桃赤
青赤
夏真っ盛り。
明日はいよいよサッカー部の試合。
俺達マネージャーは明日の準備で大忙しだ。
乾いたばかりの綺麗な沢山のタオルを畳みながらふとサッカーコートに目をやる。
…もちろん追ってしまうのは彼の姿で。
ボールをドリブルしながら風になびく水色の髪の背。日焼けを知らない透き通った白い肌に汗が光った。
シュートを決めた時の無邪気な横顔。
「….青先輩、かっこいいですよね」
隣で急に呟かれ、ギョッとしてそちらを向くと同じ中等部のマネージャーの桃子ちゃんが長袖のジャージ姿で立っていた。
「桃子ちゃん….そのカッコ暑くないの?」
「日差し今日は特に強いから、日焼けしたくないんです♡」
俺が怪訝そうに聞くと彼女はふふっと笑った。
萌え袖の手を口元に持っていきながら触覚を出したピンク色のポニーテールが揺れる。
….我ながらあざとい子だ。
それもそのはず趣味でモデルをやっているらしくて、芸能人顔負けの美少女だ。
うちの学校のサッカー部は彼女のおかげで頑張れていると言っても過言ではない((
「赤先輩ついこの間まで桃先輩ばっか見つめてたのに〜、最近は青先輩ばっかり〜」
「いや、そんなことはっ//」
「告白でもされたんじゃないんですかぁ〜?」
「へっ//」
小悪魔のように悪戯っぽく笑う桃子ちゃんは顔真っ赤ですよ、と俺の頬をつつく。
無駄に勘が鋭いのはなぜだろうか。
「なななんで知ってるのっ!!//」
「だって青先輩私がマネになった時くらいからずっと赤先輩のこと目で追ってたし、最近は好き好きオーラずっと出してるじゃないですか〜。あ〜ついに来たか〜って感じです」
「う、嘘!!//」
「気づいてなかったんですかー?ま、赤先輩は超がつくほどの鈍感ですからね〜」
遠回しに呆れられているような気もするが今は顔の火照りを冷ます事が大事だ。
両手で顔を仰いでいると桃子ちゃんがあっと後ろを指差した、と同時に背中に重みを感じ、嗅ぎなれた柔軟剤の匂いがした。
「なーに話してるの?」
「青ちゃん!!//」
顔だけ振り返ると後ろから俺を抱きしめる青ちゃんの綺麗な顔がすぐ近くにあって慌てて前を向く。
すると桃子ちゃんが笑顔で言い放った。
「青先輩がかっこいい〜って話してただけですよねー♡赤先輩?♡」
「えっ!?….いやその//」
またじわじわと顔が熱くなるのを感じながらあわあわしていると、桃子ちゃんはお邪魔だと思ったのか、この綺麗なタオル、片付けてきますねー♡と足早に行ってしまう。
「ぁ….青ちゃん」
「…….焦った」
「え?」
きゅっと俺を後ろから抱きしめる手に力が籠る。
「赤くん顔赤くしてたから、….」
きっと、顔が火照るのは暑さのせい。
───
「つめたっ!!」
「ちょっと赤先輩!じっとしててくださいよー」
試合当日。マネージャーとしての仕事が終わり、テントで一休みしていると、桃子ちゃんは俺の顔や腕、脚などの肌が出ている部分全体にたっぷりクリームの日焼け止めを満遍なく塗っていく。
普通に部活がある日も彼女はよく塗ってくれるが、この付ける時のヒンヤリとした感覚が少し苦手だ。
「つけすぎじゃない….?なんか申し訳ない….」
「大丈夫ですよ♡つけすぎってくらいつけないと焼けますから♡」
「そ、なんだ….ありがとう」
「….その白肌が日差しにあたるのなんかほっとけないし」
「?なんか言った?」
「いえっ!なんでも♡それにしても赤先輩なんでこんなに肌綺麗なんですか….」
「そ、そぉ?日に焼けたら赤くなるんだけど黒くはならないんだよね….」
「そ〜ゆ〜体質の人羨ましいですぅ….」
プクッと彼女が頬を可愛く膨らませると、試合がそろそろ始まるのかサッカーコートに人が集まってきた。
始まりますね、桃子ちゃんがベンチに座り直して少し真顔でいうのに俺も頷いて前を向く。
しばらくして試合開始を知らせるホイッスルが鳴り響いた。
俺たちの学校のチームからキックオフになり、ボールが勢いよく転がっていく。
ひとつのボールを奪い合う選手たちのフォローしあう声と、観客の熱い応援の声。
俺もぎゅっと拳を握って試合を見つめた。
途中、青ちゃんが相手チームからボールを長い脚で奪い取り、そのままゴール目掛けて走っていく。
その姿は見惚れるほどにかっこいい。
『勝ったら僕の彼女になって欲しい』
あの言葉を言った見たことのないような真剣そうな青ちゃんの顔を思い出していた。
口元に手を当て、勢いよく息を吸う。
「青ちゃん、がんばれーーー!!」
と、その瞬間。
青ちゃんが敵のチームの人に足をかけられ転倒した。
….俺にはまるでわざとやった風にしか思えなくて思わず目を見開く。
痛そうに足を抑えてその場に蹲る青ちゃん。
するとピピーッと笛がなり試合が中断した。
ザワザワと彼の周りに人が集まり怪我の様子を確認し始める。
試合続行は危険だと考えたのか青ちゃんは他の選手に方を担がれてこちらのベンチに歩いてきた。
「青ちゃん!!」
「赤くん….」
俺も我に返って泣きそうになって駆け寄ると彼は下手くそな笑顔でこちらを見て困ったように笑った。
───
中断していた試合は続行し、桃子ちゃんにはここは私に任せて青先輩のところに行ってください、と背中を押された。
救護室から養護教諭の先生が出ていったのを確認して、俺も部屋の中へ入る。
手当が終わったであろう彼がベットの上に座ってこちらを見た。
「右足首、複雑骨折だって。まじかぁ….」
青ちゃんは困ったように笑うと白いシーツをギュッと握りしめて俯いた。
「ごめん….かっこ悪いとこ見せたよね….あんなに大口叩いたのに情けな….w」
悔しそうに歯を食いしばる彼を俺は思わずに前のめりになって抱きしめた。
「赤くん、」
「青ちゃんは頑張ってたよ。かっこよかった。」
「うん、でも、」
また苦しそうな顔で何かを言おうとする。
嫌だよ。そんな顔しないで。
俺はいつも君を傷つけてばかり。
「俺、青ちゃんが好きだよ」
「っ、//それってどーゆー….」
びっくりしたように目を丸くする彼の頬に手を当てて自分の唇を重ねた。
ほんの少し、汗でしょっぱく感じる青ちゃんの薄い唇。
「あか//く、//」
「っ、//察せよばか….//」
顔を真っ赤にして唇を指先でなぞる青ちゃんに俺も恥ずかしくなって、彼の胸板にぐりぐりと顔を埋める。
青ちゃんの背中に手を回しながら顔を上げると、顔をぐしゃぐしゃにして泣く彼の顔があった。
「あーも〜泣かないでよっ//」
「ごめん、そのっ、うれじくてっ//」
持っていたハンカチで彼の顔を優しくポンポン拭いてあげると、今度は強くギュッと抱きしめられた。
「ホントのホントに僕の好き?嘘じゃない?」
「ほんとだって!//」
あやすように彼の背中をポンポンしながらコクコク頷くと、ゆっくり確かめるように身体を離されて俺の後頭部に青ちゃんの手が回った。
「キス、したい」
「へ、」
「いい?//」
青ちゃんのさっきとは違って溶けたような目でこちらを見てくるので、思わずコクコクと首を縦に振る。
ゆっくり青ちゃんの顔が近づいてくるのが見えてギュッと目をつぶると、クスリと彼が笑った。
「そんなに緊張しなくてもいいのに」
「だって….//」
「ふふ、嫌だったら言ってね?」
音も立てずにふわりと彼の唇が降ってゆっくり離れた。あの夏祭りの日のキスとは違って優しくて暖かくて。
俺が恥ずかしくて目を合わせられないのに気づいたのか青ちゃんは可愛い、と優しく俺の頭を撫でた。
その手にきゅぅぅと胸が苦しくなって、触れたのが一瞬なのが何故か悲しくなって。
「あおちゃ、//もっかい」
気づいたら呟いていた。
「可愛いなぁもう//」
青ちゃんは噛み締めるように言うと、ちゅ、ちゅ、と小鳥のようなキスを角度を変えて何度も落とされる。
「赤くん、ちょっと舌出して」
「んぇ、//」
「そ、いい子」
褒められて嬉しくなっていると、青ちゃんの分厚くて長い舌が絡みついてきてビクンと身体を跳ねさせる。
頭が真っ白になって何も考えられなくて気の抜けた喘ぎ声しか出ない。
段々息が苦しくなって弱々しい力で彼の胸板を叩くと最後に舌を吸われ名残惜しく離れていく。
「青ちゃ、やりすぎ!!//」
「赤くんが可愛すぎるからぁ….//」
デレデレと体重をかけるように抱きつく青ちゃんは、急に真顔になって俺の耳元で不安そうに聞く。
「嫌じゃ….なかった?」
「….た」
「え?」
「よかった!!//」
ぷいっとそっぽを向くと青ちゃんはまた赤く〜んっ!とぎゅうぎゅう俺を抱きしめてくる。
「はぁ、//赤くん好き大好き愛してる」
「ちょ、//苦しい!」
「僕もう赤くんの彼氏だから何してもいいよね」
「そ、だけど、//」
「抱きたい」
「へ//」
「赤くんの事今すぐお持ち帰りしてめちゃくちゃにしたい」
「っ〜!//」
「トロトロの顔で僕を求めてくれる赤くんが見たい」
「〜っ//その前に足早く治せよばかぁぁぁあ!//」
──────
「………..」
「….桃くん!」
「….ぁあ、黄。」
試合がすべて終了し、青ちゃんの怪我が心配になって救護室に向かうと、少し開いた扉の救護室の廊下の壁に寄り添うようにユニフォーム姿の桃くんがぼんやりとしたように立っていた。
その日はたまたま吹奏楽部は部活が休みだったので、僕は紫ーくんと橙くんと一緒にサッカーの試合を見に来ていたのだ。
「青ちゃんの様子は、んぐっ、」
駆け寄って声をかけようとすると、手のひらで口を塞がれる。
途端に救護室の中から笑い声が聞こえてきた。
ゆっくりと扉の隙間から除くとその声の主はもちろん青ちゃんと赤で。
青ちゃんが愛おしそうに赤の髪をすいておでこにキスをし、赤は擽ったそうにくすくす笑っている。
2人は今までに見た事のないような甘い雰囲気を纏っていた。
こんな様子を見たら誰だってこの2人がどういう関係になってしまったのか分かってしまうほどに。
….恐らく彼は全部聞いていたのだろう。
「桃く、」
「青、足首骨折してるらしいから。….よろしくな」
小声で桃くんは言うと、静かに僕の隣を横切って言った。
僕は桃くんにも青ちゃんにも赤にも幸せになって欲しい。どっちを応援したらいいかなんて分からなかった。でももう。
こうなってよかったのだろうか。いや、よかったのだ。そう自分に言い聞かせる。
立ち尽くす僕には桃くんの後ろ姿と2人の幸せそうな声が響いていた。
To Be Continued….?
皆さん大変長らくお待たせしました….土下座((
サッカード素人でよく知らなくてちゃんと調べてから書こうとしてたらこう、忙しくて後回しに….(してたのに上手くかけなかった人(()
投稿めちゃ遅くなりますが多分続きます!たぶん!
誕生日も何かと投稿しようと思ってたのに投稿出来なくて申し訳ない泣
コメントめちゃくちゃモチベになります、いつもありがとう!!!
コメント
22件
続きありがとうございます〜!!🥹💕 まさかの青赤展開!!びっくりしました🫢この後どうなるんだろう…桃赤でも青赤でもどっちでありですね(
はみぃちゃん!!!久しぶりの投稿嬉しすぎるよ🥲︎🥲︎わーもうきゅんきゅんしてる続き無理せずだよ!!!待ってます!
更新ありがとうございます😿✨ まさかの青赤展開!!!!!!!! 青くんの幸せそうな姿がほんとに良かった、、、、 けどやっぱり桃くんーーーーー!!!!!😭💗 いやでも青赤を結構求めてたし、、😖😖 自分がないものねだりすぎて困っちゃいますほんと🥺 黄くんも恐らくおんなじ気持ちなんだよなぁ、、😢 もう全員ひっくるめて幸せになれよぉー!!!!!!😭(無理言うな) 次も楽しみにしてます!!!