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夜の病院は、不気味なほど静かだった。受付も、外来の待合室も、誰もいない。
心臓の音が耳の奥でうるさく打ち鳴らされ、汗が冷たい夜風に冷やされていく。
「……ここだ」
ナースステーションの目を盗んで、彼女の名前が書かれた病室の前に立つ。
ドアノブに手をかける。指が、今までで一番震えていた。
もし、もう手遅れだったら。もし、彼女が私の顔なんて見たくないと言ったら。
逃げ出すための言い訳を考える「良い子」は、夜の街に捨ててきた。
カーテンの隙間から漏れる月明かりの中に、彼女はいた。
驚いたように目を見開いている。
「……あ、Amia……?」
掠れた声。
その瞬間、熱いものが頬を伝った。
「ごめん、ごめんね……っ。私、自分のことばっかりで、こんなに戦ってるの、知らなくて……」
私は、彼女のベッドの横で崩れ落ちた。
いじめられて、不登校になって、期待を裏切って、逃げ出してきた「最低な私」の姿。
「……ううん。会いに、来てくれたんだね。ずっと、辛かったんだね。……耐えてたんだね」
その言葉で、私は初めて「救われた」と思った。
親の配慮よりも、先生の励ましよりも。
同じ地獄を生きる戦友からの、たった一言。
私は彼女の手を握りしめた。
この世界で生きていくのは、あまりにもハードモードすぎるけれど。
この温もりだけは、偽物じゃないと信じたかった。