけた駿斗を僕が引き止めてから、僕たちは色々な場所へ二人で行くようになった。僕の強い独占欲や「守りたい」という執着を、駿斗は「空大の愛情は分かりやすくて安心する」と、すべてを受け入れてくれている。今日も、僕が運転する車の助手席は、駿斗だけの指定席だ。
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