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鷹槻れん/鷹槻うなの

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鷹槻れん/鷹槻うなの

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臣桜
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#恋愛
水無月 京
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「わっ」
豆さんの背中を見ながら歩いていると突然、膝が折れて転びそうになる。
「っ、平気か?」
体が地面に向かう時に、豆さんと繋いだ手を引っ張ってしまったようで。異変に気づいた彼はすぐにこちらを振り向き、地面とお見合いする直前の私を両腕で掬い上げてくれる。
「す、すみません。気が緩んだらつい…」
「弓家さんが謝る理由がどこにあるの。怖い目にあわせたのは俺だろ」
豆さんは気まずそうに視線をスッと逸らすと、「とりあえずタクシー乗り場まで行こう、歩ける?」と再び私を抱えるようにして歩き出す。
「ごめんなさい、迷惑かけて」
「は?いつ誰が迷惑かけたって?」
時々すれ違う人々から好奇の目で見られて、彼にとっては迷惑以外の何ものでもないのに、全く怯む様子を見せない。
ようやくタクシー乗り場に辿り着き、待機列にいた先頭の1台に乗り込む。豆さんが慣れた様子で自分の住所を告げる声が脳を通り抜けていく。
そういえば、私は…
「弓家さん」
「はい」
「家に帰してあげたいのはやまやまだけど」
「ええ」
「流石にちょっと心配すぎるし、今晩は俺の家で保護してもいい?」
「…へ?」
「あんなことがあった後で、男の家なんて怖いかなとは思うけど」
展開についていけず、目を白黒させてしまう。
豆さんは困った顔を浮かべている。私も困る。
「もう何もないと思うけど、弓家さんのショックが結構強そうだから。誰か頼れる人いる?」
「…そうですね…」
梓か、紫水だとは思うけど…
「却下」
口に乗せたそばから却下されていく。
「なら絶対俺の家だわ。何もしないから安心して」
「…はい。まあ豆さんに何かされるとは思ってませんし」
「……そう」
絶妙な困り顔な豆さんは、何に困っているのだろう。
「でも豆さん、私は本当に大丈夫なんですけど…」
「あんだけ飲んで、あんだけ震えて、挙句歩いてるだけで足の力抜けてく奴のどこが大丈夫なんだよ」
視線で問われるので、気まずくなって車窓に目を向ける。
夜の都会は、あちこちに光が規則正しく散らばっていて美しい。毎日似たような景色を通勤で見ているはずなのに、新鮮な気持ちになるのは間違いなく豆さんが隣にいるせいだ。
「…じゃあ、お邪魔しますね」
どうせお邪魔するならもうちょっとタイミングは選びたかったですけど。
でも、今夜誰かがそばにいてくれるのは安心します。それが豆さんなら、尚更です。
「随分信頼されてんね、俺」
恥ずかしさのあまり夜景を見ながら一息で喋り終えた私の言葉を聞いて、豆さんは自嘲気味に呟いてそっと目を閉じる。
やっぱり何も分かっていない。
**
しばらくして、タクシーがマンションが立ち並ぶエリアに進入し、ドライバーと豆さんが細かい道順のやり取りを始める。
「あ、ここで」
彼が短く告げて、ドライバーはそっと車を寄せて建物の前に止まる。素早く支払いを済ませ、手を取られて降りた先には、小規模なマンションがあった。暗くて見えないけれど、おそらく重厚な外観。そして周囲を囲む植栽と独特なライティングから、きっと家賃はお安くないんだろうな。
まだ酔いが残る頭は碌なことを考えない。
「本当にごめんね。弓家さんの様子を見る以外に他意はないので」
タクシーが去った後、その場で向かい合ったかと思えば、念を押すように言葉を紡ぐ豆さん。あいかわらず律儀な人だ。
「別に、私は他意があってもいいんですよ、豆さんなら」
可愛いこと言いますよね豆さんは、と軽やかに口を滑らせる。厳密には、口が滑ったと気づいたのは、向かいに立つ豆さんから何一つ返事がなかったからで。
あ、と彼の顔を見れば、「本当にさぁ…」と説教モードの豆さんが顔を出し、反射的に首をすくめてしまう。
「そう言うこと迂闊に言うのやめなさいよね」
これから男の家に上がろうとしてるんだから。なんかもう一周回って腹たってくるな。
エントランスに向かうだけなのに、また指先が重なって。心なしか指先に絡められた圧が強い。
まだ、私の言葉が酔いから生まれた世迷言だと思っているんだろうか。
大体、私が飲みすぎたのだって豆さんが昔は遊んでたとかなんとか聞いてむしゃくしゃしたからだし…。
そもそもさっき、キーホルダーから出したあれ何!?
頭の中にハテナがたくさん浮かんできて、握った指先に力を加える。まだ照れくさいけれど、手を繋ぐことにだいぶ慣れてしまった自分に驚く。
「ん、何?」
「豆さん、私知りたいことも言いたいこともいっぱいあります」
エントランスを抜け、エレベーターを待ちながら。
唐突な私の言葉にも、豆さんは驚く様子を見せない。
「だろうね、俺も色々説明しなきゃと思ってた」
「色々教えてもらいますから!」
「でも眠そうだよ弓家さん。全部話すけど、今日は早く寝た方がいいかもね」
またそうやって子供のようなあしらいを!
私の憤慨に気づいているのかいないのか、彼はやってきたエレベーターを慣れた手つきで操作し。そして流れるように私たちは豆さんの部屋の前に到着した。