星が冴え渡ってくる頃、一室だけはまだ灯りが点っていた。
WR国総統グルッペンは、書記長トントンと書類を捌いていた。
静寂の中に紙をめくる音と微かな息遣いのみが聞こえる。
コトリ、と頭上から音がしたのを合図に、二人は手を止める。
「おかえり、ゾム」
グルッペンが言うと音の正体は床へと降り立つ。
「ただいま。グルッペン、トントン」
黄緑色のパーカーを着た彼は、フードを下ろしてトントンの元へ行く。
「…ん?ここカスってるで。どうしたんや?」
いつもの通り怪我チェックをすると、トントンは一つの傷を見つけた。放っておいたら少し痕が残る程度のものだ。
「ゾム、こっちへ来なさい。手当だ」
ゾムは言われた通りに今度はグルッペンの元へと向かう。てこてこと寄りにいくゾムは、なんだか可愛いものだ。
「…痛むか?」
「ちょっとやから、大丈夫」
グルッペンがゾムの白い肌にある傷を洗い、塗り薬を施していく。
その間トントンは温かい飲み物を用意して、三人分を机に並べていた。
「ゾム、こっちおいで」と、トントンが呼んだ頃には、手当も終わりグルッペンがゾムの頭を猫を撫でるかのようにしていた手をそっと外して向かう。
そして任務後の疲れを癒すように温かい飲み物を頂き、眠りへ誘おうとするトントンとグルッペンの撫で回しを受け入れていると、ゾムは自然と眠りに落ちたのであった。
「…寝た、な」
グルッペンが優しげに微笑むと、トントンはすっと立ち上がる。
「グルさん、わいゾム運んでくるから、仕事に戻っときや」
そう言うとトントンはゾムを慎重に抱えて歩き出す。
グルッペンはその背中を見送り、再び書類仕事へと戻っていった。
✲
ゾムが眠りにくくなったのは、いつの頃からだっただろうか。
グルッペンはぼんやりとした頭で考える。
そうして、それはゾムが五つの頃からだったと思い出す。
五歳という年齢は、自我が芽生えたばかりで、人格を形成するのに大切な時期だ。
ゾムがのびのびと育ち、煌めく橄欖石を誰にも邪魔されないような、そんな自由の羽をつけていて欲しい心願していた。
__だからこそ、あの日の事が忘れられない。
地域一帯を統括する貴族の一人息子として、何不自由なく過ごしていたグルッペンと、大規模な産業サイクルを動かす家の次男であるトントンは、一般家庭の一人息子であるゾムと幼なじみだった。
年齢はグルッペンとトントンが同じで、ゾムはそれの四つ下。
グルッペンは産業を統括するトントン一家と関わりが無いわけなく、昔からライバルみたいな関係で、その二人のちょうど間ら辺に住むゾムと出会い、三人は仲良くなった。
新緑の瞳と柔らかな栗色の髪が愛おしくて、二人揃って撫で回していた記憶がある。
ゾムが二人を兄の様に慕ってくれていたことも、弟が出来たようで嬉しかった。
三人で、自然豊かな森に秘密基地を作り、明くる日も楽しく笑っていた。
戦争とか、不条理とか、そんな言葉に触れることなんて、微塵も無かった。
幸せだが、グルッペンには少し物足りなかった。
幼い頃から類まれなるカリスマ性を持て余していたグルッペンは、もっと刺激を欲していた。
グルッペンは、トントンとゾムと戦争ゲームをして遊ぶことで、その欲を少しだけでも満たしていた。それは、二人の戦略やら思考やらを存分に感じられる、グルッペンにとって私服の時間だった。
そう言う日々の中、グルッペンとトントンは違和感を子供ながらに感じていた。
それは、ゾムの自己肯定感の低さと、偶に見せる光のない目。
二人はゾムの家に行ったこともあるし、そこでの環境は柔らかな日差しのような、素敵な家族であったことは覚えている。
決定打がない日々を過ごし、グルッペンはとあるものを見つけることになる。
__200兆円の債券について。
そう書き出された書類は、グルッペンがたまたま父方の書斎忍び込んで見つけたものだった。
金額の大きさは、国を立て直せない程だとグルッペンは理解する。
グルッペンは政治が得意だったが、何代にも続くその才は、グルッペンの父には無かった。
元々世界が不安定で、財政を整えるのは難しかったが、もうこれは取り返しがつかない。
そして、その書類にはこう書いてもあった。
__養子として、ゾム・○○○○を迎える計画が成功したとき、この債券の半分はこちらが引き受ける。
そうして、印と署名が綴られていた。
グルッペンはくシャリと書類を握り、駆け出した。
いつものあの秘密基地へと向かって。
何故ゾムの名前が書いてあったんだっっ!絶対にゾムを離さない。はやく、はやく阻止せねば。
グルッペンは道中でトントンと出会う。声をかけようとしたグルッペンは、トントンの顔色を見て察する。彼は同じような書類を手に持っていた。
「グ、グルッペンっ!それ、は、ゾムの、か、?」
トントンは何時にもなく焦っている。
「なんで同じものを持って、同じ時に出会ったのだ……?」
グルッペンは嫌な予感がした。
「…っ!そんなんより、ゾムを見つけんと、早くっっ!」
何時ものあの場所へ、秘密基地へ、早く、早く___
ガラリとした秘密基地。三人で囲んだ丸机に、一通の手紙が置いてあった。
__
グルッペン、トントンへ
まず初めに、ごめんな。
こんなふうにしか伝えられなくて。
この国が借金してて、それを助けてもらうかわりに、俺がキーになるって言われたのは五さいのとき。
なんか、気に入ってもらえたらしい。
場所は言えないけど、遠くの所にいくから、寂しくならないように話さなかったんよね。
それからは、毎日いろいろ勉強したんやで。えらいやろ?
俺ももう十さい。契約通り、俺は引き渡される。
でも大丈夫やで!きちんと優しくしてもらえるらしいし、何不自由ないって言ってたから。
心配せんといてな。俺は大丈夫やから。
いつかまた会えることを願ってます。
ゾム
__
「クソっっ!クソっ、クソっっ!!」
グルッペンが堪えきれない涙を流す。
トントンは音もなく崩れ落ちていた。
二人が十四、ゾムが十のときの事であった。
ゾムの様子に違和感を覚えたのはゾムが五さいのとき。そして、グルッペンとトントンが仕組まれたかのように同じタイミングで知ったのも、恐らくどうせバレるのなら同じ時にして、ゾムを連れ出そうという作成の内だろう。
グルッペンの父は、聡明な息子を恐れていた。それと同時に嫉妬していた。
グルッペンは頭の回転は遅くとも、優しい父親がこのような蛮行に走る落胆と、大切な人を奪われた怒りでいっぱいだった。
トントンはゾムのことを特に可愛がっていた。次男であるが故に、弟が出来たような事が嬉しかったのだろう。その分、ショックが大きい。
二人は、復讐を決意した。
ゾムはきっと、苦しかっただろう。期待される日々の中、自分の価値をそれでしか見いだせなくなって、グルッペンとトントンに眩いほど憧れていたはずた。
幼ない頃から条件付きで過ごして、自分はいつ不要になるのか、不安で、だから頑張って、だけど疲れて。
ようやく向かえた十歳の誕生日、今まで生きてきた先に、ゾムが心から幸せに過ごせているとは到底思えなかった。
グルッペンとトントンはあの日から猛烈に努力した。
その才能に磨きをかけ、自立するために。
そして、一代で築き上げた国に、WR国と名ずけた。
由来は”この世界の主役は我々だ!”というスローガンからだ。
幹部として勧誘した面々は、とても面白くて、過去グルッペンが望んだ刺激的な日々を過ごせた。
しかし、グルッペンとトントンの目的はそれではない。欠けた黄緑を取り戻すために、二人は駆け回った。
はるか遠くの、北の国での社交界でパーティに目星をつけた二人は、ゾムと会えると信じて向かった。
__するとパーティの喧騒の中、一際輝く黄緑の瞳があった。
社交パーティに即した、綺麗な格好だからか、見慣れない彼の姿。
幼いころから背もある程度高くなって、伏せられた瞼は、どこか諦めを感じさせるような雰囲気があった。
花火に火を灯したと似のような、バチバチとした一瞬で、ゾムと目が合う。
「…っ!グルッペン、トントン、、、」
ゾムがこちらを見て、小声で呟いたその一言を聞き逃さなかった。
トントンと共に距離を詰めて行く。人混みの中、人を掻き分けてゆく。
「久しぶりだな。ゾム」
グルッペンがゾムに伝えると、目を見開いて声も出ない様子のゾムに、ゾムの主人と思われる人物がこちらに近づいてくる。
「…うちのゾムに何か御用でも?」
ゾムの主人と思わしき人物は、話しかけられるとゾムの前に出て、話を聞く体制をとる。それは、ゾムの自由を阻害するかの如くの出で立ちだった。
「ええ、少しお話よろしいですか?」
グルッペンは知っている。
その人物がゾムに目をつけたのは、ゾムの見目だけではない。
グルッペンはトントンに目配せをして、ゾムをこっそり連れ出させるようにする。
それに気がついたゾムは、主人から少し身を引き、距離を取る。
トントンが後ろに周り、ゾムの手を取る。
トントンの手を握ったゾムが、酷く安心したように泣いていた。
✲
「…ゾム、会えて良かったっっ!」
人気の無くなったタイミングでトントンがゾムに抱きつく。身長差があるため、ゾムの体は少し浮いている。
「んっ、トントン、く、苦しいって」
ゾムは圧迫感に先程の涙も引っ込みかける。
「あぁ、ごめんごめん。……でも、よかった」
トントンはゾムから身を離すと、ゾムの涙の跡をそつと拭う。
「…なんで、ここが分かったん?」
ゾムはずっと疑問だった。
あの日、二人と離れてから二度と会えるわけないと思っていた。
お国のためと身を滅ぼすまでだと考えていたゾムは、唐突な出来事に頭が着いていかない。
「…あんな別れ方して、俺らが忘れるわけないやろ。ずっとそれしか考えてこなかったわ」
トントンは、良かった良かったと言いながら、耳元のインカムに向かって話しかける。
「こちらトントン。ゾムを保護した。グルッペンたちの作戦に移って大丈夫だ」
「…なぁ、トントン。何話してんの?」
トントンはゾムを安心させるように答える。
「……俺もやけど、ゾムが連れてかれて怒らんけ訳無いからな。復讐の準備してるんやで」
その言葉にゾムは驚愕する。
「なっ!俺一人のためだけにそんなんせんくてええって!」
「……ゾムは、ずっとこの国で何されとったか言えるか?」
トントンの言葉に、ゾムはビクリと跳ねる。
「…幼い頃、見た目が好みだったからって、連れていかれただけじゃないよな?」
「……う、ん」
ゾムは恐怖からか、薄らと涙の膜を張っている。
「…ゾムは、クローン実験の被験者にもされてた、であっとるか?」
「…ぅ、ん、」
ゾムの運動能力は、幼い頃から顕著に現れていた。
_クローン実験。その内容は運動能力に優れた個体の複製。
要するに、ゾムの複製体を作ろうと計画していたのだ。人道に反した、醜い行為。
そんなことをゾムは無理やりされていたのだ。
幸いにも、まだ研究不足なのか、ゾムのクローンは完成していないと聞いた。
だが、その研究過程でどんな事が行われていたのかを、トントンとグルッペンは知っている。
優秀な自国のハッカーが調べてくれたのだ。
見た目が好み、と言ったが、そう言われるということは何をされていたかなんて想像に難くない。
ゾムを迎えた主人は、ゾムの身体を犯した。
十歳のゾムをベットに招き入れると、恐怖で震えるゾムの体を優しく撫で、口付けを落としていく。
その度にビクビク跳ねる身体に興奮したのか、主人はゾムの後孔にも手を出す。
当然、そんな所に指を入れるなんて、初めから気持ち良いわけではない。
痛がっているとそれに怒った主人がゾムの小さな臀を叩く。
叩いて、指を入れられ、口付けをされ、その繰り返しでゾムの白い肌には赤い痕がたくさん付いていた。
前立腺をようやく見つけられると、そこを苛められ、ゾムは思わず声が出る。
痛いと気持ちいいが混じり合い、涙が止まらない様子のハメ撮りが沢山残されている。
主人のオカズにでもするためだろう。
トントン達はこのことを知っているが、あの場面でそれを伝えるのは無神経だろう。
安心なのか、グスりと泣きはじめたゾムがトントンに縋り付く。
ゾムは、一つ一つの動きが艶めかしくて、否が応でも興奮してしまう。
幼い頃から教え込まれたからであろう。
トントンはゴクリと生唾を飲み干し、必死に耐える。
秘密基地のなかで、三人で微睡みに包まれて眠ったあの時のような安心感を、ゾムは感じれていない。
程なくして、グルッペンからゾムの引き抜きの成功と、その国の闇を晒したとの報告が入り、この事件は幕を閉じた。
✲
あれから五年の時が経った。
ゾムはWR国にきて、今までの苦しみを上書きするかの如く、自身の価値を分からせたつもりだ。
グルッペンが晒しあげた国は、年内に崩壊し、既に他国の領土となっている。そのため、WR国はあれ以来干渉していない。
あんな土地貰っても損だ、とグルッペンは一蹴したのだ。
ゾムには後輩も出来たし、先輩もいる。
幼なじみのグルッペンとトントンは特にゾムが馴染めるように手解きしてくれていて、ゾムは存外すんなりと馴染んだ。
事情を知っても尚、変に気を使って居心地を悪くさせない幹部の面々には、深く感謝している。
もう、なにも問題はない。
だが、幼い頃の環境というのは、大人になっても自身の性格として絡みついてくる。
__ゾムのそれは、任務後に表れる。
冒頭に戻り、ゾムはトントンによって運ばれた後、そのままその部屋のベッドで寝かされていた。
「…ぐるっぺん、とんとん、」
「ん〜?ゾム、どうかしたか?」
仕事が終わり、ゾムを傍で見ていたグルッペンは応える。
「……さびしぃ」
「俺はここにいるぞ」
「……つらい」
「…っ、もう大丈夫だぞ」
任務後に偶に起こる、ゾムのこの現象は、自身の存在を確認し、安心感を得る為のものだろう。
このやり取りは、もう慣れたとはいえ、胸が痛む。
「……いきてて、いぃ?」
今までの問答になかった、ゾムの問いかけにグルッペンは目を見張る。
「当たり前じゃないか。どれだけゾムのことを大切に思っていると思うんだ」
「…そっか。……あぃして、くれる?」
蕩けるような口調で、恍惚とした表情で、グルッペンの手に擦寄る。
そこへ、コップを洗い終わったトントンがやってくる。
「…グルさん。ゾム、いつものあれか?」
「……あぁ、そうだ。これからたっぷり愛してやらないとな」
グルッペンは目を伏せた。
トントンはゾムに近寄り、その頬を撫でる。
猫みたいに擦り寄ってくるが、その顔色は悪く、不安定だ。
__その顔色は、これから朱色に染って、愛され尽くす事になるからな。
グルッペンとトントンは心の中で唱える。
「…グルさん。今日は俺がゾムを風呂に入れてくるわ」
「あぁ、よろしく頼んだぞ。しっかしと準備させろよ」
その言葉を背にして、トントンはゾムをそっと抱き上げるとシャワールームへと足を向ける。
「…ん、とんとん。ありがとぉ。自分で脱げるから」
そう言ってゾムはパーカーのチャックを下ろす。手袋、インナー、ベルト、とゾムの脱衣の様子はエロくて、トントンはそうそうに目を逸らす。
「んふふ。とんとんはいつまでたっても慣れへんなぁ」
半裸になったゾムがトントンを下から見上げる。
「…慣れへんよ。こんなにエロいの」
トントンはかえって開き直っている。
そうこうして二人が脱ぎ終わると、手早くシャワーを代わる代わる浴びる。
「…ゾム。触るで」
「…んっぁ。う、ん…っ」
喘ぎながら返事をしたゾムに興奮したトントンは、ゾムの背筋を撫で上げるようにして首元に手を這わす。
「んぁっ、!とんとっ、焦らさんといてぇ」
ゾムは既に涙目になりながらトントンの胸板に抱きつき、全身を震わせている。
「ゾム。指、入れるで」
「…うっ、ん…っ!きてっ」
ゾムの返事を境に、トントンはくちゅりと後孔に指を入れる。
「…んぁっ!ふっ、んぅ…っ」
ゾムは息を吐きながらトントンに縋り付き、腰をくねらせる。
トントンのモノは既に張り詰めていたが、シャワールームの外で待つ我らが総統を抜け駆けして挿入するのはかたじけない。
「…んぁっ!とんとぉ、もっ、もう、いれてやぁ…っ!」
快楽から来る涙をほろほろと零しながら懇願するゾムをみて己の理性を総動員しても、耐えきれなかった。
「くっっ!ゾムっ、それはずるいやろっ」
抱きつく姿勢から向きを変えてバックの状態にする。
そのままゾムの蕩けた後孔にゆっくりと挿れた。
「んっあぁ”っっ!あ、っやぁっ!そこぉっ、きもちいぃっっ!あんっっ」
出し挿れを繰り返されるゾムはトントンの射精を機にくたりとへたり込む。
「…あ、っ、う…っ」
「っはっはっ……」
トントンはイった後の倦怠感で完全に雄の顔になっていた。その顔はまだまだ性欲は発散しきれていなく、獲物を狩る目でゾムを見下ろす。
「…んっ、ぁ、とん、と、抱っこ、してぇ」
そう乞うゾムの意のままに抱き上げる。身体を優しく拭いている間もピクリと反応するゾムは非常に目に毒だ。
「…グルッペン。すまん、遅なった」
「いや、大体予想通りだから大丈夫だ。それに今日のゾムは一段と色気が凄いからな…」
グルッペンは、ベットの上に座らされたゾムの顎をクイッと持ち上げると愛おしそうに頬を撫でる。
「…ん、っ、ぐるっぺんやぁ」
にこにこと擦り寄るゾムをそのまま押し倒し、腕を組み上げる。
「…ゾム。今日はどうしたい?」
「んっ、グルッペンのすきなようにで」
ゾムが言い終わる前にグルッペンはその口を塞ぐ。
「んむっ!んっ、ぅ」
長い口付けに悶えていると、トントンがゾムの腰をスルりと撫でる。
「んん”っっ!あっ、は、っん、、ふ」
「ゾムっ、愛してる」
何時にもなく焦り気味のグルッペンがゾムに告げる。
それはなんだか、悲しみのようにも見えた。
「ぐゆっぺ、っん?どぉしたん、っ?」
仕切りに与えられる快感に身体を跳ねさせつつもグルッペンを心配するゾム。
グルッペンは何も答えずにトントンに場所を交代した。
「あぇ?こんどはとんとん?」
混乱しているゾムを他所に、ゾムの足をM字開脚させたトントンは、それをがっちり固定するとグルッペンに促した。
「ゾム。今日グルさんがな、ゾムの昔のこと思い返してたらしくてな………」
それを聞くとゾムは納得したように表情が変化した。
M字開脚されたままの脚の間にグルッペンが入ってくる。
「俺たちは、ゾムにずっと幸せに生きててほしい。……それを忘れないでくれ」
そう言うとグルッペンは酷く優しくゾムの身体を撫でると、ゆっくりと挿入していく。
「…んっ、あっ」
「痛くないか?」
「うん、っ。とんとんがたくさん慣らしてくれたから」
「…そうか」
そう言うとグルッペンは思い切り突き上げる。
「あ”ぅ”っっ!んゃぁぁっっ!なん、れきゅうになっ、て、!やぁぅっっあ”っっ」
「愛してる」
「…んぅっくっ!あ、ぅ、おれも、あい、してるっっ」
ベットのシーツを握り締め、白い喉を反らして乱れるゾムは可愛い。
トントンは空いているゾムの口に己のモノを咥えさせる。
「…はんっんむ…っ”!ほぉんほぉっ…っ!お”っっご!!!」
「ゾムっっ!そっちじゃなくてこっちを見ろ!」
「ん”っむ、は、はひ…っ!」
ベットの上で、激しく乱交する三人は、快楽だけを求めているのでは無く、何かを確かめあっているような、そんな光景だった。
ゾムの任務後や、何かあったとき、この行為は行われる。
昔から教え込まれた身体の疼きは、そう簡単に治まらなかったのを対処する為に始まったこれは、案外ゾムの心を落ち着かせている。
白い身体が快楽に溺れ、二人の男の愛を溢れる程に受け止めている。
昔の穢らわしい行為を上書きするように、忘れさせるように。
「…んっ、とんと、ぐるっぺ、ん……っ」
「…ん、どうした?」「どうしたんや?、」
「…う、っ、あり、がとぉ、…」
泣きながら、笑いながら言う姿は、酷く安心したようで二人は息をつく。
ラストスパートと言わんばかりに腰を動かしたグルッペンは、跳ねるゾムの腰を掴んで突き上げた。
「ああ”っっ!うぁぁ…っんっ!!!イク…っっ!いっちゃ、ぅ、、っ!」
「思う存分、イけ」
「ひぁ”ぁぁぁっっっ!!んぁっぁ!あ、あっぅ…っ」
ピュルピュルと精を出したゾムは、かくりと力を抜く。
だがしかし、ベットの上でトントンが達していない事を確認すると、トントンの手を掴み引き寄せる。
「…ん、ぅ、とんとんも、だしてえぇよ?」
トロリとした瞳で見つめられれば、その誘いを断る者なんて居るはずもなく、トントンは赴くがままにゾムを感じる。
「…ゾムっ!」
「…んっ、んぁっ!んん”ぁ、っぁ”う…っ!」
細かい嬌声で鳴きながらトントンの広い背中に手を回すゾムを、ゾムの身体を包み込むようにして抱くトントンを、グルッペンは恍惚と見ていた。
「ゾムっ、出すで」
「う、んっ、!あ、やぁっっ!くる、きちゃうからぁ…っっ!あ”っんぁぁ”っあ!!とんとぉ…っっ!すきぃっっ……。あっ、かハッっっっ!んぅ、 ……」
ゾムは今度こそ体力が無くなったのか、トントンに体重を全て預けて、気を失ったかのように眠った。
「…っはぁ、グルさん。ゾム、綺麗にしますか」
トントンは事後の倦怠感に蝕まれながらもゾムを抱えて再びシャワールームへ向かった。
グルッペンはその様子を静観しながら考える。
やはり、ゾムはどこかトン氏を好いている部分がある、と。
グルッペンとて、ゾムに好かれていない訳では無いが、Loveとlikeは違うということだ。
じゃあlikeの人間と関係に至ったのか?と問われると、あの時はグルッペンの”支配”が必要で、日常生活ではトントンの”共愛”が必要なのだ。
だがグルッペンはその事に不思議と不快感を覚えていない。
幼いころの関係性も、なんとなくそんな感じがしていた。
グルッペンは支配するのが好みで、ゾムを毎日愛することも出来るが、それに向いているのはトントンだったということだけだ。
グルッペンは、あの二人がくっ付いて、ゾムが不安から求める行為が無くなればいいと思っている。
__だが、この関係に少しだけ、手離したくない欲がある。
グルッペンは、シャワーから出てきた二人に、どのような笑みを浮かべているのだろうか。
しかしそれは、恐らく悪いものでは無いだろう。
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グルなんちゃらさんの口調掴めてて凄すぎるッ…!